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初めてのとき

2008/01/07(月) 12:24:49
昨日、彼に初めて逢った。
そして、抱かれた。

出会い系サイトで逢った人に抱かれる…。
以前の自分からは、考えられない事だ。
それでもそれを実現させてしまったわたしは、それだけ、性的欲求を満足させる事に飢えていたのだろう。

彼の、ちょっと普通でないプロフィールに惹かれ、メッセージを送った。
色好い返事があったら、この人に抱かれる事になるだろうという、予感めいたものがあった。
彼も、わたしからのメッセージを受け取った瞬間に、俺はこの女を抱くだろう、と、ピンと来たそうだ。
きっと、彼の性的妄想の独特な世界観をわたしが理解し、その世界で一緒に溺れる事を望んだから…
そして彼も、わたしがそう考えている事を見抜いたからだと思う。

ホテルの部屋に入った瞬間、服を脱ぐ様に命令された。
素直に従うわたし。
何の不安も無かった。
彼の事を、何故か全面的に信じていた。

結果的には、彼がわたしに挿れ、それによって快楽を得る事は無かった。
強い咳止めを服用していた彼は、勃起力を失っていたからだ。

それでも長い時間、互いの身体に手を這わせ、舐め合い、腰を動かして抱き合った。
わたしは、数え切れぬ程、何度も達した。
獣の様に声を上げた。

  しのぶの喘ぎ声はいい
  もっと啼かせてやろうって気になる


と、彼は言った。

セックスを目的として逢ったのに
あんなに彼に貫かれる事を望んでいたのに
そしてそれは叶わなかったのに
わたしは深い快感を得、解放感を得ていた。
それはとても不思議な、満ち足りた感覚だった。

彼が甚振る乳首が、とても痛かった。

  勃ち過ぎなんじゃないか
  ペニスでもそういう事がある


と、彼が言ったが、わたしは、噛まれたり摘まれたりしている所為だと思っていた。
今日、乳首は全然痛まない。
外傷性の痛みなら、今日も残っている筈だ。
勃ち過ぎて痛い、というのが正解だったのだろう。
そんな事があるのを、初めて知った。
乳房を愛撫される事で、こんなに感じたのも初めてだった。



一般的なセックスフレンドというのがどういうものか、わたしは知らない。
けれども何となく、彼とは、身体以外の部分で深い繋がりを持ってしまった様に思う。
これがいいのか悪いのか、今のわたしには判らない。

判っているのは、わたしはこれからも
彼が求めればどんな事をされてもそれを悦び
それを快楽と感じ、抱かれ続けるだろう
という事だけ…


水責め

2008/02/13(水) 21:37:32
5回目の彼との逢瀬にて。

一緒にお風呂に入ろうと言われた。
それまで私たちは、双方が家を出る直前に入浴を済ませてくる事にしていて、行為の後もそのまま帰っていた為、お風呂というのは未経験だった。

彼の要求は、わたしを縛ったまま入浴させたいというもの。
後ろ手に縛られた状態で、浴室へ。

たっぷり石鹸をつけた手で、全身を撫で回される。
後ろから抱きすくめられ、優しく乳房を揉まれると、吐息が漏れて思わず彼に寄りかかってしまう。

  玩具の手入れをしてるって感じでいいなぁ

と、彼は楽しそうだった。


洗い終わって、湯船へ。
縛られたままの私がバランスを失わない様、わたしも充分に温まれる様、気を遣ってくれる彼。
その目つきが、ふっと変わった。
次の瞬間、髪を鷲掴みにされ、湯船に顔を突っ込まれた。
咄嗟に息を止め、湯が気管に入らない様にする。
ガバッと頭を上げられた。
咳き込みまではしないまでも、激しく息をして呼吸を整えようとする。
顔が濡れているのを拭きたいが、手は拘束されているし、顔を左右に振ろうにも、彼が髪をがっちり掴んでいるので動けない。
すぐに再び、湯に突っ込まれた。
彼の腕に力が入ったのを感じた瞬間、出来るだけ息を吸い込んだ。
そんな事を何度か繰り返した。
髪を掴んでいた手を離し、

  大丈夫か?

と薄く微笑んで言う彼。

  大丈夫…

すると、湯船の中で腰を浮かし、水面にペニスを出した。

  しゃぶれ

銜えてしゃぶり始める。
彼の手が、わたしの髪を撫でる。
頭を触られながらフェラチオをするのは、大好きだ。
口の中で、彼のものが怒張する様を味わっているのは、もっと好きだ。
そうしてうっとりしていた時、再び突然、湯に頭を押し込まれた。
これは予想外だった。
口に湯が入るし、呼吸も整えていない。
それでも、限界が来る前に、彼は私の頭を解放した。
咳き込むわたしを抱き締めて、彼が言った。

  これがやりたかったから、風呂に誘ったんだ。

お風呂から上がると、わたしの身体をバスタオルで包み、丁寧に拭いてくれた。
そして最後に、縛めを解かれた。


  顔を突っ込んでいる時に、縛られたお前の手が
  何か掴もうとするみたいに動くのが…
  なんとも言えなかった…



わたしを抱き寄せて、そう囁く彼。

わたしは、その時の彼の顔を見たかった、と思った。
そんな時のわたしの反応を見る彼は、きっと冷徹な観察者の目をしていたことだろう。
その冷たさが、わたしの身体の芯を熱くする。

次は、もっと息が苦しくなるまで…
限界を迎えてもがいてしまうまで…
そして、暴れるわたしを容赦なく押えつけて欲しい…

そう思った私だった。



6度目の逢瀬

2008/02/26(火) 00:15:59
いつもの通り、車で待ち合わせ場所に向かう。
家を出る前にメールを打つと、到着30分前くらいにもう一度メールする様に返信が来た。

待ち合わせ場所で「今着いた」とメールすると、すぐに彼が助手席の窓を叩く。

  今日は早かったね。

  うん、30分前のメール貰ったからな。

彼が車に乗り込む。

  買い物は?

  もう済ませた。

  俺も。じゃ、行こうか。

いつものラブホテルに向かって、車を走らせる。

車中では、近況報告や、他愛もない雑談で時を過ごす。
そうしていると彼は、明るくて気さくで、時々ふと「可愛い…」と思わせられる事もある、年下の男の子だ。
(男の子…という年齢でもないのだけれど)

ホテルの部屋に入ると、一息つく間も持たずに、わたしは彼に抱き付く。
彼が抱き返してくれて、わたしたちは立ったままでキスをする。
彼の手が、わたしの全身を這い回る。
それだけで、わたしの身体の奥底に火が点り、濡れてしまう…。

ふっと、彼がわたしから離れた。

  さあ…始めるか。

そう言って彼は、ロープを取り出した。


余韻

2008/02/26(火) 13:53:26
昼間、職場で仕事をしている時、
彼との情事の余韻に浸ってしまうことがある。
下腹部に、甘くて鈍い感触が走る。
すぐにでも彼が欲しくなる。

そういう時に思い出すのは、
わたしの中を掻き回す彼のペニスの感触ではなく
縛られる時に身体に食い込む縄の感触でもなく
彼との、口づけの感触…。

柔らかい唇と、絡み付く舌の、
陶然としてしまうほどの優しさと温かさ…


6度目の逢瀬…2

2008/02/26(火) 23:29:18
彼の使う縄は、生成り色の綿ロープ。

  手を後ろで組んで。

彼の声のトーンが低くなる。
責めモードにシフトチェンジした証だ。
わたしは腕を後ろに回し、其々の掌を肘に当てる。

  違う。
  そうじゃない。


手を伸ばした状態で掌を組まされ、手首を縛られる。

わたしの正面に彼が立った。
わたしは、彼の目を見つめる。
冷静な目をしていた。
彼が顔を近付けてくる。
わたしは、目を閉じる。
すると、彼はわたしの鼻の頭をペロっと舐めた。
驚いて目を開けると、彼が悪戯っぽく笑った。
わたしもつられて微笑んだ。

アイマスクで視界を奪われる。
わたしは、耳に意識を集中する。
彼の動きを、聞こうとする。
彼は、わたしの周囲をゆっくり移動している様だ。
もう荒くなっている自分の呼吸音を、邪魔に感じる。
時々、彼の指先がわたしの身体に触れる。
その度に、身体がビクンと跳ね上がる。

背後から急に抱き締められ、乳房を揉みしだかれ、首筋に口づけされ…そのまま彼に体重を預けようとすると、すっと身体を離される…そんな事を繰り返す。

やがて下半身を、ガーターベルトとストッキングだけにされる。
けれど彼は、下半身にはあまり興味を示さない。
カットソーとキャミソールを捲り上げてブラをずらし…乳房を鷲掴みにされた。
噛み付く様に口をつけ、乳首を舌で転がされる。
思わず仰け反って、声を上げてしまう。
今まで乳房で感じた事はないのに…彼に触られると、快感が下半身から力を奪い、座り込みそうになる。

  ちゃんと立て。

彼が遊び足りないと、冷たくそう言われるのだけど、その日は違った。

  ベッドへ行こうか。

耳元で囁くと、彼の腕がわたしの身体を誘導し、そっと仰向けに寝かされた。
そして遠ざかる彼の気配。
腕の自由と視界を奪われたままのわたしは、弾む息を整えながら、じっと彼を待っているしかない…。


6回目の逢瀬...3

2008/03/03(月) 20:55:57
暫くして、彼がわたしの横に寝そべったのがわかった。
彼の指が、小鳥が水を飲む様なタッチでわたしに触れる。
その度に身体が跳ね上がる。
すぅっと身体を撫でられる。

  はあ…ぁ…

ため息混じりの声が出て、身体をよじってしまう。
時々、彼もため息をついている。
それを聞いているだけで、わたしも高まっていく。

口の中に何かが入ってきた。
指だ。
フェラチオの様に舌を絡ませ、無心にしゃぶった。

  エロいなぁ…
  すげぇエロい…


彼が、囁く。
わたし自身が、益々濡れていく…。

再び彼の気配が遠ざかった。
戻ってくるなり、ヴァギナにひんやりとしたものが当てられた。

  今日はこれ使うぞ…

なに…? バイブ…?
そう思った途端、それがメリメリと音を立てんばかりに、わたしの中に突き入れられた。

  あああぁぁぁぁーーーっ!!!

それまでの静かさが嘘の様な、突然の荒っぽい行為…。
その落差が起爆剤となって、爆発する様な大声が出た。
激しくピストンされるバイブ。
低く唸るモーター音と、わたし自身が立てている、ぐちゅぐちゅという音。
自分の声とは思えぬ程の、喘ぎを通り越した叫び声…。

肉体的な快楽は、感じない。
わたしを掻き回すバイブの、無機質な硬さと冷たさを感じるだけだ。
けれども、彼がわたしに突っ込み、そこをじっと見つめながら動かしているのだ…と思うと、深い処から、悦びが湧き上がってくる。
高い処に押し上げられる…。

バイブが抜かれると今度は、彼の指が入ってくる。
彼の温度を感じるなり、達してしまう。
中を掻き混ぜられて、また達する。
達し続ける…。

けれど、欲しいのは絶頂だけじゃない。
彼の体温。
彼の体重。
彼の体液…。

  挿れて…Tさんのを挿れて…

  欲しいか。
  じゃ、舐めろ。


ぐいっと身体を起こされ、アイマスクを外される。
両手の自由も取り戻す。
彼の前に跪き、ベルトの存在を疎ましく思いながら彼のものを取り出して、夢中で口に含んだ。
ずっと責め立てられ、声を上げていたから、喉が乾き切っている。
彼のものを喉の奥まで銜え込む。
噎せるまで続けると、口の中に粘りのある唾液が溜まるので、それを潤滑剤代わりにする。
丁寧に、丁寧に、舐め上げる。

  気持ちいいぞ…

ため息交じりにそう言う彼の声が聞きたい一心で、手と舌と頭を動かし続ける。
やがて、彼が動いた。
後ろを向かせたわたしに、一気に根元まで突き立てた。

  あああああーーーーっ!!
  ああっああっああっ……


それはもう叫び声ですらない。悲鳴だ。
彼の動きに押し出される様に、叫んでしまう。
何も判らなくなる…。


7回目の逢瀬

2008/03/05(水) 19:15:44
  最近、パターン化してきてるからな。
  今日は趣向を変えていくぞ。


待ち合わせ場所で助手席に滑り込むなり、彼は満面の笑みでそう言った。
彼の、屈託のない笑顔が、わたしは大好きだ。
わたしを使うのが愉しくてしょうがないという事が、よく判るからだ。

いつものラブホテルに入る。
ベッドのヘッド部が、格子になっている部屋が空いていた。

  お、ここにしよう。

  やっぱり…そこを選ぶだろうなって気がしてた。

  判ってるじゃないか。

悪戯っぽく笑う彼。
わたしをベッドに縛り付けて遊びたい…というのは、彼が常々口にしていた願望だったから…。

部屋に入ると、いつもの様にわたしは彼にしがみ付く。
彼もわたしを抱き締めて、キスをしてくれる。
絡みつく舌…。
舐め回される唇…。
そして、背中を這い回る、彼の大きな手…。
わたしが既に蕩けている事を証明する様に、ヴァギナが潤っていく…。

  さて…と…。
  まずは舐めて貰おうか。


わたしは頷いて、彼の靴下とズボン、パンツを脱がせた。
彼も、わたしの下半身を露出させる。
そのままソファに座る彼の前に跪き、ペニスを口に含んだ。

まだ柔らかい部分の残るペニスを全部口の中に入れ、舌を使う。
彼のものに、みるみる力が漲っていく。

  気持ちいい…

彼は感想を言ってくれるから、それが嬉しい。
一生懸命に舌と唇と手を動かしていたら、彼のものは口に入り切らない程、怒張する。
全部を味わいたくて、喉の奥に、奥に、飲み込もうとするけれど、どうしても喉を通ってくれない。
彼の手がわたしの頭を押さえる。
息が詰まる。
嘔吐感がせり上がってくる。
目に涙が滲み、鼻水が出てくる。
苦しい。
でも、嬉しい…。

噎せ込んだわたしの頭を、彼が解放した。
そしてわたしを立たせ、後ろを向かせた。
わたしはベッドに手をつき、彼が入ってくるのを待つ…。

  あ、あ、ああああーーーーっ!!

いきなり奥まで突き立てられた。
彼が激しく動く。
わたしも彼に動きを合わせる。
彼の手がわたしのどこを触っているのか、それすら判らない程、わたしの意識は彼のペニスだけを感じている。

  すげぇ…気持ちいい…

  あっあっあたしもっ気持ちいいっ…!

ふと、脳裏を過ぎる夫やSさんの顔…。
夫は、わたしが後ろからされるのが大好きだと、知っていただろうか。
Sさんは、わたしを抱いて「気持ちいい」と言ってくれるだろうか…。

そんな事を頭の隅で考えながら彼に突かれて、わたしは逝ってしまう。
何度も、何度も、逝ってしまう。

全身から力が抜け、わたしはがっくりと座り込んでしまった。

  おいおい、もうギブアップか。

彼が、笑った。


7回目の逢瀬...2

2008/03/06(木) 10:05:05
ぐったりしているわたしを、彼がベッドの上に抱き上げる。
そして、ミネラルウォーターを口移しで飲ませてくれる。

  まだ欲しいか?

  …もう少し、頂戴…

  ん。

わたしが望むだけの水を、喉に注ぎ込んでくれる。

ボトルを置くと、わたしの上に重なってきた。
正常位でわたしの中に入ってくると、今度は、ゆっくり動き始めた。

  今日はこうやって、じっくりじっくり、責めてやる…

彼が、囁く。
ゆっくり動かれると…彼自身のことがよく判る。
その形…硬さ…温度…。

彼が体勢を変えた。
重ねたスプーンの様に後ろから抱きすくめられ、二人とも横になった形で挿れられる。
そして、ゆっくり動く…。

  スローセックスって奴だ…。

それは、不思議な感触だった。
いつもは、彼の激しいピストンで一気に絶頂に押し上げられるのだけれど、ゆっくり動かれるセックスは、まるでトロ火で炙られる様にじわじわと熱くなり、高まっていく…。

  はあぁ…あぁ…っあぁ…

獣の様な声は出ないが、身体の奥底から搾り出される様な、快楽の喘ぎが漏れてしまう…。

  気持ちいい…逝きそうだ…

  逝って…お願い、頂戴…

  嫌だ…もっとお前を味わいたい…

長い長い時間…突かれ続けた。
けれどわたしは乾く事がない。
彼の動きに合わせて、ジュブジュブと湿った音を立て続ける…。

絶頂も、ゆっくりとやって来た。
自分の意思に反した動きが、身体を襲う。
ビクビクと痙攣する様な動き…。

  はっ…あ…っあ…っあ…

全身に彼を感じながら、じわりじわりと高みに上りつめる。
それは、今まで経験した事のない、とても深みのある絶頂だった。

  …すげぇ締まる…っ

歯を食いしばる様な彼の囁きを耳元に受けながら、再びわたしは何度も何度も達していた…。



7回目の逢瀬...3

2008/03/07(金) 07:56:17
逝って、逝って、逝き続け…朦朧としてしまう。

  ちょっと休憩するか。

彼が笑いながら、ミネラルウォーターを飲ませてくれる。
ソファに移動して、テレビをつけた。
暫くベッドの上でぼんやりしていたわたしも、のろのろ起きて、彼の隣へ座る。
おやつを食べたり、テレビを見ながらあれこれ喋ったり…。
これも、わたしの大好きな時間だ。

  こうして喋ってると、お前って
  男友達と喋ってる様な気楽さがあるな。


これは、良く言われる言葉だ。
職場の人も、友人も、そして夫ですら…わたしの事を「男っぽい」とか「思考が男だ」などと言う。
彼らは、本当のわたしがどんなに淫らな牝なのかを、全く知らない…。

ひとしきり休憩した後、彼がテレビを消した。
わたしを使う気になったのだ。
道具鞄の中から赤い綿ロープを取り出す。

  ベッドへ行け。

後ろ手に縛られて、仰向けにされた。
足も、ベッドのヘッド部に開いた状態で縛り付けられる。
さらにアイマスクを付けられた。
あと道具鞄に入っているのは…バイブとバラ鞭…。
ビュンッと空を切る音がして、彼がバラ鞭を手にした事を知る。

 ビュンッ
 ビュンッ

音がする度、わたしはビクッと身体を硬直させる。
予測出来る痛みに備えての、緊張と、弛緩。
彼は、その間隙を突いて、わたしが弛緩した瞬間に鞭を振り下ろす。
バシッという激しい音と、わたしの悲鳴。
わたしのお尻や背中は叩かない。
乳房を叩くのが好きなのだ。

わたしを産んだ人物は、竹の布団叩きでわたしのお尻を叩くのが好きだった。
彼女の意に沿わぬことをすると、渾身の力で、息が出来なくなる程の打擲を受けたものだ。
わたしの生殺与奪権を握っていると思い込んでいるその人物に叩かれる度、わたしは、激しい屈辱と恐怖と、生命の危機を感じていた。

それなのに今、わたしは望んで打擲され、股間をぐっしょり濡らしている。
打つのが彼なら、日常的に露出する部分を打つ事はないという安心感があるとは言え、わたしの心と身体は、一体どうなっているのだろう…?
そして何故、この安心感を『彼はわたしの命を奪わない』というところには、感じないのだろう…?

乳房を鞭打たれ、ヴァギナにはバイブを突っ込まれる。
わたしは仰け反り、跳ね上がり、悲鳴を上げる。
彼の呼吸も荒くなっていく。
鞭打つ力が、どんどん強くなる。
わたしは心の中で叫んでいる。
もっと…もっと…皮膚が破れて、血が流れるまで、打って欲しい…

どのくらいの時間、打たれていたのか判らない。
彼が縛めを解いて、口移しで水を飲ませてくれた時、その時間が終わった事を知る。
アイマスクを外されると、目の前には彼の穏やかな顔がある。

  大丈夫か?

  …うん。

  気持ちよかった…

わたしをバスタオルで包み、汗を拭いながら、優しくキスをしてくれる。

  途中でお前が壊れたと思った…

わたしは一体、どんな状態になっていたのだろう…?
わたしを責め続ける彼と、それに悶えるわたしを、客観的に観てみたい…。
そういう願望が、募ってくる。

再び休憩に入る彼の横に行く前に、わたしはミニドレスを身に着けた。
打たれた痕に、レースが擦れて痛む。

  擦れてピリピリする…

  え。大丈夫か?
  これでも乳首は避けたつもりなんだがな。


  大丈夫だよ…

頷きながらわたしは、痕が出来て痛むまで打たれた悦びを、噛み締めていた…。



7回目の逢瀬...4

2008/03/08(土) 21:42:38
また暫く、テレビでコントショーを見て一緒に笑ったり、AVを観ながら感想を言い合ったりして過ごす。

  さて…と。

TVを消した彼がおもむろに全裸になり、ベッドに大の字になった。
言われなくても、フェラチオを要求されていることが判る。
わたしもベッドに上がり、彼の股間に蹲る。

根元まで口に入れて、
舌で舐め上げて、
口に入り切らなくなったら
楽器を演奏する様に横から銜えて
唇を滑らせる…

彼は、頭の下に手を組んで、わたしを見下ろしている。

  お前はフェラの時に目を閉じないから、いいな。
  ちゃんと俺のチンチンを見ている…。


わたしは、返答代わりに微笑した。
わたしの行為がきちんと彼に快感を与えられているかどうか…それを知るには、彼と、彼自身を見ていなければ…そう思う。
気持ち良さそうだと、わたしも嬉しくなってくる…。

どのくらい、そうやっていただろうか。
ペニスは怒張しきっている様なのに、彼は動かない。

  欲しい…Tさん、欲しい…

ついにわたしは哀願した。
その瞬間。
彼の手がわたしの髪を鷲掴みにし、ぐいっと喉を反らされる。
驚いて息を呑んだわたしの目に、彼がニヤリと笑うのが見えた。

  その言葉を待っていた。

普通に話している時には見せる事のない種類の、酷薄な笑み…。
ぞくっとした瞬間、潤っていたヴァギナが、溢れるのを感じた。

彼がわたしの上に覆い被さり、ゆっくりと貫く。
腕を押さえ込まれ、突かれる。
彼の目は、真っ直ぐにわたしを見ている。
わたしのどんな反応も、見逃すまいとしている。
その真摯な視線が、わたしを益々熱くする。
わたしも必死で、彼の目を見返す。
彼への想いを、彼にもたらされる快感の全てを、この目から読み取って貰える様に…。

彼のものが、ゆっくりとわたしを掻き回す。
突いて、引いて、突いて、引いて…
まるでゴリゴリと膣内を削られているよう…
身体がビクビクと痙攣し始め、わたしの頭から思考力が消え失せる。
そのまま、達し続ける…

  逝く…

その声に、拡散していた思考のピントが復活した。
彼がわたしの胸に顔を突っ伏した。
腕を回して、彼を精一杯抱き締めながら、自分の中に意識を集中する。

ドクン…ドクン…

彼のものがわたしの中で、脈打っている…
いま、彼がわたしで逝っている…
やっと、彼が逝くまで使って貰えた…
深い悦びが、湧き上がってくる…

不意に彼が起き上がり、わたしの顔の上に跨った。
わたしは彼のペニスを頬張り、彼の精液と、わたしの愛液を舐め取った。

荒い息を吐きながら、彼がゴロリと横になる。
その上にバスタオルをかけ、汗を拭いながら…

  …ありがとう…

そう言うのが、やっとだった…



7回目の逢瀬...5

2008/03/09(日) 00:40:43
お風呂に入り、ホテルを出ると、外はまだ明るかった。

以前の逢瀬は、ホテルから出て、指定された場所まで彼を送り届けたら終わりだった。
それがいつの間にか、帰る前に一緒に食事をする様になっていた。
けれどもその日のわたしは、その食事の時間さえも、逢瀬を締めくくるには物足りなく感じた。

  もう暫く一緒に居たい…

  この近所にドライブウェイあるけど…
  結構タイトなカーブが多い道だぞ、運転大丈夫か?


  大丈夫。峠を走るのは好きだよ。

この日、彼は、ブログを開いて、二人の軌跡を残したいと言い出した。
わたしは、迷った。
このブログ以外にも運営しているブログがあるわたしは、内容が重複しそうな複数のブログを管理する事が、難しい様に感じたのだ。
けれどもここには、あまりにも正直に書きすぎている。
一番怖いのは…Sさんの存在を知られる事だ…。

結局わたしは、既にブログを作っている事を白状した。

わたしに対して彼は、とても正直だ。
取り繕う事もしないし、誤魔化そうともしない。
常にわたしに対して、真っ直ぐに接してくれている事が、感じられる。
そんな彼に、わたしは内緒にしている事がある。
それが、辛い。
わたしも、嘘や誤魔化しを取り払って、彼と向き合いたい…。
そういう気持ちが勝ってしまったのだ。
帰ってからURLを知らせる事を約束した。

  こんな峠道なのに、安定した走りだなぁ。
  やっぱ運転してる時のお前は、男っぽい。
  いろんなお前が居て、楽しいよ。
  次はどんな顔を見せてくれるのかなと思う。


彼は、このブログで見せている顔も、受け入れてくれるだろうか…。

  俺がお前に挿れて動かすと、お前も腰を動かす。
  その動きが、最近はぴったりはまって、
  凄く気持ち良くなって来ている。


  そう…。それが、身体が馴染むって感覚なのかもね。

  ああ、そうかも知れない。

身体は馴染んできていても、わたしの心は乱れている。
それを知っても彼は、屈託のない笑顔を私に向けてくれるだろうか…。

  いい気候になって来たな。
  これからは、ホテルだけじゃなくて
  普通にドライブとかするのもいいかもな。


  そうだね。

  まあ、途中でお前には舐めて貰うけどな。
  俺はセックスは逢ったら絶対にするからな。


  好きなのね…。

  ああ、大好きだね。
  これが普通の彼女だと、途中で痛いとか
  身体だけが目当てなの、とか言い出して
  面倒臭えんだ。


  その点、わたしが相手なら、
  身体だけ目的なのが前提なのだから、
  そんな面倒なことは言い出さない。

  そう。
  おまけに長い時間やっても、
  お前は痛がらずに悦んでくれる。


わたしの淫乱さを、彼は悦んでくれている。
そんな彼に、わたしの心を見せて、それをも受け入れて欲しいと考えるのは、わたしには過ぎた望みなのではなかろうか。
そんな事ばかり考えると、つい黙り込みがちになってしまう。

  どうした?
  ブログを見せるのが、嫌なのか?


  そうじゃないけど…。
  ただ、内容は暗いよ?
  いつものわたしじゃないと思うし、
  Tさんの知らない事も書いてある。


  それは楽しみだな。

楽しんで読んでくれるだろうか。
もしかしたら、彼を失う事になりはしないか。

それを考えた時に、ぞっとした。
彼を、失いたくない。

自分の本心を、やっと見つけた気がした。



怒りに触れて…

2008/03/10(月) 15:06:13
このブログのURLを、彼に知らせた。

読み終わった彼からのメールは、
仕事の用事で外出している時に受け取った。

  内容についてはいい。
  お前の欲望などについても想定内だ。
  だがひとつ、許せない事がある。
  俺の事を報告している事だ。

  この意味が、お前にはわからないのか?
  お前は、Sに報告する事によって、
  間接的に俺まで陵辱させているんだぞ。
  胸糞悪い。


手が、震えてきた。
わたしは、自分の仕出かした事の重大さを認識した。
彼の逆鱗に触れてしまった事も、理解した。


彼を、失う。


その結末が、急に現実的なものとなった。
涙が、溢れてきた…。

やっとの思いで、彼に謝罪のメールを送った。
自分の思慮が足りなかった事、
今後二度と、報告行為は行わない事…。

すぐに返事が来て、夜にメールするから、とにかく今は仕事に戻る様に言われた。




その夜。
彼からのメール。

  お前には失望した。
  もっと凛とした女だと思っていた。


わたしは、凛とした女ではない。
強い女でもない。
本当のわたしは、自分に自信がなくて、自分の事が誰よりも嫌いで、自分を破壊してしまいたい、卑小で思慮が浅く、その癖に淫乱な、どうしようもない女…。

けれども彼に対しては、謝罪の言葉しか出ない。

暫くして、彼からメールが来た。

  お前、晩飯食ったか?

  …いいえ。

  少しは落ち着いたか?

  落ち着いたというよりも…
  あなたを失望させた事が悲しくて…
  わたしは…どうすれば
  償えるのでしょうか…?


彼からのメールが、沈黙した。
やがて入って来た返答…

  お前には仕置きを与える。
  次に逢った時にお前を打つ。



打つ…?
今までにも、鞭打たれる事は、あった。
それなのにわざわざ断るという事は、バラ鞭で打たれるくらいでは済まない、という事だ…。

  それから、常に俺が
  気持ち良く使える身体を保つ事。
  お前の体調次第で、抱き心地も
  締まり具合も全然違う。


彼が、わたしを使う前提で話をしている。
まだわたしを使って貰えるのだ…。

その夜は、それだけが、ただただ嬉しかった。


お仕置きの後…

2008/03/13(木) 02:21:16
口移しで水をたっぷり飲ませてくれた後、

  休め…。

彼はそう言って、わたしをベッドに横たえた。
わたしはその場で丸くなる。
まだ止まらぬ涙を拭いもせずに、ベッドの足元部分で、膝を抱える様な姿勢になった。

彼がわたしの後ろに寝そべった。
背後から、わたしの肩や髪をそっと撫でる…。



あの時…わたしは、何を考えていただろう…。

何も考えていなかった様な気がする。

時々鼻を啜り上げながら、ただただ、放心していたと思う。



彼が、ベッドの上の方に移動していく気配があった。
背中がすぅっと寒くなった。
わたしは、動かなかった。



気がつくと、腕の痺れは消えていた。
そっと指の動作確認をして、異常がないのを確かめた。
涙は止まり、頬も乾いていた。
姿勢を変えて、彼の姿を確認する。

彼は、枕に頭を乗せ、大の字になっていた。
眠っているのかと思ったが、目は開いていた。
わたしが彼を『可愛い』と感じてしまうのは、普段の彼の目の所為だ。
歪んだ性癖を持っていることを感じさせぬ、邪気のない明るい光を湛えた、澄み切った瞳…。
その目を見開き、彼はじぃっとしている。

わたしはごそごそと傍らに這って行った。
彼の腕の下に潜り込み、わき腹に寄り添う。
彼がわたしを見下ろした。
わたしを抱き寄せ、髪の中に指を入れる。
そのまま髪を梳きながら、視線を天井に戻す。

わたしは彼の顔を見上げ続ける。
一体なにを考えているのだろう…?
こうして頭をゆっくり撫でられていると、眠ってしまいそうだ…。

  この天井の模様、落ち着くな…。

彼が、呟いた。

  え…?

天井に視線を転じる。
モルタルの様な粗さのある素材。規則正しく溝が刻まれ、縞模様の陰影を見せている。

  今までの部屋の天井、見てなかった…。
  どんなんだったっけ?


  普通の…つるっとした天井だった。

  そう…?

彼は再び、黙り込んだ。
わたしも天井を見上げたまま、口を閉じた。

彼の、ゆったりとした穏やかな呼吸音が聞こえる。
そこにわたしの呼吸が重なる。
規則正しい、微かなふたつの呼吸音が、室内を満たす。

とても、静かだった。





眼球愛撫

2008/03/16(日) 12:47:49
ソファの上で寛ぐ彼。
その足元に座り込み、涙を流し続けるわたし…。

彼がソファに寝そべり、わたしを抱き寄せる。

  久しぶりに、舐めたい…。

彼が舐めたがるのは、わたしの眼球。
わたしはおとなしく彼の為すがままになり、涙で濡れた眼球を舐められる。


-----


初めて眼球を舐められたのは、何度目の逢瀬の時だったろう。

  他にわたしにしたい事、ある…?

ベッドの上で、彼の腕の中に抱かれながらそう訊いたわたしに、彼は微笑んで、

  ある。

そして、逡巡する様な表情を一瞬浮かべた。

  眼球、舐めたい。

  眼球!?
  …目玉のこと?


  うん。…嫌か?

  いや…コンタクトもしてないし、
  大丈夫だと思う…。


コンタクト。
何という頓珍漢な返答だろう。
そう考えてわたしは少し可笑しくなった。
彼はすぐにわたしの上に圧し掛かり、瞼を指で押し開くと、舌を眼球の上に這わせた。
経験した事のない、不思議な感触…。
舐めながら呼吸が荒くなる彼の体重を受け止めながら、この人の性欲はやっぱり少し変わっているな…と考えた事を思い出す。

あれは、初めて逢った時の出来事だろう。
あの時わたしたちは、これからどんな欲望を実現させたいか、そんな事を話し合っていたから…。

  痛いか…?

  ううん。大丈夫。

  眼球舐められるのって、どんな感じだ?

  …わかんない…初めてだし…不思議な感じ…。

  俺も初めてだ。
  …嬉しいよ。願望を叶えてくれて。
  ありがとう。


  ううん。

  お前は?
  お前は、今まで叶えられなかった願望、何かないか?


  ん…と。

わたしも逡巡する。
壊して欲しい。
完膚なきまでに。
いきなりそんな事を要求して、彼を怯ませはしないだろうか…。
少し考えて、無難かも知れないと思った願望を口にした。

  口の中に出したり…
  顔に出したりして欲しい…。


  それって…顔射か?

  う、うん…。

  変わってんな…。
  普通の女は嫌がるぞ?


  そ、そうなのかな?

何故、普通の女は嫌がるのだろう?
あれこそ、男に完全に征服された証のような行為ではないか。
過去に、そうして欲しいと頼んだ男が居ないでもなかったが、『AVの見過ぎだ』と一蹴され、汚いものを見る様な目つきをされた。
それっきり、その願望をわたしが口にする事は無かった。

けれども彼は、嬉しそうに笑った。

  そうか…お前も変わってるんだ…。

そしてわたしを強く抱き締めた。

  お前も、変わった女なんだ…。

彼が、悦んでくれているのが判った。

  今日は残念ながら出来ないが…
  風邪が治ったら、必ずしてやる。


そう、初めて逢った時、彼は酷い風邪をひいていて…。
強い咳止めの副作用で、前立腺異常を起こしたのか、勃起力を失っていた。
メールのやり取りで、彼はそれを正直に告白し、逢いたい気持ちは強いけれども、わたしを失望させる事になる、と告げて来たのだった。

あの時わたしは、その正直さに、彼の誠意を感じた。
『風邪が治らないから逢わない』
のひと言で、良いではないか。
それをしなかった彼のメールから、わたしを強く求める気持ちと、わたしに対して誠実であろうとする気持ちを感じて…。
逢う前からわたしは、彼を単なる肉欲解消の相手として見る事が、出来なくなっていたのだ。

  元気になったら、お前の穴という穴全てを犯してやる。
  全ての穴に、ぶちまけてやる。
  勿論、顔にもだ。
  楽しみにしていろ。


あの時彼は、とても愛おしそうにわたしを抱き締めて、耳元でそう囁いた…。


-----


彼の舌が、まだわたしの眼球を舐め回している。
彼の加虐願望の強さを知った今では、その行為に一抹の恐怖を感じる。
彼は本当は、わたしの眼球を抉り出し、飴玉の様に口に含みたいのではないだろうか…。
そうされた時、わたしの眼球は、どんな味がするだろうか。
血液以外のどんな味を、彼の舌に届けるだろうか…。

舐められ続けて、わたしの涙が止まる。
眼球から、頬、唇と、彼の舌がその場所を移動する。
唇を離し、わたしの目を覗き込んで、彼が言った。

  舐めろ。

わたしは頷くと、ソファに座り直した彼の膝の間に、身体を滑り込ませた。



レッドゾーン

2008/03/29(土) 22:03:05
彼は、わたしを完全にモノ扱いしている。
わたしには、それが本当に心地いい。

以前、「初めてのアナル」で『わたしは車か。』と書いたら、それを読んだのだろう、彼からのメールに、こんな事が書かれていた。

  俺たちは、初心者ドライバーと新車だ。
  この間、慣らし運転がやっと終わった。
  これからは、レッドゾーンまで回せるな。
  愉しみだ。


わたしが新車…。
意外だった。
結婚していて歳をとっていて、スタイルも醜いわたしを、新車とは…。

  わたしは一体、どんな車ですか?

訊いてみた。
返事は、こうだった。

  新車といっても、エンジンだけだ。
  真空管のラジオがついた、
  ヴィンテージ2シーターのアメ車だな。
  この車、性能以上にやたらと加速したがる。
  制動が弱いし、サスは硬くてギシギシいってる。
  だから今、俺の癖を叩き込んでるところだ。
  俺が欲しいのは、スピードだけじゃないからな。
  この車で一番気に入ってるのは、ラジオだ。
  感度もいいし、最高の音を出すから、
  俺は気持ちよくドライブを続けられる。


わたしは、声を上げて笑った。
なんて上手いこと表現するのだろう。

わたしは、早く徹底的に壊して欲しくて、ウズウズしている。
責め立てられる事を悦び、もっと、もっとと哀願する。
そのくせ身体は硬くて、彼に柔軟運動を心掛ける様に言われている。
スタイルは大柄で無骨で大雑把、燃費も悪い。
そして彼は、わたしの啼く声を、とても悦ぶ。
突き入れられて漏らす喘ぎ声も、打たれて上げる悲鳴も、お仕置きでの喚き声すらも…。


もうすぐ…彼に逢える。
彼は、どんな事をして、わたしをレッドゾーンに叩き込むのだろう…。
怖い。
愉しみ。
怖い。
嬉しい。

早く、逢いたい…。



大好き

2008/03/30(日) 23:22:58
  Tさん、大好き…。

激しく突き上げられている時も、ゆっくり抱き合って寛いでいる時も、わたしの口から、自然に言葉が零れ落ちる。

  うん。

彼は、小さな頷きを返す。
何度目かの時に、その声に、彼らしからぬ戸惑いを感じて、わたしは訊ねる。

  困ってるの…?

  俺は、愛とか恋とかよく解らんから…。
  そう言われると、どうしていいのか判らん。


彼の、大きな掌が、わたしの頬を包む。

  お前の事は、凄く大切に思っているんだが…。
  愛だのとは違う気がするから。


彼の手に、自分の手を重ねる。

  どうもしなくていいよ。

わたしも、愛というものが何なのか、すっかり見失っている状態だ。
そして今、欲しているのは、愛ではない。
自分が、誰かから必要とされているという実感。
わたしはまだ、存在価値があるという実感…。

あなたが必要。
あなたに大事にされていて、嬉しい。
その想いを伝えようとすると、『大好き』という言葉になってしまうだけの事…。

  わたしが大事にされているのは、
  感じているから。


  そうか。

  Tさん、大好き。

  うん。

この時の『うん』には、戸惑いも迷いも、感じられなかった。




また怒らせて…

2008/03/31(月) 22:27:20
9回目の逢瀬の朝…。

彼と逢う日は、いつもより早起きしなければならないのに、その日わたしは、仕事に行く時と同じ時間に目を覚ました。
慌てて支度を始める。
アナル調教は毎回する、と言われていたから、身体の準備に手は抜けない。
下剤を使ったあと、恐る恐るフリーウォッシャーを使ってみる。
汚れがかなり薄くなるまで使い続けた結果、お風呂とトイレを何度も往復する羽目になる。
これからは、前夜の食事を早めに摂り、洗腸も夜のうちに済ませてしまおうと決意する。
わたしのスカート姿を見たい、という彼のために、初めて買ったワンピースを身にまとい、急いで彼にメールする。

  ごめんなさい。
  寝過ごしました。
  これから向かいます。


ガレージに飛び出した処で、彼から返事が来た。

  今どこだ?

  まだ家です。ごめんなさい。

  そのまま家に居ろ。
  今日はやめだ。


頭が、真っ白になった。
やっと逢える事になったのに…何故…。

  どうして?

震える手で、メールを打つ。

  気が変わった。
  何故変わったか、理由はわかるな?


立ちすくんだ。
思考が凍結し、四肢から力が抜けていく。
また、怒らせてしまった…。

  寝過ごしたからですね。
  ごめんなさい。
  先週は仕事が忙しかったから、
  疲れが溜まっていたのです。
  とにかく、向かいます。
  お願い、逢ってください。


キーを回してエンジンをかける時、『この車、キーのとここんなに重かったっけ…?』と、ぼんやり考えた。

一心に彼の住む街を目指しながら、『あと1時間以内』『あと30分以内』とメールを打ち続ける。
彼からの返答は、無い。
行けばきっと逢ってくれる筈…と考えながらも、つい先日知ったばかりの、彼の厳しさ激しさを思う。
もしかしたら、行きさえすれば…というわたしの心根を見透かして、本当に逢ってはくれないかも知れない。
そうなったら、どうしよう…。
息が苦しくなるほど彼を求めているのに、延期されてしまったら、それからの1週間は、普段の自分を装うことが出来なくなる…。

逢えたとしても、彼を怒らせたのなら当然、お仕置きは免れまい。
彼の事だ。
先日と同じお仕置きで来るとは考えにくい。
何か新しい加虐方法を考え付いている可能性も高い。
けれど、それでもいい。
彼に逢えないことに較べれば、苦痛や恐怖など、問題ではない…。

そんな事を考えながら、いつもの待ち合わせ場所から更に、彼の家に近い路地にまで車を進めた。

  着きました。
  ○○まで来ています。
  お願いします、逢ってください…。


返事は、無い。
悄然と、降り始めた雨を見つめていた。

  俺は、俺のルールに従わないものなら、
  どんなに使い心地のいい女でも捨てるぞ。


お仕置きの時に聞いた言葉が、脳裏に甦る。
メールが駄目なら、電話してみようか…。

  連絡方法は、基本的にメールだ。
  電話は使わない。


こっちは、初めて逢う前に聞いた言葉。
以降、電話で連絡を取り合った事は、一度も無い。
これもおそらく、彼のルールなのだろう。
とすれば、電話などすれば、かえって怒らせるだけだ。

  わたしは、どうすれば良いでしょうか。
  お怒りを解きたいです…。


もう一度、メールを送ってみる。
待ちながら、何度でもメールするしかない。
携帯が、メールを受信した。

  このメス豚が…
  待ってろ。


ああ、良かった…。
今度は安堵で、四肢の力が抜けた。
やっと彼の姿が目に入った時は、涙が滲んだ。
彼は、わたしを見てニヤリと笑うと、車に乗り込んで来る。

  こいつめ…。
  寝過ごしただと?


  ごめんなさい…。

  行くぞ。出せ。

  はい…。

その、既にスイッチの入った笑顔を見ながら、これはお仕置きだな…と、覚悟を決める。
何をされるだろうか。
耐えられるだろうか…。
それでも、あのまま放置され続けるよりは、ずっといい。
わたしは、いつものホテルに向かって、車を走らせ始めた。



時間の始まり

2008/04/02(水) 08:41:00
ホテルに向かう車中、何を話したか、あまり憶えていない。
逢えた喜びと、お仕置きの予感とで、緊張していたのだと思う。

部屋に入ると彼は、真っ先にわたしの首に革紐を括り付けた。
ぐいっと引っ張り、鼻が舐められそうな距離にまで顔を近付けると、囁く様に言った。

  これが付いてる間は、
  俺の名を呼ぶことを禁止する。


  …はい。

お仕置きの始まりだ。
全身が一気に緊張する。
突き放されるが、すかさず革紐を掴まれ、わたしの首が絞まる。
ぐっ、という様な声が、わたしの喉から漏れる。
頬をいきなり平手打ちが襲った。

  俺のルール、もうひとつ憶えたな?

  …はい。

再びぐいと近付けられる顔。
絞まる首。
囁く声。

  なんだ?
  言ってみろ。


  …時間に、遅れません。

  そうだ。

その声には、前に聞いた低く淡々とした声よりも、残忍な愉悦が滲み出している。
まるで、わたしを打つ機会がすぐに訪れたことを悦び、愉しんでいる様だった。
わたしも囁く様な声になっているのは、怯えの為に声に力を入れられないからだ。
彼はゆっくりとわたしの周囲を歩き、眺めている。

  スカート姿、なかなかいいじゃないか。


初めて逢う前から、わたしは、スカートは全く持っていない事を話してあった。

  スカート姿のお前に、後ろから思い切り
  ぶち込みたいんだがな。


  あ…1着だけある。礼服…喪服だけど…。

  この度はご主人ご愁傷様でした…って、
  それは洒落にならんだろ。
  喪服ってのもそそられるが。
  まあいい。
  そのうち用意して貰おう。


以前そんな会話を交わしたことを、思い出す。

自分が女である事から目を逸らそうとした結果、スカートを身に着けなくなったわたし。
それが、彼に逢って初めて、自分で可愛らしげなワンピースを買って、外に着て出る様になった。
自分で自分の変化に、驚いてしまう…。


背後から乳房を鷲掴みにされ、激しく揉みしだかれる。
堪らず喘ぎ声を漏らすと、彼は身体を離し、わたしの前に回った。

  今、どんな気持ちだ?

  …怖い…です…。

  怖いか。

彼が、ニヤリと笑う。
そんなにわたしを怯えさせるのは愉しいのだろうか、と思う様な、暗い悦びに満ちた、邪悪と言ってもいい笑顔だった。
髪を掴まれ、下に引っ張られる。

  舐めろ。

その言葉で、お仕置きは数発の平手打ちで終わっている事に気付いた。
ペニスを、わたしの餌、と表現する彼は、お仕置きの最中に、わたしへの褒美になることは決してさせないからだ。
ほっとしながら跪き、ベルトを外す手間ももどかしく、彼のズボンと下着を脱がせてペニスにむしゃぶりつく。
充分にいきり勃った処で、再び髪を掴まれて立たされると、ベッドに突き飛ばされる。
両手をベッドにつく。
スカートが捲り上げられ、下着が剥ぎ取られ、彼が一気に入って来た。

  あああーーーーっ!!

快楽の声なのか、苦痛の悲鳴なのか、自分でも判らない。
わたしの全感覚は、わたしの中で激しく抽送される彼自身の圧倒的な存在感に支配される。
髪を振り乱し。
身体を仰け反らせ。
獣の様な声をあげ。
今日も、始まった。
逝かされて、逝かされて、狂わされる時間が…。



スカート効果

2008/04/02(水) 20:43:13
服を着たまま、何度か彼に貫かれる。
逝かない彼とのセックスは、いつ終わるとも知れぬ、甘美な拷問だ。
どのタイミングで彼がわたしを突くのをやめるのか、判らない。
汗が流れ落ちても、彼の許しがなければ、服も脱げない。
どのくらいの時間、貫かれていただろうか…。
彼の命令通りに体位を変え、服を脱ぎ、いつの間にかわたしは、首の革紐を残して全裸になっていた。
達し続けて、もう声を上げる事も出来ない。
力の入らない身体に鞭打って、彼の抽送に必死で動きを合わせる…。

  少し休むか。

彼が、わたしから抜け去り、ミネラルウォーターのボトルを手に取る。
口移しで水をたっぷり飲まされた後、わたしはぐったりと彼の横に寝そべった。
彼も、ゆったりと身体を伸ばし、わたしを抱き寄せる。

  これが付いている間は…あなたを
  何と呼べばいいですか?


そっと首の革紐を指でなぞる。
彼が、はっと身体を起こした。

  外してやる。

首から枷が、外された。

  今日も仕置きしてやるつもりだったのに、
  お前のスカート姿を見たら、怒りが半減した。


そう言って、無邪気な笑みを浮かべる彼。

  …スカートなんか、何十年ぶりって勢いで、
  凄く恥ずかしかった…。


プライベートでスカートを穿いたのは、20年ぶりくらいか。
礼服ならその間数回着たが、くるぶしまであるスカート丈なので、あまりスカートだと意識しないで済んでいる。

  なかなか似合ってたぞ。
  そそられた。


  ほんと?

  うん。

わたしは起き上がって、彼にキスをする。
嬉しい時、幸せな時…獣の様に、身体を使って表現するのだ。
彼の、応えのキスを受けた後、再び横になって話題を戻した。

  わたし…Tさんを『ご主人様』とは
  呼びたくないな…。


  ああ、俺もそうは呼ばれたくねえ。

間髪入れずに、彼が答える。

  どうして?

  何か…軽く聞こえるんだ。

わたしは考え込む。

世のM女性たちの中には、自分の相手を『ご主人様』と呼んでいる人も、少なくない。
その人たちのブログなどを読んでいれば、その女性が本当に真剣な気持ちで、心から『ご主人様』と呼んでいる事は、よく解る。
けれどもわたしにとって、彼は『ご主人様』ではないのだ。
例え、同じソファに座る事が出来なくなっても。
無意識に敬語を使って話していても。
彼は、わたしにとって、もっと違う存在だ。
言語化が非常に難しいのだけれど…。
そんな彼から『ご主人様と呼べ』と言われたら、きっとわたしは落胆しただろうと思う。
しかし彼も、『ご主人様』という言葉には拒否反応を示した。
彼とは、非常に感覚的なものを共有している…。
そういう気がして、嬉しくなった。

  ま、何と呼ばれたいか、考えておく。
  それからな。


彼の、声の調子が変わった。
彼も、何事か考え込んでいた様子だ。
思考を打ち切って、別の話題に転じようとしている。

  厳密に言えば、時間が遅かった事に
  怒ったんじゃない。
  お前は、お前が目覚めた時間に起きて、
  こっちに来ればいいんだ。
  お前にも、体調や都合があるだろう?


  …うん。

  俺が、むかっとしたのは、
  『寝過ごした』だな。
  何故か解るか?


  …緊張感が、足りない?

  そうだ。

  …ごめんなさい。

  今回は許す。
  先週はお前、忙しそうだったしな。
  疲れてただろう。


もともと彼とは、待ち合わせの時間を決めていた訳ではない。
それなのに、時間が遅かったから怒る…というのは、多少理不尽ではないか、と感じる部分も、わたしの中にチクチクと残っていた。
その棘が、彼の言葉で氷解していく。

  じゃあこれからは、本当は寝過ごした時でも、
  それは言わずに『これから行くよ』だけでいいの?


  ああ。
  言わんでいい事は、わざわざ言うな。


  …じゃあ、今日のはわたしの自爆だったのね…。

  そういう事だ。
  お前がスカートじゃなかったら、
  間違いなく仕置きしていた。


  スカート効果、恐るべし…。

そんなに彼が悦んでくれるのなら…醜い40女のめかし込んだ姿など、周囲にとっては害悪だろうが、彼が『似合う』と言ってくれるのなら…。
もう少し、女らしい格好をしても良いかも知れない。
そんな事を、ぼんやりと考える。

  さて…と。

彼が起き上がった。

  縛るぞ。

わたしも頷いて、身体を起こした。




縛られて 責められて

2008/04/03(木) 21:56:06
彼が、鞄からロープを取り出す。
お気に入りの生成りの綿ロープだ。
わたしをベッドに腰掛けさせ、両手を前に出させる。
怖いくらい真剣な目つきで、口を開く。

  ひとつ言っておく。
  絶対に、我慢するな。
  変に痛かったり食い込んだりしたら、すぐに言え。
  いいな?


  はい。

わたしの手首を、縛り始めた。
手錠結びをしようとしている。
完全緊縛マニュアル 初級編で見た縛り方だ。
彼は、わたしの両手首に素早く縄をかけられる様、練習しているのだろう。

  もう少しこっちを長く、か…。

などと呟きながら、作業に没頭している。
縛っては、少し思案して解き、再び縛っては解きを繰り返す。
やがて、手の縛り方には満足した様だ。
今度はわたしを仰向けにし、足を高く上げさせ、両足首を縛り始めた。
縄を回す長さを調節しながら、足でも何度か縛ったり解いたりを繰り返す。
そしてわたしの足を曲げさせ、腕を上げさせ、足首を縛った縄と、手首を縛った縄を背後で結ぶ。
わたしは、弓のような形になった。
完全緊縛マニュアル初級編では見た事のない縛り方だった。
縛られながら、眠い様な、蕩ける様な、不思議な感覚が襲ってくる。
彼がアイマスクを取り出して、わたしに付けようとした。
首を振る。

  要らない…。

  写真撮るぞ。いいのか?

  …要らない…。

縛られている時の、自分の表情を全部見たかった。
アイマスクをしていては、顔の半分が隠れてしまう。
どこかで彼が、わたしの素顔の写った写真を悪用するんじゃないか、とか、そういう類の心配は、最早微塵もしていない。
だから、顔を隠す目的だけでアイマスクを付けるのは、嫌だった。

写真を撮り終わった彼が、わたしの乳房に食らい付く。

  あ…ああぁ…あ…

喘ぎ声が漏れる。
四肢に力が入り、縄がギリギリと食い込んでくる。
その痛みよりも、乳房への愛撫で得られる快感の方が、勝っている。
もっと続けて欲しい…もっと…。
しかし彼は、すぐに身体を離すと、縄を解き始めた。

  大丈夫か?

  少し、食い込んでる…。

  そうか…。
  こっちに来い。


自由になったわたしを、ベッドの別の場所に座らせる。
右足首の外側に、右手首が来る様な姿勢をとらせ、そこを縛り始めた。
左足首と左手首も、同じように縛られる。
わたしを仰向けに転がし、膝を掴んで左右に押し広げる。

  ちゃんとストレッチしてるか?

  …時々…。

無言でわたしを軽く睨む。
思わずそっと目を逸らした。
それぞれの縄尻を、ベッドの足に固定する。
膝を閉じる事ができなくなり、わたしのヴァギナはむき出しだ。
そんなわたしの足の間に、彼が座った。

  ああっ!

驚きの混じった声が漏れた。
彼が、ヴァギナに舌を這わせたからだ。

夫との性交渉が途絶えた理由に、夫が舌を使わなくなったというものがあった。
まるで、お前は汚いからと言われている様な気がして、とても悲しかった。
子を孕ませる為の義務感で抱かれている様な気もして、それも悲しかった。
どうして舌でしてくれないの、とは訊けず、セックスの度に、わたしは夫にとって汚いのだ、と思わされるのが嫌で、さり気なく交渉を避ける様になってしまった…。

サディストの男性がクンニをするのは、とても珍しい様な気がした。
意外に思いながらもそれは、大きな快楽をわたしに与えてくれる。
彼の指は、クリトリスを擦っている。
気が変になりそうだ。
身体が跳ね上がる。
縄が食い込む。
悲鳴が出る。

  何もかも丸見えだぞ…。

彼が、ニヤリと笑って囁いた様な気がする。
よく憶えていない。
気のせいかも知れない…。


  大丈夫か?

彼の冷静な声で、朦朧としていた意識に焦点が復活する。

  右手が、痛い…。

  右手か。

彼が手早く縄を解き始めた。

  あ。こっち左だ。

先に左手を解放してくれた。
落ち着いて見えたが、実は焦っていたのかも知れない。
わたしは思わず、くすっと笑ってしまった。

その後ふと、申し訳ない気持ちが襲って来る。
本当なら彼は、もっと色んな縛り方で遊びたい筈だ。
けれども、わたしの身体の硬さを見て、無理をさせまいとしてくれている。
毎晩、お風呂上りにストレッチをしようとして…何やかややっているうちに、すっかり忘れて寝入ってしまう。
これは、わたしの脳の構造上の問題もあるのだけれど、それにしても、彼の玩具としての自覚が足りな過ぎる…。

それに…。
彼が満足出来ない遊び方即ち、
わたしの願望の消化不良…。
もっと壊れたいのであれば…
玩具に徹する事の出来る身体にならなければ…。

彼の腕の中に抱かれながらわたしは、そんな事を、考えていた…。




窒息責め

2008/04/04(金) 22:15:38
その日は、新しい責め具が採用された。
蝋燭だ。
わたしが用意して持って行ったのだが、購入してみたら、蝋燭のパッケージに、使用時の注意が書いてあった。
最初は遠い処から蝋を落とす様に、という内容だ。
これは、彼にも読んで貰った方が良い様な気がして、蝋燭を包んであったセロファンだけ剥がして、ケースに入れ直して持って行った。

彼に、ケースごと渡す。
鮮紅色と、暗紅色の二種類…。

  まずはこっちを試すか。

彼は、浮き浮きとした口調で、鮮紅色の蝋燭を選んだ。

  後ろを向け。

両手を背後で縛られる。
その後、ベッドに深く座らされる。

  ライターは何処だ?

わたしは愛煙家だが、彼は煙草を吸わない。

  テーブルの上に…煙草と一緒に…

彼は、蝋燭をわたしの太股の間に挟み込み、ライターを取りに行った。
戻って来て、無造作に火を点ける。

  そのまま待て。

テーブルの方に引き返す彼。
わたしは、太股の間で炎を揺らす蝋燭から、目が放せない。
しっかり支えておかないと、倒してしまいそうな不安があった。
彼は何かごそごそしている。
何をしているのだろう。
ライターなんて、煙草入れに戻さずに、放っておいてくれていいのに。
手の自由を封じられた状態で、火を持たされるのは、不安だし緊張する。
やっと戻って来た彼が、太股の間から蝋燭を抜いた。
ほっとする。
肩を押されて、わたしは横になる。
その下腹部に、彼が馬乗りになる。
目が合った。
彼が、ニコっとした様に見えた。

次の瞬間、視界が奪われた。
ガサガサという聞き慣れた音。
目の前を覆う白っぽい膜。
買い物などで使うビニール袋を、頭にすっぽり被せられたのだ。
ビニール越しに、彼の手がわたしの顔を撫でる。
ビニールが、顔に張り付く。
呼吸をすると、鼻と口をぴたっと塞ぐ。
一瞬、パニックに陥りかけた。
けれども、叫んだりしたら、より多くの空気を必要とする。
その時にビニールが張り付いたら、益々パニくるだけだ。
そう思い至って、悲鳴を飲み込んだ。
ビニールが張り付かない様に、ゆっくり、そっと息をしようとした。
無駄な努力だった。
ビニールは、どんな小さな空気の動きも見逃さない。
イヤイヤをする様に、首を振ってみた。
小さな空間を見つけた。
そこにはまだ、酸素がある。
ほっとして数回呼吸をした処で、彼がその空間を潰してしまった。
再び顔に張り付くビニール。
苦しい。
もう一度首を振る。
また空間を見つけた。
今度は、そこで休憩しているのがバレない様に、そっと、そぉっと、息をする。
無駄な努力だった。
彼の手が、容赦なく空間を押し潰してしまう。
首を振っても、次の空間が見つからない。
苦しい。
苦しい。

ふっと、頭の中で声がした。
『もういいじゃん…』
そうか…もういいか…こんなにじわじわ呼吸が出来なくなるなんて、ちょっと苦し過ぎる気もするけど、でも、もう、いいよね…。
身体から、力が抜けた。
抵抗する気力も、抜け落ちた。
もういいや。
じっと待っていよう…。
その時、別の声が聞こえた。
『彼にやらせる気か!』
はっとした。
そうだ。
彼を犯罪者にしない。
そう決心したばかりじゃないか。
首を振る。
めちゃくちゃに振る。
足もばたばたさせたと思う。
声を出したかどうかは、憶えていない。

突然、ビニール袋が取り払われた。
冷たくて新鮮な空気が、美味しかった。
激しく呼吸しながら、彼を見上げる。
黒曜石の様な、感情の一切が消え去った瞳。
うっすら笑みを浮かべていた。
その表情を見て、彼が愉しんだことを知った。
わたしも、微笑んだと思う。
わたしを我に返らせた声は、Sさんの声に似ていたような気がした。

彼の手に、蝋燭が見えた。
瞳はまだ黒曜石のままだ。
わたしの乳房の上に、蝋燭を掲げる。

やっぱりいきなり乳を狙うか…。
おまけに注意書きも無視だな、この距離から落とそうだなんて…。
まあそれは、予測していたけどさ…。

心の中で呟く。
滴り落ちてくる蝋を見ながら、わたしは全身を緊張させた…。




蝋燭責め

2008/04/05(土) 19:40:28
最初の一滴が、ぽたりと乳房に落ちた。

  あ…っ!

それは、熱さというより痛みだった。
刃物が刺さったような、鋭い痛みだった。
熱さに備えていたわたしの身体は、予想外の刺激を受けて、混乱した。
ぽたっ、ぽたっと、彼が蝋を落とす。
痛い。
逃げようにも、腕は縛られて背中の下、腰の部分に彼が馬乗りになっているので、どこにも身体を逃がせない。
それでもわたしは、精一杯身悶えながら悲鳴を上げた。
悲鳴に呼応する様に、彼の蝋燭を持つ手がわたしに近付いている気がした。

蝋の滴下が止まった。
ぜいぜいと息を弾ませながら、彼を見上げる。
彼は、見た事のない表情をしていた。
相変わらず瞳には、何の感情も浮かんでいない。
と言うより…恍惚とした光だけがそこにあり、焦点は結んでいない。
完全に、陶酔している表情だった。

蝋の落ちたわたしの乳房を、彼が空いている方の手で撫でる。
蝋と肌の手触りの差を味わっているかのような手の動き。
とても優しい手つきだった。
その時、ふと思った。
今のわたしは、キャンバスだ。
彼は、蝋を絵筆に、わたしに色を刻んでいる。
自己の精神世界を、わたしという肉のキャンバスに、あらゆる形で顕在化させようとしている。
彼にとって加虐行為は、一種の創作活動なのだ…。

蝋燭を持った彼の手が近付く。
溜まった蝋が、つつーっと流された。
肌をナイフで切り裂かれるような痛み。
喉が張り裂けそうな悲鳴が出た。
冷静なわたしが、頭の中で『モスラの声みたい…』と、苦笑している。
痛い。
けれど、何故か幸せだった。
彼の素材になっている自分を、とても幸せだと感じた…。

ふっと勢いよく、彼が蝋燭を吹き消した。
満面の笑みが、じわじわと湧き上がってくる。
瞳に溢れ出す喜色。

  いいな…いいな、これ。
  すげー気に入った!


  蝋燭…?

  うん。愉しかった…。
  お前から、仕置きの時に聞いた周波数の音が出た…。


  周波数て…。

わたしは笑う。
彼は、わたしをラジオに準えるのが、とても気に入ったらしい。

  蝋燭があれば、仕置きの時にしか
  聞けない音楽が聞けるんだ。
  面白い。


  ビデオに撮ってくれなかったね…。

その日わたしは、ビデオカメラを持って行っていた。
これで、責められる自分を撮って欲しかったのだ。
何故、以前からそうして欲しかったのか、やっと判った。
どこかでわたしは、彼の責めを、創作活動だと認識していたのだろう。
だから、その作品である自分を見たくて、しょうがなかったのだ。

  ああ、夢中になって忘れてた。
  それに、三脚がないと片手が塞がる。
  存分に愉しめない。


  三脚、あるけど忘れちゃったの。
  次は持ってくるから、撮ってね。


  うん。

彼はわたしの腰から降りて、縄を解いてくれた。
わたしは、身体の上に残った蝋に、そっと指を這わせる。
赤というより、オレンジ色に見える気がした。
もう少し、どす黒い赤の方が、好きだと思った。
そう…静脈血の様な。

蝋を、剥がしてみる。
そんなわたしの胸元を見つめる彼の瞳に、また陶然とした色が戻っていた。

  俺が見た動画では…蝋を剥がしても、
  蝋を落とした痕が、真っ赤に残ってた…。


  それは、色が白くて肌の弱い人だと
  そうなるかも知れないね。
  わたしは、色黒だし肌も丈夫だから…
  このくらいなら、どうもならないみたい。


  俺が見たのは、白人女性だったよ。
  それで、男の方が、棘のついたグローブで
  蝋を落とした肌をガーッと擦るんだ。


彼は一体、どこでそんなマニアックな動画を見つけるのだろう。

  凄く、綺麗だった…。

わたしは、最早痕も残っていない己の頑丈な肌を、恨めしく思った。
彼の美意識を、精神世界を、もっとわたしで表現して欲しい。
そしてそれを記録して、わたしにも見せて欲しい…。

近い処から垂らされる蝋に、悲鳴を上げながら『低温蝋燭って、何処がだ!』と、心の中で罵声をあげたわたしだったが、彼がこんなに悦んでくれるのなら、痛い思いをする事など、なんでもない。
彼の悦びは、わたしの悦び…。

  ところでさ…いきなり乳に垂らすんじゃなくて、
  最初はお尻とか背中で、様子を見ようとは
  思わなかったの?


  そんなトコ…俺が全然面白くない。

きっぱり言い切った彼の、真面目な表情が何だか可笑しくて、わたしは声を立てて笑った。




注がれて

2008/04/06(日) 23:55:42
湯船にたっぷりお湯を張る。
いつの間にか、逢瀬の最後を、一緒に入浴することで締め括る習慣が出来ていた。
ホテルに用意されているスポンジは、肌触りが好きになれなかったので、自分でボディタオルを用意した。
ボディソープが今ひとつだったので、この日はお気に入りのボディソープを持参した。
そのうち、シャンプーやリンスも持って行く様になるだろう。
逢った日の彼は、わたしの愛用するソープやシャンプーの匂いと共に、帰宅して就寝するのだ。

お風呂での話題は、その日のプレイの感想や、次にやりたい事を言い合う。
彼もそうだが、わたしも元は体育会系。
まるで部活の後の反省会といったノリで、時々可笑しくなる。

ブログのことも、話題に上る。

  俺がまるで、爬虫類みたいに
  書かれてるな。


彼が、笑う。

  爬虫類っぽいよ。
  お仕置きの時は鰐みたいだったし、
  蝋燭責めの時は、餌を飲み込んだ
  蛇みたいだった。
  一生懸命消化して、味わおうと
  している感じでさ。


  詳しいなぁ。

  そういう動画が好きで、よく観てるの。

  爬虫類は好きか。

  うん。

  そうか。
  俺も、爬虫類っぽい女は好きだな。


  ああ、ミステリアスでいいかもね。

  苦手なのは哺乳類の、それも小動物系の女だな。
  あの手のは、どうも苦手だ。


  え…でもわたしって、爬虫類っぽくはないでしょ?
  どっちかと言えば、哺乳類じゃない?


  ああ、そうだな。お前は哺乳類だ。
  犬っぽくもあり、猫っぽくもある。


  そっかぁ。
  犬猫と暮らしてるから、似るのかなぁ?


  それも、あんま頭の良くない犬猫な。
  上手に隠れたつもりで、
  しっかりケツの見えてる猫とか。
  そういう感じだ。


  …えー…そうなの…?

  まあお前は、その方がいい。

彼は、ここ最近よく見せる様になった、邪悪で危険な雰囲気を孕んだ笑顔を見せ、わたしの頬に手を当てる。

  その方が支配しやすい。
  判りやすい方がな。


わたしは、機嫌を損ねるべきか喜ぶべきか、少し迷った。
けれど、彼のその笑顔で見つめられると、ぞくぞくしてしまって抗えない。
結局喜ぶことにして、彼の手に自分の手を重ねて、微笑んだ。


お風呂から上がると、彼の背中や腰のマッサージだ。
接骨院で貰う、メントール系のマッサージジェルを使って、彼の凝っているツボを解す。
自分の手の故障もあるから、あまり長い間マッサージしてあげられないのが悔しい。

この日は、マッサージの後、どういう成り行きか、仰向けで寛ぐ彼のペニスを口に含んでいた。
いつもなら、帰る支度を始めている処なのに。
お風呂で洗っている時は、おとなしくしているペニスが、わたしの口だとあっという間に猛り勃つ。
それが、とても嬉しい。

  Tさん…欲しくなっちゃった…

  欲しいか。
  じゃあ挿れてやる。


四つんばいになって、彼を待つ。
すぐに、棒状の灼熱が突き入れられ、わたしを深々と串刺しにする。
仰け反って嬌声を上げるわたしの耳元で、彼が

  つくづくお前は、後ろが好きだな。

と囁いた様な気がする。
後ろから突かれると、彼のペニスは、わたしの一番深い処にまで達する。
ゴリゴリと膣壁を削りながら、がつん、がつんと子宮を突き上げ、揺さぶる。
その鈍い痛みは、わたしの脳味噌をも掻き回し、極上の快感に変換される。
彼が、歯を食いしばって呻き声を漏らした。
彼が逝った。
わたしの子宮に、直接精液を注ぎ込んでくれた。
性処理玩具としての任務も、完遂できた…。
身体の奥深くで、彼がどくどくと脈打つのを感じながら、わたしも深い深い満足感を得る。
ペニスを抜いた彼が、身体を引っ繰り返したわたしの首に跨る。

  吸い尽くせ。

わたしはむしゃぶりつき、ちゅうちゅうと吸い出す。
喉を鳴らして飲み込む。
舌を使って、ペニスを綺麗に舐め回す。
精液を一滴残らず、わたしの体内に取り込む為に…。

次は是非、口の中で逝って欲しい。
その次は顔で、身体の至る処で、受け止めたい。
そしてやがては…アナルの中で…。

一日も早く、アナルを使える玩具になりたいと、そう思った。




惹かれる

2008/04/07(月) 22:01:39
ホテルを出て、いつも夕食を摂る店へ向かう。
ハンドルを切りながら、その日の出来事を回想する。


汗ばんだ時や入浴した時、蝋を落とされた場所に、ピリピリとした痛みがあった。
胸に手を当てて俯くわたしに、

  どうした?
  痛むのか?


と、訊いた彼の、残酷なまでに嬉しそうな表情…。
わたしに苦痛を与えることを、心の底から愉しんでいるのだと、文字通り痛感したのだった。


ふと、訊いてみる。

  血を見るのは嫌だって
  言ってなかったっけ?


  ああ、あれな…。

車窓の外を眺めていた彼が、わたしの方を向く。

  正確に言うとだな。
  血が出て、汚れるのが嫌なんだよな。
  血そのものが嫌なんじゃない。


  …それじゃさ…。
  もしかして、わたしに針を刺したい、
  なんて事も、考えてるんじゃない…?


  おお、よく判るな。
  乳首に針を貫通させたい。


彼の口調は、浮き浮きしていると言ってもいい程だ。
わたしは、映画や動画サイトで、残虐なシーンを平気で観ている方だが、針を刺すというシーンだけは、気持ちが悪くなってしまって正視できない。
そんな自分の身体に、針を貫通させられる…。
想像しただけで、軽い吐き気に襲われた。

  それは…ちょっと…怖いな。

  ま、針はいろいろ危ないからな。
  まだ当分はやらん。


心の中で、『「まだ」かよっ!』と、突っ込む。


アナルには生で挿れないと言われ、指を入れる時もコンドームを使う彼を見ていて、アナルについて勉強したのかな、と考えた。
わたしがどこかのサイトで調べた時も、直腸に常駐している菌の怖さについて、注意喚起されていたからだった。
アナルを責め終えると、即座にコンドームをゴミ箱に捨てる様子を見ていても、その手の注意を読んだ事があるのでは、という気にさせられる。
もしもわたしのこの解釈に間違いがなければ、針で責めるという行為も、彼が『出来る』と判断するだけの知識を持つ様になれば、実行される日が来るかも知れない。
その時わたしは、どうするだろうか…。


気を取り直して、話題を変える。

  そう言えばTさんは、
  露出には興味なさそうだね。


  ああ。無い。
  俺の感覚では、あれは、何と言うのか…
  外に向かって開いているような印象がある。


  …なんとなく解る。
  特異な性癖を持ってることを、
  第三者に知られるかも知れない
  危険を冒す、というのか…。


  俺の、普通でない性癖は、
  普通の性癖を持つ人の前で
  出すつもりは無い。


  Tさんは、そうだろうと思う。
  あと、わたしに、どこそこで自慰を
  して来い、みたいな命令も出さないね。


  最中の反応を、見られんだろ。
  それじゃつまらん。


  そうじゃないかと思った…。

何となく、彼の好みを自分が把握していきつつある気がして、嬉しくなった。
また、彼が興味を持てない事に、わたしも興味がない事も、感性が似ている様に感じて、嬉しかった。
何よりも、そういう感性が合う相手に、すぐにめぐり会えた事が、嬉しかった。

彼の、残酷な欲望を知れば知るほど。
彼の、狂気を垣間見れば見るほど。
わたしは、彼に、強く強く、惹かれていく。




恋人のように

2008/04/15(火) 23:04:05
その日の彼は、いつもと少し雰囲気が違っていた。
本当なら、ツーリングに行く予定だったのが、途中で天気が崩れるということで、急遽予定を変更し、わたしで遊ぶ事にしたからだった。
頭の中から、バイクを追い出すことが、中々出来なかったらしい。
わたしの方は、彼がいつ予定を変更してもいい様に準備だけは整えていたので、お呼びがかかった時は大喜びで家を飛び出した。

予定を変更したとは言え、この日の彼は、とても機嫌が良かった。
移動中のわたしにメールで、朝食をとり損ねたので何か調達して来て欲しいと言って来た。
それを読んだわたしが用意した朝食は、彼の好みを把握したものだった。

  これは、お前が、俺はどんなものが好きか、
  日頃からちゃんと見ているって事だからな。


ホテルに向かう車中で彼は、朝食をとりながらそう言った。
わたしは密かに、ほっとした。
一番やりたかったことが出来なかった彼を、更に不機嫌にしなくて済んだことに、安心した。
同時に、ほんの些細な頼みごとの中ででも、わたしという人間の性能を確認しようとする彼の傾向を知り、少しだけ緊張した。


ホテルに着いて一段落すると、彼はソファに座った。

  おいで。

自分の横をポンポンと叩きながら、そう声を掛けられる。
『来い』ではなく『おいで』なのに、ちょっと意表を突かれる。
わたしは、床に座って彼の足の間に滑り込んだ。

  やっぱりそこか。
  床なのか。


彼が、笑う。
膝立ちで彼に抱き付き、甘える。
キスを繰り返しながら、互いの近況を、報告し合う。
わたしの方は、職場を異動したばかりなので、報告する内容も多くなる。
彼は、それに耳を傾け、時に質問したりしながら、にこにこと聞いている。

そんなわたしたちは、きっと、どこからどう見ても、普通の恋人同士の様だったろう。
サディストとマゾヒスト、持ち主とその玩具には、見えなかったに違いない。


彼と出逢い、身体を重ねるようになって、ちょうど10回目。
甘美な拷問のひと時は、とても穏やかに、始まった。




突かれ続けて

2008/04/17(木) 01:20:22
  お前を1万回突きたい。

彼の、口癖だ。

突いて、突いて、突きまくることで、逝って、逝って、逝きまくって壊れたわたしがどんな姿を見せるのか、何を口走るのか、それを知りたいと言う。


そんな彼とのセックスは、わたしにとっては凄まじい拷問となる。
逝っても逝っても、彼の抽送は止まらない。
荒々しく激しく突き立てられる。
ゆっくりゆっくり削るように突き入れられる。
体位を変えられ、リズムを変えられ、一番敏感な部分を、隈なく刺激され続ける。
せめて彼が逝ってくれるようにと、わたしも必死で彼の動きに合わせるが、彼は逝かない。
歯をギリギリと食いしばりながら、押し寄せる波を乗り越えてしまう。

  俺が逝くと、『俺の役目は終わった…』という気分になる。
  それが何か、好きじゃない。


そう言う彼は、いつも逝かずに耐え続け、逢瀬の最後の交わりでようやくわたしの中に放出し、一滴残らず注ぎ込む…。


けれどもこの日、彼は、お昼頃にはわたしの中に、たっぷりと放っていた。
わたしは、意外に早く玩具としての役目を果たせたことにまずは安心し、その後に残った時間を思って、ぞっとした。
一度逝った後の男性が、再度臨戦態勢になった時、その持続時間は驚異的に延びる…それを、経験的に知っているからだ。


案の定…それからは、殆ど拷問と言っても良い状況となった。
彼のペニスを口に含むと、そこはたちまち漲り始める。
既に一度逝っていることなど、忘れているかの様だ。
わたしの身体も、付き合いが良い。
潤いは、止まらない。
彼の猛りに呼応するかの様に、溢れ続ける。

  俺が動くのをやめると、
  お前は、ほっとしたような顔をする。
  その後、俺がまた突き始めると、
  困った様な表情になって、
  そのうちそれが悦びの表情になる。
  あの、なんとも複雑な表情の変化が、いい。


彼は、そう言う。
わたしの方は、途中で記憶が飛んでいることも珍しくないほど、逝かされ続けて朦朧としている。
その状態で、そんな変化を見せていたとは、知らなかった。
わたしが覚えているのは、流れ落ちる彼の汗の塩辛さと、いつまでも続くじゅぶじゅぶという厭らしい音と、真っ直ぐにわたしを見据える彼の瞳の、強い光だけ。
気持ちいいのか苦しいのか、途中で判らなくなる。
喘ぎ声を上げる力も、失われる。
身体が弛緩する。
すると彼が、体位や突く角度を変える。
湿った音が、一段と湿り気を帯びる。
わたしの身体は、反応する。
びくびくと痙攣する。
感じる。
悦ぶ。

  俺はともかく、お前も大概タフだよな。
  ここまで俺に付き合える女は居なかったぞ。


彼が、笑った。




ボールギャグ

2008/04/18(金) 18:25:32
この日も、新しいアイテムが加わった。
ボールギャグだ。

ボールを銜えた時、長時間これを着けられたら、さぞかし顎が疲れるだろうな、などと考えた。

  どうだ?

後頭部のベルトを締め終わった彼が、目をキラキラさせて、わたしの顔を覗き込む。

  (顎が痛くなりそう)

  何言ってるか判らん。

  (だから、顎がね…)

一生懸命、喋ろうとしながら、身振り手振りも加えて、顎が痛くなりそうだ、と伝えようとする。
彼は、笑い転げながら、そんなわたしを見ている。
それでも何とか、言わんとしたことは通じた様だ。

  そうかぁ。
  じゃ、こうしたらどうだ?


彼は、ボールをわたしの口の中にぐいっと押し込んだ。
顎が更に押し広げられた。

  (痛い、痛いよ)

  どこが痛い?

  (顎とね…)

ベルト部分が、唇を挟み込むような感触があり、そこがチリチリと痛む。
それを伝えようとするが、勿論、まともな言葉にはならない。

  (唇が挟まったような感じでね…)

  だから何言ってるか判らん。
  面白いな、これ。


彼は、随分とボールギャグが気に入った様だ。
わたしは、舌でボールを押し出し、唇の痛みだけでも何とかしようとした。
それに気付いた彼が、ボールを押し戻す。
わたしは、顔を顰めて痛がっている事をアピールする。

  (痛いってば)

  ちゃんと喋れよ。

  (無理言わないでよぉ)

彼は益々、笑い転げる。
ひとしきり、そんな事を繰り返して遊んでいた。

  お前から言葉を奪えるという訳だな。
  面白い。次回たっぷり使ってやろう。
  さて…それじゃ風呂に入るか。


彼が、わたしの後ろに回り、ボールギャグを外した。
わたしの口元から、涎が糸を引いて流れ落ち、胸元に垂れた。

  あ…涎が…。

  え、どこ?

彼は、バッとわたしの前に回った。
胸元を濡らす涎の痕に気付く。

  しまった…。
  お前が涎垂らすとこ見逃した…。


  …なんでそんなとこ見たいの…。

  くそ、油断した…。

彼は、決定的瞬間が見られなかったことを、心底悔しがっている様子だった。
そんなに残念がらなくても…と思うと可笑しくなってきて、わたしは自然に笑顔になった。

  …まあいい。
  今度はこれ着けさせてから突いてやる。
  どれだけの涎が出るだろうなぁ?


笑顔が固まるのが判る。
怖いと思ったからではない。
わたしには、ボールギャグの何がそんなに彼を悦ばせるのか、理解できなかったからだ。
その戸惑いが、表情を固めてしまった。

わたしに痛みを与えて悦ぶ。
わたしの呼吸を奪い、苦しませて悦ぶ。
今までの彼の行為は、彼が何に面白さを感じているのか、わたしにも想像がしやすかった。
けれども、ボールギャグは解らない…。
言葉という、人間同士の意志伝達に使われる手段を奪うことで、より一層モノや動物として扱い、それを愉しむというのなら、理解できる。
けれども、涎というのは、何なのだろう…?
彼は、わたしから何を引き出そうとしているのだろう…?

  ほら、入るぞ。

浴室へと促され、わたしの思考は中断された。
以前のエントリー「注がれて」で予告した通り、シャンプーとリンスを持参していたわたしは、急いで鞄から入浴道具を取り出し、浴室へ向かった。




2008/04/21(月) 18:46:43
鏡を見た。

鏡の中には、見た事のないわたしが居た。

目が、生気を宿してきらきらと輝き、
頬には、自然な柔らかい微笑が浮かび、
穏やかで、満たされた表情の
わたしが居た。

彼と、二人きりだった訳ではない。
彼に、抱かれた後だったのでもない。

それでも、彼と一緒に居るだけで、
わたしはこんなにも幸せそうな顔をしていたのだ…。


  初めての仕置きを受けてから、
  お前の目つきが全然変わった。
  暖かい目をする様になった。



ここ最近、彼が、よくそう言っていた。

この顔を見て言っていたのだと、理解した。


破滅的な方法を使わずとも、
彼の横でならわたしは
こんな表情が出来る…。


彼が、わたしを、生かしてくれている。





不思議な責め

2008/04/22(火) 00:43:34
10回目の逢瀬。

持参したシャンプーとリンスで、彼の髪を丹念に洗う。
今夜、彼は、わたしと同じ匂いをさせながら眠りに就く…。
そう思うと、とても嬉しい。

全身を洗い終わった後は、わたしが彼に洗われる番だ。

  今日は髪も洗うのか?

  うん、その為に自分のを持って来たんだもん。
  ホテルのシャンプーは、髪がきしきしするから。


  そうか。

彼の身体から、ゆらりと黒い愉悦が立ち上ったように感じた。
そう言えば、以前「水責め」をされた時も、髪を洗った後だった…。

  …縛る、の…?

恐る恐る訊ねると、彼は、ニヤ~ッとゆっくり笑った。

  いいや。
  だが、別のものを準備している。


浴室のドアを開け、脱衣カゴの中から取り出したもの…。
ボールギャグだ。

  い…いつの間に…。

  ふふっ…。

彼は、残忍な笑顔を浮かべたまま、ボールギャグをわたしに装着する。
冷たさの中に、わたしを虐げる悦びが熾火のようにチロチロと見え隠れする、独特の笑顔…。
この顔をされると、わたしの身体からは力が抜け、怯えを感じながらも何処かが蕩け出すような、複雑な感覚に支配される。

突然、顔面にシャワーを浴びせかけられた。
全く予想外の行動だった。
手で顔を覆って遮れば良いものを、わたしの手は、まるで縛られてしまったように動かすことが出来ない。
鼻に水が入り、水泳の飛び込みに失敗した時のような鼻の痛みが襲ってきた。
閉じることの出来ない口にも、容赦なく湯が入ってくる。
噎せながら、彼の為すがままになっている。

シャワーの水流が顔から離された時、無意識に手で顔を擦った。

  (鼻、痛い…)

  鼻?
  水が入ったか?


彼の声の調子から、感情の動きがごっそり抜け落ちている。

  痛いか?

そう言いながら、ボールをわたしの口の中に捻じ込む。
わたしが『痛い』と言った事を、敢えてやっているのだと気付く。

  (い…痛い…)

  そうか。

無感動に言い、再びシャワー。
噎せるわたし。
シャワーが外され、髪を引っ張られて喉を反らされる。
そこに彼が唇を重ねてきた。
ボールを更に奥へ奥へと捻じ込むようなキス。
彼の唇と、ボールギャグが食い込む痛み。
柔らかい。
痛い。
気持ちいい。
痛い…。
突然、彼が息を大きく吸い込んだ。
驚いて、目を見開いた。
わたしの肺から、空気が吸い出される。

  (んうう…)

ボールギャグの穴から、空気が勢いよく通る音が響く。
口の全てを塞がれている訳ではないので、苦しいという事はない。
けれども、自分の意志と関係なく肺が萎んでいく感覚は、なんとも不思議なものだった。

そんな事を繰り返して遊んだ後、彼がボールギャグを外し始めた。
今度は、わたしの顔をしっかり見ながら外す。
水と涎の混じった液体が、わたしの唇から糸を引いて滴った。
無感動だった彼の表情に、悦びが湧き上がる。
解らない。
やっぱりよく解らない…。
それでも、彼が嬉しそうにしているから、きっとそれでいいのだと思った。
わたしが理解する必要は、ないのだ。
大事なことは、彼が愉しむということ…。
彼の悦びがわたしの悦びである以上、行為の意味が理解できなくとも、彼のやることを全身で受け止め、それに対して素直に反応すること。
それが一番、重要なのだ。

その後は、普通に全身を洗われて、入浴タイムは終わりを告げた。





次週の約束

2008/04/23(水) 00:06:40
お風呂から上がり、髪を拭いていると、彼が、全裸のままベッドにうつ伏せに寝転がり、「暑い…」と言いながらエアコンを操作していた。
はっと気付いて、マッサージジェルを手にベッドによじ登り、マッサージを始める。

  ふふっ…。
  判ってるじゃないか。


彼が満足げに言う。

彼に言われなくとも、彼の様子を見て、何を欲しているかを予想し行動する。
結果、彼が表明してくれる満足感。

こういう動きが、夫との間でもっと出来ていれば…と、ふと苦い悔恨が胸を過ぎる。
そうすれば、もっと違った結果があったかも知れない。
もっとも、夫との事を後悔する気は、無い。
でなければ、彼とは逢えなかったし、わたしのマゾヒスティックな欲望を満たされる充足感も得られなかったのだから。
ただ、夫婦生活において何が足りなかったのか、それを省みているに過ぎない。
その度に、己の至らなさを思い知らされ、苦い想いをするのだけれども…。
でも、それはきっとお互い様だ。
わたしが夫を見なくなったように、夫もわたしを見ていなかった。
わたしの求めているものが何なのか、彼のような真剣な眼差しで、見ていてくれなかった事は間違いがない。

  来週こそは…天気になるといいな。
  バイク乗りてえ。


  そうだね。
  …わたしはちょっと複雑だけど。


  なんでだ?
  行く予定にしているのは、○○だぞ。
  そこでなら、現地で逢えるだろう?


  うん…でも…抱いて貰えない…。

  ふふ。欲しいのか。
  エロい奴だなぁ。


散々逝かされ、悶え狂った直後だというのに、次週もそれを欲して残念がってしまう。
つくづく、わたしの欲望には限りがないと思う。
けれども、彼の楽しみを奪いたくはないし、邪魔もしたくない。

  ま、○○なら少しは土地勘もあるんだろう?
  車の中で…なんて場所も、知ってるんじゃないか?


  田舎だもん、いくらでもあるよ。

  だろう?
  楽しみだな。
  バイクに乗って、お前にも乗って、
  そんで犬とも遊ぶ、と。


  え?

わたしは手を止めた。

  …それは、うちの犬を連れて来いって、
  そう言ってるの?


  判ってるじゃないか。

犬は、ある意味、わたしの本心の代弁者だ。
わたしがあまり好意を持っていない人間には、愛想も振りまかないし寄り付きもしない。
逆に、わたしと親しい人に対しては、犬も最大限の親しみを表現してはしゃぎ、甘える。
わたしにとって彼は、今まで犬が会った事のない、特異な存在だ。
その彼に対して、犬はどんな反応をするのだろうか…。
非常に興味深いと思った。

  わかった。連れて行くよ。
  …言っておくけど、大型犬だよ?
  大丈夫?


  ああ、平気だ。

身支度を整え、外に出ると、雨が降っていた。

  あ、良かった。
  これで晴れてたら、Tさん、
  バイク乗っときゃ良かったって
  後悔するかもって思ってた…。


  別に後悔はしないが…。
  ま、悔しいとは思ったかもな。


わたしはバイクには乗らないが、車を運転するのが大好きだ。
何かというとドライブに行きたがる性分なので、気候が良くなってくると、バイク乗りがソワソワする気持ちは、とても理解出来る。

  来週は…ツーリング行けるといいね。

心から、そう言った。