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蹂躙されて

2008/03/29(土) 15:55:40
彼は、わたしを完全にモノ扱いしている。
わたしには、それが心地いい。
けれどSさんには、わたしが尊厳を踏み躙られて平然としている様に見え、歯痒いのだろう。

  お前、どうしたんだ?
  自尊心はどこに行ったんだ?


Sさんは、そう言って苛立つ。
けれどもわたしには、そもそも自尊心というものが、もとから無いのだ。



高校時代、将来の進路を決める時期に入った。

わたしは、絵を描く事が好きだった。
漠然と、そういう方面での進路を希望していた。

当然、母親は反対する。
その進路を諦めさせる為に、母親のとった手段は、非道いものだった。

彼女は、わたしの絵を批評し、徹底的に貶めたのだ。

『ここがこういう風なのは、才能が無い証拠。』
『ここに、あんたの性格の悪さが滲み出ている。
 こんな絵、誰も見たがらないよ。』
『あ、これ、生きてる人間?
 死体かと思った。表現力ないねえ。』

わたしにとって絵とは、自分の精神世界を、何とか形あるものに表現しようとするものだった。
それを貶められることは、わたし自身を貶められる事と等しく、わたしの精神性を徹底的に否定されるのと等しく、自尊心などズタズタになった。

子どもの頃から絵は描いていたから、それまでにも母親の批評を受けてはいた。
『変な絵。』
程度の事は、言われていた。
けれども、わたしを撃沈させるという目的の為に下される批評は、それまでとは比較にならぬ凄まじい悪意を含んでいた。

最終的に、わたしは芸術方面の進路を諦めた。
そして、県外への進学を強く希望する様になった。
このまま母親と一緒に暮らしていたら、わたしはいつか、この女を殺してしまう。
そう思ったからだった。



この時期以降、わたしは、絵を全く描けなくなった。


レッドゾーン

2008/03/29(土) 22:03:05
彼は、わたしを完全にモノ扱いしている。
わたしには、それが本当に心地いい。

以前、「初めてのアナル」で『わたしは車か。』と書いたら、それを読んだのだろう、彼からのメールに、こんな事が書かれていた。

  俺たちは、初心者ドライバーと新車だ。
  この間、慣らし運転がやっと終わった。
  これからは、レッドゾーンまで回せるな。
  愉しみだ。


わたしが新車…。
意外だった。
結婚していて歳をとっていて、スタイルも醜いわたしを、新車とは…。

  わたしは一体、どんな車ですか?

訊いてみた。
返事は、こうだった。

  新車といっても、エンジンだけだ。
  真空管のラジオがついた、
  ヴィンテージ2シーターのアメ車だな。
  この車、性能以上にやたらと加速したがる。
  制動が弱いし、サスは硬くてギシギシいってる。
  だから今、俺の癖を叩き込んでるところだ。
  俺が欲しいのは、スピードだけじゃないからな。
  この車で一番気に入ってるのは、ラジオだ。
  感度もいいし、最高の音を出すから、
  俺は気持ちよくドライブを続けられる。


わたしは、声を上げて笑った。
なんて上手いこと表現するのだろう。

わたしは、早く徹底的に壊して欲しくて、ウズウズしている。
責め立てられる事を悦び、もっと、もっとと哀願する。
そのくせ身体は硬くて、彼に柔軟運動を心掛ける様に言われている。
スタイルは大柄で無骨で大雑把、燃費も悪い。
そして彼は、わたしの啼く声を、とても悦ぶ。
突き入れられて漏らす喘ぎ声も、打たれて上げる悲鳴も、お仕置きでの喚き声すらも…。


もうすぐ…彼に逢える。
彼は、どんな事をして、わたしをレッドゾーンに叩き込むのだろう…。
怖い。
愉しみ。
怖い。
嬉しい。

早く、逢いたい…。



大好き

2008/03/30(日) 23:22:58
  Tさん、大好き…。

激しく突き上げられている時も、ゆっくり抱き合って寛いでいる時も、わたしの口から、自然に言葉が零れ落ちる。

  うん。

彼は、小さな頷きを返す。
何度目かの時に、その声に、彼らしからぬ戸惑いを感じて、わたしは訊ねる。

  困ってるの…?

  俺は、愛とか恋とかよく解らんから…。
  そう言われると、どうしていいのか判らん。


彼の、大きな掌が、わたしの頬を包む。

  お前の事は、凄く大切に思っているんだが…。
  愛だのとは違う気がするから。


彼の手に、自分の手を重ねる。

  どうもしなくていいよ。

わたしも、愛というものが何なのか、すっかり見失っている状態だ。
そして今、欲しているのは、愛ではない。
自分が、誰かから必要とされているという実感。
わたしはまだ、存在価値があるという実感…。

あなたが必要。
あなたに大事にされていて、嬉しい。
その想いを伝えようとすると、『大好き』という言葉になってしまうだけの事…。

  わたしが大事にされているのは、
  感じているから。


  そうか。

  Tさん、大好き。

  うん。

この時の『うん』には、戸惑いも迷いも、感じられなかった。




また怒らせて…

2008/03/31(月) 22:27:20
9回目の逢瀬の朝…。

彼と逢う日は、いつもより早起きしなければならないのに、その日わたしは、仕事に行く時と同じ時間に目を覚ました。
慌てて支度を始める。
アナル調教は毎回する、と言われていたから、身体の準備に手は抜けない。
下剤を使ったあと、恐る恐るフリーウォッシャーを使ってみる。
汚れがかなり薄くなるまで使い続けた結果、お風呂とトイレを何度も往復する羽目になる。
これからは、前夜の食事を早めに摂り、洗腸も夜のうちに済ませてしまおうと決意する。
わたしのスカート姿を見たい、という彼のために、初めて買ったワンピースを身にまとい、急いで彼にメールする。

  ごめんなさい。
  寝過ごしました。
  これから向かいます。


ガレージに飛び出した処で、彼から返事が来た。

  今どこだ?

  まだ家です。ごめんなさい。

  そのまま家に居ろ。
  今日はやめだ。


頭が、真っ白になった。
やっと逢える事になったのに…何故…。

  どうして?

震える手で、メールを打つ。

  気が変わった。
  何故変わったか、理由はわかるな?


立ちすくんだ。
思考が凍結し、四肢から力が抜けていく。
また、怒らせてしまった…。

  寝過ごしたからですね。
  ごめんなさい。
  先週は仕事が忙しかったから、
  疲れが溜まっていたのです。
  とにかく、向かいます。
  お願い、逢ってください。


キーを回してエンジンをかける時、『この車、キーのとここんなに重かったっけ…?』と、ぼんやり考えた。

一心に彼の住む街を目指しながら、『あと1時間以内』『あと30分以内』とメールを打ち続ける。
彼からの返答は、無い。
行けばきっと逢ってくれる筈…と考えながらも、つい先日知ったばかりの、彼の厳しさ激しさを思う。
もしかしたら、行きさえすれば…というわたしの心根を見透かして、本当に逢ってはくれないかも知れない。
そうなったら、どうしよう…。
息が苦しくなるほど彼を求めているのに、延期されてしまったら、それからの1週間は、普段の自分を装うことが出来なくなる…。

逢えたとしても、彼を怒らせたのなら当然、お仕置きは免れまい。
彼の事だ。
先日と同じお仕置きで来るとは考えにくい。
何か新しい加虐方法を考え付いている可能性も高い。
けれど、それでもいい。
彼に逢えないことに較べれば、苦痛や恐怖など、問題ではない…。

そんな事を考えながら、いつもの待ち合わせ場所から更に、彼の家に近い路地にまで車を進めた。

  着きました。
  ○○まで来ています。
  お願いします、逢ってください…。


返事は、無い。
悄然と、降り始めた雨を見つめていた。

  俺は、俺のルールに従わないものなら、
  どんなに使い心地のいい女でも捨てるぞ。


お仕置きの時に聞いた言葉が、脳裏に甦る。
メールが駄目なら、電話してみようか…。

  連絡方法は、基本的にメールだ。
  電話は使わない。


こっちは、初めて逢う前に聞いた言葉。
以降、電話で連絡を取り合った事は、一度も無い。
これもおそらく、彼のルールなのだろう。
とすれば、電話などすれば、かえって怒らせるだけだ。

  わたしは、どうすれば良いでしょうか。
  お怒りを解きたいです…。


もう一度、メールを送ってみる。
待ちながら、何度でもメールするしかない。
携帯が、メールを受信した。

  このメス豚が…
  待ってろ。


ああ、良かった…。
今度は安堵で、四肢の力が抜けた。
やっと彼の姿が目に入った時は、涙が滲んだ。
彼は、わたしを見てニヤリと笑うと、車に乗り込んで来る。

  こいつめ…。
  寝過ごしただと?


  ごめんなさい…。

  行くぞ。出せ。

  はい…。

その、既にスイッチの入った笑顔を見ながら、これはお仕置きだな…と、覚悟を決める。
何をされるだろうか。
耐えられるだろうか…。
それでも、あのまま放置され続けるよりは、ずっといい。
わたしは、いつものホテルに向かって、車を走らせ始めた。