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また怒らせて…

2008/03/31(月) 22:27:20
9回目の逢瀬の朝…。

彼と逢う日は、いつもより早起きしなければならないのに、その日わたしは、仕事に行く時と同じ時間に目を覚ました。
慌てて支度を始める。
アナル調教は毎回する、と言われていたから、身体の準備に手は抜けない。
下剤を使ったあと、恐る恐るフリーウォッシャーを使ってみる。
汚れがかなり薄くなるまで使い続けた結果、お風呂とトイレを何度も往復する羽目になる。
これからは、前夜の食事を早めに摂り、洗腸も夜のうちに済ませてしまおうと決意する。
わたしのスカート姿を見たい、という彼のために、初めて買ったワンピースを身にまとい、急いで彼にメールする。

  ごめんなさい。
  寝過ごしました。
  これから向かいます。


ガレージに飛び出した処で、彼から返事が来た。

  今どこだ?

  まだ家です。ごめんなさい。

  そのまま家に居ろ。
  今日はやめだ。


頭が、真っ白になった。
やっと逢える事になったのに…何故…。

  どうして?

震える手で、メールを打つ。

  気が変わった。
  何故変わったか、理由はわかるな?


立ちすくんだ。
思考が凍結し、四肢から力が抜けていく。
また、怒らせてしまった…。

  寝過ごしたからですね。
  ごめんなさい。
  先週は仕事が忙しかったから、
  疲れが溜まっていたのです。
  とにかく、向かいます。
  お願い、逢ってください。


キーを回してエンジンをかける時、『この車、キーのとここんなに重かったっけ…?』と、ぼんやり考えた。

一心に彼の住む街を目指しながら、『あと1時間以内』『あと30分以内』とメールを打ち続ける。
彼からの返答は、無い。
行けばきっと逢ってくれる筈…と考えながらも、つい先日知ったばかりの、彼の厳しさ激しさを思う。
もしかしたら、行きさえすれば…というわたしの心根を見透かして、本当に逢ってはくれないかも知れない。
そうなったら、どうしよう…。
息が苦しくなるほど彼を求めているのに、延期されてしまったら、それからの1週間は、普段の自分を装うことが出来なくなる…。

逢えたとしても、彼を怒らせたのなら当然、お仕置きは免れまい。
彼の事だ。
先日と同じお仕置きで来るとは考えにくい。
何か新しい加虐方法を考え付いている可能性も高い。
けれど、それでもいい。
彼に逢えないことに較べれば、苦痛や恐怖など、問題ではない…。

そんな事を考えながら、いつもの待ち合わせ場所から更に、彼の家に近い路地にまで車を進めた。

  着きました。
  ○○まで来ています。
  お願いします、逢ってください…。


返事は、無い。
悄然と、降り始めた雨を見つめていた。

  俺は、俺のルールに従わないものなら、
  どんなに使い心地のいい女でも捨てるぞ。


お仕置きの時に聞いた言葉が、脳裏に甦る。
メールが駄目なら、電話してみようか…。

  連絡方法は、基本的にメールだ。
  電話は使わない。


こっちは、初めて逢う前に聞いた言葉。
以降、電話で連絡を取り合った事は、一度も無い。
これもおそらく、彼のルールなのだろう。
とすれば、電話などすれば、かえって怒らせるだけだ。

  わたしは、どうすれば良いでしょうか。
  お怒りを解きたいです…。


もう一度、メールを送ってみる。
待ちながら、何度でもメールするしかない。
携帯が、メールを受信した。

  このメス豚が…
  待ってろ。


ああ、良かった…。
今度は安堵で、四肢の力が抜けた。
やっと彼の姿が目に入った時は、涙が滲んだ。
彼は、わたしを見てニヤリと笑うと、車に乗り込んで来る。

  こいつめ…。
  寝過ごしただと?


  ごめんなさい…。

  行くぞ。出せ。

  はい…。

その、既にスイッチの入った笑顔を見ながら、これはお仕置きだな…と、覚悟を決める。
何をされるだろうか。
耐えられるだろうか…。
それでも、あのまま放置され続けるよりは、ずっといい。
わたしは、いつものホテルに向かって、車を走らせ始めた。