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不思議な責め

2008/04/22(火) 00:43:34
10回目の逢瀬。

持参したシャンプーとリンスで、彼の髪を丹念に洗う。
今夜、彼は、わたしと同じ匂いをさせながら眠りに就く…。
そう思うと、とても嬉しい。

全身を洗い終わった後は、わたしが彼に洗われる番だ。

  今日は髪も洗うのか?

  うん、その為に自分のを持って来たんだもん。
  ホテルのシャンプーは、髪がきしきしするから。


  そうか。

彼の身体から、ゆらりと黒い愉悦が立ち上ったように感じた。
そう言えば、以前「水責め」をされた時も、髪を洗った後だった…。

  …縛る、の…?

恐る恐る訊ねると、彼は、ニヤ~ッとゆっくり笑った。

  いいや。
  だが、別のものを準備している。


浴室のドアを開け、脱衣カゴの中から取り出したもの…。
ボールギャグだ。

  い…いつの間に…。

  ふふっ…。

彼は、残忍な笑顔を浮かべたまま、ボールギャグをわたしに装着する。
冷たさの中に、わたしを虐げる悦びが熾火のようにチロチロと見え隠れする、独特の笑顔…。
この顔をされると、わたしの身体からは力が抜け、怯えを感じながらも何処かが蕩け出すような、複雑な感覚に支配される。

突然、顔面にシャワーを浴びせかけられた。
全く予想外の行動だった。
手で顔を覆って遮れば良いものを、わたしの手は、まるで縛られてしまったように動かすことが出来ない。
鼻に水が入り、水泳の飛び込みに失敗した時のような鼻の痛みが襲ってきた。
閉じることの出来ない口にも、容赦なく湯が入ってくる。
噎せながら、彼の為すがままになっている。

シャワーの水流が顔から離された時、無意識に手で顔を擦った。

  (鼻、痛い…)

  鼻?
  水が入ったか?


彼の声の調子から、感情の動きがごっそり抜け落ちている。

  痛いか?

そう言いながら、ボールをわたしの口の中に捻じ込む。
わたしが『痛い』と言った事を、敢えてやっているのだと気付く。

  (い…痛い…)

  そうか。

無感動に言い、再びシャワー。
噎せるわたし。
シャワーが外され、髪を引っ張られて喉を反らされる。
そこに彼が唇を重ねてきた。
ボールを更に奥へ奥へと捻じ込むようなキス。
彼の唇と、ボールギャグが食い込む痛み。
柔らかい。
痛い。
気持ちいい。
痛い…。
突然、彼が息を大きく吸い込んだ。
驚いて、目を見開いた。
わたしの肺から、空気が吸い出される。

  (んうう…)

ボールギャグの穴から、空気が勢いよく通る音が響く。
口の全てを塞がれている訳ではないので、苦しいという事はない。
けれども、自分の意志と関係なく肺が萎んでいく感覚は、なんとも不思議なものだった。

そんな事を繰り返して遊んだ後、彼がボールギャグを外し始めた。
今度は、わたしの顔をしっかり見ながら外す。
水と涎の混じった液体が、わたしの唇から糸を引いて滴った。
無感動だった彼の表情に、悦びが湧き上がる。
解らない。
やっぱりよく解らない…。
それでも、彼が嬉しそうにしているから、きっとそれでいいのだと思った。
わたしが理解する必要は、ないのだ。
大事なことは、彼が愉しむということ…。
彼の悦びがわたしの悦びである以上、行為の意味が理解できなくとも、彼のやることを全身で受け止め、それに対して素直に反応すること。
それが一番、重要なのだ。

その後は、普通に全身を洗われて、入浴タイムは終わりを告げた。





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