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自分のために

2010/01/06(水) 00:11:24
病院で、カウンセラーさんと話していて、気付かせて頂いた事がある。

それは、わたし自身が決断して行動に移した時には、
必ずと言って良い程、事態が好転する事だ。
好転まではしなかった場合でも、必ず何か得るものがある。

それが一番実感出来るのは、彼だ。
わたしからメールを出さなければ、
彼との出逢いが無かった事は、間違いない。

逆に、周囲の言うなりになった結果や、
わたしが甘えたくなって周囲に流された結果は、
不思議な程に、後々にわたしを苦しめる事に、なっている。

このパターンを一番実感出来るのは、Sだ。
乗り気でなかったわたしとメッセで繋がる為に、
他の友人を使うという方法でアプローチされ、
断り切れなくなって渋々応じた結果が、これだ。

その他、仕事に関してもプライベートに関しても…。
振り返って見れば、本当に、見事な程
カウンセラーさんの指摘の通りなのである。

そう言うカウンセラーさんにしても、
自分が注意欠陥障害ではないかと気付いた際に、
そのまま二次障害に突入してうつ状態に陥り、
幻聴らしきものまで聞こえ始めた時、
このままでは拙い、と、ネットで情報収集した結果、
選んで通院し始めた病院で出会った人なのだ。

精神を病んだ場合、医師やカウンセラーとの相性が悪く、
病院ジプシーとなってしまうケースも多い…と聞く中で、
初めて行った病院で、そのまま頼りになるケアを受けられるというのは、
きっととてもラッキーな事なのだと、常々思っていた。

よくよく考えると、結婚にしても、そうだ。
わたしは、自分で、この人と結婚したいと決めて、
元夫に接する様になった。
結婚生活中や、離婚に至る過程で、
悲しかったり悔しかったり、落ち込んだり怒り狂ったりもしたし、
今は莫大な借金を押し付けられ、
生活の基盤を破壊されまでしているけれど、
結婚生活そのものを記憶から削除してしまいたい、とまでは、考えていない。
あれだけの期間、無駄に過ごしてしまった…とは、考えられないのだ。


今までのわたしは、自分の力で何かを為し得ても、
それはわたしの力ではない、と否定されてばかりいた。

学業の成績を、着実に上げていった時。
母は、今回は周囲の成績が悪かっただけだと言ったり、
一番ではないから意味が無いと言ったり、
時には、神様のご加護のお陰だなどとも言って、驚かせてくれた。

会社を興して、何とか軌道に乗せた時。
元夫は、わたしが優れた経営者だからではなく、
自分がブレインについているからこそ出た結果だ、と言った。

わたしは、自分に自信を持つ機会を、悉く奪われている状態だったのだ。

けれども、わたし自身が行動を起こせば、
何か必ず良い結果を生むものがある。
己の選択に、わたしはもっと自信を持っていい。
自信を持って、生きていっていい。


わたしは、わたしが快適に暮らせる生活を構築する為に…
自分で考え、自分で決めて、仕事を始める。


デリヘル嬢。


それが、わたしが決めた、わたしの新しい仕事である。






職業は、女。

2010/01/06(水) 03:33:51
わたしが、わたしの好きな様に生きていく為の選択肢が、何故デリヘルなのか。
それはやはり、わたしの注意欠陥障害と、深く関係がある。


一昨年、わたしは彼と、ダイエットすると約束した。
そして、一昨年から去年にかけて、本格的にダイエットを始めた。
いっときは、順調だった。
けれども、あともう少しで目標体重になる…という時に、事態が変化した。

仕事の派遣先が変わり、日常的に、掃除をしなければならなくなったのだ。

もっとも、普通の事務員をやるのであれば、掃除は、仕事内容に当然組み込まれるべき事だ。
それまでの派遣先は、わたしに出来る範囲の掃除内容でも文句を言われる事は無かったが、次の派遣先の長は、少し潔癖なところのある人だった。
毎日の様に、あそこを掃除して、ここの掃除が出来ていない…と、言われる様になった。

それまでのわたしの頭の中は、仕事の段取りと、ダイエットの為の行動の段取りを、組み立てていれば良かった。

そこに今度は、文句を言われない為の掃除…という、わたしの天敵と言っても良い段取りを、組み込まなくてはならなくなった。
わたしの脳はオーバーフローし、ダイエットに関する事を、考えられなくなった。
そして、実にあっけなく、リバウンド…。


去年中に、目標体重への到達とその維持が出来なかった場合は、わたしを棄てると言っていた彼が、言葉通りにしなかった理由は、簡単だ。

今、彼が気に入っているゲームの、対戦相手に困るからである。

わたしを縛ったり鞭打ったりして遊びたいという欲求は、完全に失せたと言い、セックスの回数までも、減っていった。


家を失う日程がはっきりと決まった頃、わたしは、掃除掃除と言われ続けた事も手伝って、かなり精神状態を悪くしていた。
もうこれ以上、今の仕事をしながら、新しい家を探して引越しして…という苦境を乗り越える事は不可能だと判断し、派遣契約を更新せず、失業者となった。

困った事になったけれど、きっと親戚が助けてくれるに違いない、という甘えや期待は、あっさりと打ち砕かれた。

そうなって初めて泡を食い、オロオロとして泣き付いたわたしに、彼は言った。


自分に正直に、やりたい事をやって生きろ、と…。


わたしは、思案した。

まずはやはり、彼と共にいる事。
次に、犬や猫と暮らせる環境。
これは、今の生活から失いたくない。

そして、やりたい事は、お金を稼ぐ事と、彼が喜んで遊びたくなる様な身体になる事…。

ならば…。
体型と美容に気を配り、彼好みの女になる事を、いっそ仕事にしてしまってはどうだろう。
そうすればわたしは、常にダイエットの事を最優先で考えていていい生活が、出来る。
それに、風俗ならば、事務職などよりは短い拘束時間で同じだけの金額を稼げるだろうから、ダイエット以外の事をしたい時間も、多く取れそうだ…。

そんな事を考えていた時、彼が、言った。

  お前、次の仕事、デリヘルなんかどうだ?
  今のままじゃ売れんだろうから、
  ダイエットもしなきゃならんし、
  稼ぎも普通の仕事よりいいだろう。
  一石二鳥なんじゃねえの?


本当に、何と言うタイミングだろう。

どうしてこの人は、常に絶妙のタイミングで、わたしの背中を押してくれるのだろう。

  それ、わたしも考えてた。
  やってみていい?


  おう、やれよ。
  やって、エロくてイイ女になれ。
  お前がどんな風に変わるか、愉しみだぜ。



決心は、ついた。

念の為、カウンセラーさんにもこの決意を話してみた。
そうしたら、前のエントリーの様な事を言われたのだ。

こうしてわたしは、熟女デリヘルで働く事になった。
職業は、女。
女であり続ける事…。





罵倒される

2010/01/20(水) 17:49:38
Sとの会話が減った理由には、その内容が結局、彼に対する罵倒になる…というのも、あった。

彼の性癖をどうこう言うのは、まだ我慢出来た。
彼が普通でないのは、彼自身も自覚している事実だったからだ。

一番我慢しかねたのは、金銭的な問題だった。


わたしがゲームに参加しなくなった以上、Sとの共通の話題は乏しくなる。
わたしの方から読書を話題にしてみても、会話にならない有様だったし、Sから芸能人の話題を振られても、わたしにはテレビを観る習慣がないので、話が全然解らない。
近況を語ると、わたしの方はどうしても彼の話になってしまう。
そんな中、ある時Sから言われた言葉は、わたしの度肝を抜いた。

  そんだけ頻繁に会ってると、
  彼氏もホテル代大変だなwww
  どんだけ金持ってんだ?


  え…割り勘だよ?

  はあ!?
  割り勘って、ホテル代?


  うん。

  何だそりゃ!?
  ホテル代を女に出させるなんて、
  どんだけ情けない男なんだよ!
  やめとけよ、そんな男!!


これにはわたしは、とても面食らった。


彼と初めて逢った時、わたしたちは、完全に時間を忘れて互いを貪り合った。
その結果、ホテルの料金は、言葉を失う様な金額になっていた。
彼は、何気ない様子で精算を済ませていたが、その後、彼から流れてくる空気の様なものに、わたしは、動揺や落胆の匂いを感じ取った。
だから、車に乗ってから、彼に半額を差し出した。

  これ…もし良ければ、受け取ってくれる?

  え。いいのか?

  …うん。

彼は、ほうっと息を吐き出して、言った。

  ありがとう。
  正直、凄く、助かる。


この時、わたしは、彼に対してとても好感を持った。
自らの性癖を含め、わたしに対して、何ら取り繕う事なく、妙な見栄をはる事なく、自分の何もかもを曝け出している事が、解ったからだった。
それからは、二人で逢う時の会計は、割り勘が当然となっていたのだ。


バカ正直に、こんな事言うんじゃなかった…と後悔しながら、わたしはSに反論する。

  だって…彼だって、そんなに
  経済的に裕福な訳じゃないのに、
  ホテル代は全部向こう持ちだなんて、
  無理させる事は出来ないよ。


  男ならな、そこは無理をしてこそ、
  真の男なんだよっ!
  その調子じゃお前、交通費も貰ってないだろ。


  えええ?
  そりゃ、わたしの車使ってるんだし、
  それにわたしが逢いたくて行ってるんだから、
  わたしが払って当然じゃないの。
  交通費って、何それ。
  何でそんなもの貰わないといけないの?


  はああ!?
  やめとけやめとけそんな男。
  そんな状態に甘んじてるなんて、男じゃねえ。
  俺がお前と一緒の時、金使わせた事があるか?
  交通費も出してやってるだろうが!!


わたしは、絶句した。
Sは、それをわたしが不愉快に思っているだなんて、夢にも思っていないのだ。
もともとわたしが、相手の性別に関係なく、割り勘の方が気楽なタイプである事を、理解しようともしていないのだ。

  …そんなの…わたしちっとも嬉しくない。
  わたしは、割り勘が好きなんだよ。
  奢られると、気が重いの。
  気楽に誘えなくなるから。


それに…
言い続けそうになった言葉を、わたしは飲み込む。

金銭的な負担を被る事だけで、俺は真の男だなどと嘯けるなんて、とても軽薄だ。
もっとも、そんな事でしか優越感を味わえないのなら、しょうがないけれど。
でも、それを、そうではない人間にまで押し付けて、他人を批判する材料にするな。

と。

この時の会話は、どういう風に終わったのか、記憶にない。
けれどもこの時から、Sとの会話が苦痛になり始めた事は、間違いないと思う。





嫌悪する

2010/01/20(水) 21:31:52
元夫との離婚が成立間近のわたしは、平日なら、とにかくひたすら規則正しく生活し、ダイエットと自炊を心がけ、健康的に暮らす事に、邁進していた。
休日には、彼と逢う。
逢えない時は、静かに読書をしたり、ネットで、ダイエットや料理に関する情報を収集したり、連帯保証人になった場合の身の処し方の情報を収集したりして、過ごした。

Sからは、たまに携帯にメールが入る。

  最近、メッセに出て来ないから、
  心配している。
  元気なのか?


  元気だよー。

ひと言だけ返答し、携帯を放り出す。


ある日、たまたま気が向いたので、メッセにサインインしてみた。
すぐにSからメッセージが飛んで来た。

  何だよお前、どうしてるんだよ!
  心配するだろうが!
  たまには出て来いよ!


  あー、ごめんごめん。
  あれこれ忙しくしててさ。


  彼氏には会ってるんだろ?

  ま、予定が合えばね。

  お前なぁ…。
  そんな事っちゃ友達なくすぞ。


わたしは、呆気に取られた。

  え…何それ…?

  彼氏が出来た途端に、そっちばっかで
  友達の事を放ったらかしだろうが。
  そんなんじゃ、友達に愛想尽かされるぞ。


  や…別に、彼との事ばっかじゃなくて、
  今の状況を克服する為の情報収集とか、
  いろいろと忙しいんだよ。


  でも、空いた時間は彼氏に使ってるんだろうが。

Sが、何を言いたいのか、解らなかった。
日々を忙しく過ごしていて、誰かに話を聞いて欲しい様な精神状態にはならずに暮らしていけているわたしに、何を求めているのだろう…?

  あのパーティの仲間は、
  お前の友達だろうが。
  かけがえのない友達だろうが。
  そういう仲間を、大事にしないでどうする。
  男が出来たら、もう付き合わないみたいな、
  そんな軽い存在じゃないだろう?


わたしは、首を傾げた。
何を、言っているのだろう…?

わたしは、彼らゲーム仲間の事を、そこまでかけがえのない友達だとは、認識していなかった。
ゲームで知り合ったから、ではない。
時間が空いたら、交流するゲーム仲間は他にも居たが、それは、メッセンジャーやスカイプは好きではないというわたしを尊重してくれて、たまにチャットやメールでやり取りをすれば、喜んでくれるしわたしも楽しめる…そういう子ばかりだった。

  時間が出来たら、メッセに上がって、
  皆で楽しい時間を過ごして元気になれる。
  そういう友達が居る事に、感謝しろよ。
  彼氏ばっかじゃなくてさ。



ふと、中学高校時代の事を、思い出した。
休み時間、用足しに行くのに、誘い合い、連れ立って教室を出る。
そういう友達は、わたしには居なかった。
声を掛けられても、自分は用がなければ、行かないと返事をする。
トイレに行くにも必ず一緒じゃなければ友達じゃない、などと言う子は、わたしの友達には居なかったし、そういうタイプの子はわたしに近付いて来なかった。

Sの言う事は、用がなくても友達なら一緒にトイレに行ってくれるべき、と言っているのと、変わらない気がした。

わたしの生活リズムが変化した事を理解せず、毎晩メッセで一緒に騒いでくれないならお友達じゃない…なんて言う奴が居るなら、そんなのこっちからお断りだよ…と、思った。

そう言えば、学生時代、「友達じゃないの」と口に出しながら寄って来る子達に限って、影ではわたしの悪口を言ったり、わたしを困らせる様な事ばかりしていたっけ。
あれ以来、わざわざ「友達」と言って来る人間を、わたしは信用しなくなっていたのだった…。


  とにかく、今夜はパーティの連中も居るから、
  ちゃんと挨拶してきな。


  …ん、判った。


この時からわたしは、Sに対する嫌悪を、感じ始めたのではないかと思う。





怒る...(1)

2010/01/21(木) 00:56:06
元夫との離婚が成立してから暫くして、ついに、Sとの関係において決定的とも言える出来事があった。

当時乗っていた車のローンが支払えなくなったので、乗り換えて欲しいと、元夫から連絡があった。
査定価格から、ローン残を差し引いた金額で買える車を、探さなくてはならない。
わたしがローンを組む事は、出来ない。
元夫の自己破産が成立すれば、わたしも連鎖破産せざるを得ないからだ。
諸々の事情もあり、次の車を入手するまでの猶予は、3週間弱……。

わたしの住む地域は、冬になれば、当たり前に積雪や凍結に見舞われる。
車でなら片道20分の職場は、公共の乗り物を使うと片道3時間にもなる上に、バイク通勤は禁止されている。
限られた予算内で、それなりの性能の車を、大至急探して手に入れなくてはならない。

連日、ネットで中古車情報を当たっては、電話等で在庫確認をして…という作業に、追われ始めた。
良さそうな車を見つけ、連絡を入れると、もう売れたと言われて落胆する。
そんな毎日を、過ごしていた。

  次の車は、何にする予定だ?
  予算は?
  俺も、別ルートで当たってやる。


  え…いいんですか?

  ああ。
  お前の車、即ち俺の車だ。
  だから手伝ってやる。


  ……ジャイアンですか…。

という様なやり取りがあり、彼も、車探しに協力してくれていた。


そんな時、Sから連絡があった。
仲間内でパーティを立てる企画があるから、それに参加しろ、との事だった。
そのゲームを嗜む者にとっては、記念的イベントになる為、状況さえ許せばわたしも、多少夜更かしになろうとも、大いに参加したいバトルではあった。
けれども、そんな事を言っている場合では無い。
メッセを立ち上げ、Sに繋ぐ。

  ごめん、すごい参加したいけど、
  今、そんな状態じゃないんだ。


  ん、どうした?

  実は、これこれこうで……。

  あらー、それは大変だなぁ…。
  じゃあさ、やっぱ参加するっきゃねえって。


  は…?

  そういう大変な時こそ、息抜きが必要だろ。
  楽しい事して、ぱーっと元気出さんと。
  な、だから、参加しろ!
  いいな!


わたしの奥歯が、ギリッと音を立てた。

  あのさー…。
  本当に、ゲームしてる場合じゃないの。
  次の車を見つけるので、精一杯なの。
  車無いと、仕事もどうなるか判らない程の状況なの。
  だから、無理。
  悪いけど。


  んだよー。
  へタレ。
  根性なし。


この時、S本人が目の前に居たら、わたしは、微塵の躊躇も無く、その顔面を拳で殴っていただろう。
けれども、目の前にあるのは、残念ながらPCのモニターだ。
やっとの思いで、怒りに震える手で、返事を打つ。

  生活の基盤をブチ壊されそうな時に、
  ゲームで、どう根性を見せろと?


  やーいやーい、根性なしーw
  弱っちいのぉwww


メッセンジャーでの会話では、無理も無い事ではあるが、Sには、私が本気で切れた事が、全く伝わっていない様だった。

  根性なしで結構。
  それじゃ、忙しいからこれで。


会話を打ち切り、メッセを落とす。
気持ちを切り替えて、中古車情報検索に戻ろうとするが、手の震えが、止まらない。
この時、Sの言う「息抜き」とは、わたしの息抜きではなく、自分の息抜きの事を言っているのだ、と認識した。
自分がやりたい事を、わたしの為を思っての事だとすり替えて、その上に押し付けて来ているのだ、と。

怒りがおさまるまで、拳を握り締めて、家の中をウロウロする。
暫くそうしていて、ふと気が付くと、犬と猫が、ウロウロするわたしにパタパタと着いて回っていた。
それを見て、思わずぷっと噴き出し、ひとしきり笑った後、わたしはPCの前に戻り、作業を続けた。


  おい、この車、どうだ?

数日後、彼から、写メールが送られて来た。
その車の情報を見て、驚いた。
丁度、ネットで検索していたわたしが目を留め、ショップに当たろうとしていたのと、同じ車だったのだ。

  そうだったか。
  外から見た状態は、割といいぞ。
  車検切れだが、受けても予算内に納まるだろう。
  タイヤの溝の状態も、いい。
  当分買い換えずに済むと思う。


タイヤの溝…。
わたしは、そこまで考えていなかった。
そんなところまでチェックしていてくれた彼に感謝しながら、すぐにショップに連絡を入れる。

最終的に、この時の車が、現在のわたしの愛車となった。
彼は、出先で中古車屋を見かける度に、わたしの希望する車種がないか、あればどんな様子かを、チェックしてくれていたらしい。
そして、これはと思う車を見付けた。
ほぼ同時期に、ネットでわたしがその車を見付け、そして押さえる事が出来たのは、本当にタイミングがいいとしか言いようが無かった。


離婚後の最初の危機を何とか乗り越え、ひとまずほっとした私は、メッセを立ち上げた。
Sから、メッセージが飛んでくる。

  お前さ。A(他のゲーム仲間)に、
  イベントバトルに参加出来ないって
  ちゃんと言ったか?


  ん?
  Aさんなら、前にお誘いのメール来てたから、
  参加出来ないって返事しておいたけど?


  それだけかよ。
  ちゃんとメッセでも謝っておけよ。


  え?
  メール、届いてなかったの?
  Aさん、わたしの不参加、知らないの?


  いや、それはわからんけどさー。
  誘ってくれた人には、直接謝るのが礼儀だろうが。


  直接って…。
  メールもメッセも、同じ様なもんでしょ。
  メールだと失礼って事では、ないと思うけど…。


  はあ?
  メールでもメッセでも、謝罪するべきだろう。
  友達と言えども、礼儀は守らにゃ。


わたしは、眉を顰める。
こうしてわたしにお説教してくるという事は、先日わたしが本気で怒ったのに、全く気付いていない…という事だろう。
丁度そこに、話題のAさんがサインインして来たので、わたしは彼女にメッセを飛ばした。

  Aさん、お久しぶりー。

  あ、しのぶさん、こんばんはー。

  こないだはさ、せっかく誘ってくれたのに、ごめんね。
  何か今、すごい忙しくてさ。
  イベントだったし、残念だったんだけど。


  いやいや、忙しいならしょうがないよー。

Aさんは、礼儀知らずだとわたしに怒っている様子は、無かった。

  今、Aさんと話してる。
  改めて謝っておいた。


  ん、よしよし。

  Aさん別に怒ってなさそうだけど。

  怒ってるからとかじゃなく、
  こういう事は、メールでもメッセでも、
  ちゃんと謝るのが礼儀だろ。
  俺の言ってる事、おかしいかなぁ?


いや、おかしくないよ、ごめんね、とわたしが言うのを待っている…と感じたので、期待通りの返答をするのは、止めておいた。

  さあ?
  少なくとも、わたしと考え方が違うのは、確かだね。
  わたしは、お誘いメールに丁寧に返事した段階で、
  礼儀は尽くしたと考えてるから。
  わざわざメッセでも謝らなきゃいけない、とは思わない。
  今日みたく、たまたま会って会話すれば、もう一度謝るけれど。


  ともかくさ。
  お前が参加すると思って、
  楽しみにしていた奴らが居るんだから、
  皆にちゃんと謝ってやれよ。


この時何となく、Sは、参加メンバーに「俺が呼べば、しのぶは必ず来るからさ」と大見得を切ったのではないか…という気がした。
でなければ、わたしがゲームに参加出来ない事を、どうしてこういう風に詰られるのか、理解が出来ない。
わたしは溜め息をつき、ゲーム専用SNSにアクセスした。
Sの言う事はともあれ、このイベントのバトル結果を知りたいと思ったのだ。

だが、そこでわたしは、更なる怒りに見舞われる……。







怒る...(2)

2010/01/21(木) 03:02:38
久しぶりにアクセスしたゲーム専用SNSで、Sのゲーム日記を読み、わたしは、言葉を失った。

───今度のイベントバトル、しのぶは参加できんらしい。
     俺は、あいつのリアル事情を殆ど知ってるが、
     それでも何とか参加して欲しいんだよなぁ…
     どうにかならんかなぁ…────

この日記に、コメントを付けているゲーム仲間も居たが、その内容は記憶にない。


以前わたしは、Sに、俺は色々知ってるぞ、と仄めかす様な真似はやめてくれ、と言った事がある。
この時にも、わたしの本当に言いたい事は伝わっていないと感じたが、この日記を見た時は、その行為に何故わたしが不快感を表明するのか、Sが理解出来るまで、とことん食い下がれば良かった…と、心底後悔した。

メッセに出て来たSを、捕まえる。

  ちょっと話がある。

  あ?どした?

  〇日のSさんの日記を読んだ。
  何で、あんな事書いたの?


  別に?
  何も考えずに書いた。
  なんかまずかった?


「何も考えてない」
この言葉を、Sはよく使った。
何も考えてない、と言われると、そこから先、どう話を続ければ良いのか、判らなくなってしまう。
けれど、「じゃあしょうがないねー」で許す訳にいかなかった時は、「ちったぁ考えて行動しなよ」と、それまで何度、言っただろうか。

  ああ…また、それか。

  なに、怒ってんの?

  あのさ。
  わたしが、誰かから相談を受けた時は、
  相談内容を誰にも言わないのは勿論、
  相談を受けた、という事も、
  誰にも言わないんだよ。


  うん。

  何でか解る?
  相談されたって誰かに言ったら、
  その子が、人に相談したくなる様な
  事情を抱えてるって事は、バレるから。
  だから、言わないの。


  なるほど。

  でもSさんは、それを、言うんだね。
  俺だけは知ってるんだけどって、
  言うんだね。
  わたしは、知ってるって事すらも、
  誰にも言って欲しくなかった訳よ。


  あー、そういう事か。
  ごめんなさい。
  あの日記は、すぐに消す。


  消して、どうなるの?
  もう皆読んでしまった後なのに、
  無意味じゃない。
  それに、消した事に気付いた誰かが、
  わたしとSさんの間で何かあったんではって
  心配するかも知れないでしょう。
  だから、それはいい。


  いや、俺が悪いんだから、消す。

  いや、だから消すなって言ってんの。
  心配する子が居るかも知れないでしょう。


  …はい。

  Sさんはさ、よくわたしに、
  お前だから話すんだけどって、
  色んな子の色んな事教えてくれたけど、
  わたしの話も、あんな感じで誰かに
  話してるの?
  わたしの事情、知ってる子居るの?


  言う訳ないだろ!
  俺を見くびるなよ。
  お前だけに決まってんじゃん。
  お前だから、話してたんだよ。


見くびるなと言われても、経験上、あなただから話すんだけど…という前置きを付ける人間は、この「あなただけ」があちこちに居るものだった。
もう、信用出来ない。
Sに、何もかも相談していた事を、激しく後悔する。
己の見る目が曇っていたのだ…という自己嫌悪が、押し寄せる。

  ごめん。
  考えなしで、ごめんなさい。


Sは、神妙な文面で、謝罪してくる。

本当に、考えなしの行動なのだろうか?
わたしには、そうは思えない。
この日記の裏に、皆のリアル事情を相談される俺、信頼されてる俺、という優越感が、見え隠れしてしまう。

  ごめんなさい。
  もうお前の事情は、聞かない。


え…?
それは、何か違う。
わたし以外の子から込み入った話をされて、他の子の前で「俺は知ってるぞ」という態度を取る事そのものを、改める気は無い…という事だろうか?
それとも、相談事をされれば、相談されたという事だけは、誰かに話さずにはいられない…という事だろうか?

  いや…それはまぁ、わたしも話すと思う。
  Sさんだって、事の顛末がどうなったか、
  結果を聞かされないと、気になるでしょう?


  うん…ごめんなさい。  
  俺、お前の信頼を裏切っちまったのかな…。


そんな事ないよ、と言って欲しいのでは、という気がした。
だから、それには答えなかった。

  まぁ、あの時のわたしには、
  何もかも話してしまえる人は、
  必要だったと思う。


  そっか…。

  彼に出逢う事も、出来たし。

  俺も…
  こんな風に俺を叱ってくれる奴、
  そうそう居ないよ。
  やっぱり俺にとってお前は、
  かけがえのない友達だよ。


失笑した後、脱力する。
やっぱりわたしが本当に言いたい事は、伝わっていないと感じた。
けれども、もう、どうでも良い。
この時わたしは、Sとは距離を置く事を、決意していたからだった。

  でもさ。
  普段は、言いたい事を言えずに、
  心の中に溜め込んで、挙句壊れるお前が、
  俺にはこうしてガンガン言ってくる。
  これって、すげーいい傾向なんじゃね?
  俺を相手に、言いたい事ちゃんと言う
  練習をすればいい。
  そして、薬なんか飲まなくてもよくなればいい。


わたしの顎が、ガクンと下がった。
背筋を、冷たいものが駆け上る。
これは…ポジティブ・シンキングと呼んでいいものじゃない。
物事を、自分の都合の良い様に解釈しようとしているだけではないのか。

Sとは距離を置こう、という決意を、再び強固なものにして、わたしはその日の会話を終えた。







普通…?

2010/01/21(木) 06:49:37
わたしは、彼の部屋で、ベッドに横になって眠っていた。
仕事に行っていた彼が帰宅したのにも気付かず、ぐっすりと眠っていた。

顔の前の空気が、大きく動く。
鼻腔に、お湯の匂いと石鹸の香りが、流れ込んで来る。

彼が帰宅して、入浴も済ませたのだな…ということを、
言語化出来ぬほど漠然としたイメージで認識したその瞬間、
髪の毛を鷲掴みにされ、口に何かが捻じ込まれる。

この時、咄嗟に防衛しようとして、
逃げようとしたり口をぎゅっと閉じたりしないのは、
そこが、彼の部屋で、漂う香りが、
彼の愛用する石鹸の香りだからだろうか。

口に入れられたものを舌と唇で探り、
それが彼のペニスである事を知る。

身体を少し起こし、口での愛撫を続ける。

目を開けて視線を上げると、
髪の毛からまだ水滴を滴らせた彼が、
無表情でわたしを見下ろしている。

  …おあよ。おはえりなはい。

ペニスを含んだまま、モゴモゴと言うと、
彼は、口元をちょっと歪めて微かに笑う。

わたしは、フェラチオに没頭する。
わたしの意識が、段々覚醒していくのと比例する様に、
彼自身が、硬く、太く、熱く、漲り始める。
それでもわたしは、しゃぶるのをやめない。
彼に教えられたやり方を駆使して、
愛撫し続ける。

彼の手が再び、わたしの髪を掴む。
引っ張られ、じゅぽんっという音と共に、ペニスが引き抜かれる。
わたしに挿れたくなったのだ。
素早く、ジャージのズボンとパンティを脱ぎながら、
床に仰向けになる。

フェラチオをしている間に、わたしの陰部は
すっかり濡れそぼっている。
彼が、突き立てる。
めりめりと音を立てそうな感触に、仰け反る。
一番奥に到達した瞬間、わたしの全身が、痙攣する。

そこからは、最早拷問と言っても良い。
わたしが何度達しても、彼の抽送は、とまらない。

  声がでけえぞ。
  隣に聞こえる。


低く濁った声で囁かれ、はっと一瞬だけ意識が固形化するが、
またすぐに、どろどろと崩れ、蕩けてしまう…。

  あ…あぁ…もう駄目…逝く…逝く…っ
  お…っお願い、もう…もう…あう…んっ…


どれだけ懇願しても、彼はやめない。
わたしは、待つしかない。
彼が、逝く気になるか、責めるのに飽きるかを…。

終わりも、唐突にやってくる。
勢い良く彼が身体を起こし、
ペニスも、湿った音を立てて引き抜かれる。

  せっかく風呂入ったのに、
  お前のマン汁で汚れちまったよ。


呟きながら浴室に向かう彼の背中は、
ぼんやりと霞んで見える。
責めが終わった安堵で弛緩したわたしは、
動く事も出来ずに、そのまま再びうとうとする。
シャワーを済ませた彼に、「どけ」と蹴られるまで……。


彼とわたしのセックスは、大体いつもこんな調子だ。

デリヘルの仕事を始めるに当たり、フロントの男性が
簡単な手順を説明してくれた。
それをわたしは、復唱したりメモを取ったりしながら、聞く。

  そんなに緊張しなくていいよ。
  彼氏、居るんでしょ。
  いつも彼氏としている事を、すればいいから。

  え…彼と…ですか。

  そう。普通にセックスするだけ。
  勿論、本番は駄目だけど。

  ………。

まさかここで、普通のセックスは判りません、などと言う訳にはいかない。
彼以外の男性とのセックスなど、すっかり遠い過去に成り果てていて、思い出す事も出来ない。
ネットで動画でも観て、勉強するしかあるまい…。

そっと、嘆息する。

わたしのデリヘル生活は、前途多難な幕開けとなった。




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疎んじる

2010/01/23(土) 02:36:27
平穏な日々が、戻って来た。
…とは言っても、いつかは必ず、元夫の連帯保証人としての責任を果たさなくてはならない日が来るのだから、それはさながら、台風の目の中の晴れ間程度のものではあったけれども。

だが、Sからの連絡が、絶える事は無かった。
携帯メールが、届く。

  またメッセに上がらなくなったなwww
  元気してんのかよ?
  心配してるぞ


そのタイミングたるや、ある意味、絶妙だった。
ふと、今後の生活の事を考えて憂鬱になり、気持ちを切り替えて立ち上がるのに苦労している……そんな時に限って、Sからのメールが来るのだ。

まるで、衰弱している動物から立ち上る死の臭いを嗅ぎ付けて、死肉を食む為に舞い降り、息絶えるのを待っているハゲワシの様だ…。

そんな事を考えては、打ち消す。

Sのお陰で、わたしは外に出られる様になったのに、こんな風に考えてしまうわたしは、何て恩知らずで、冷酷な人間なんだろう。
Sが信用出来なくなったのだって、結局はわたしの、見る目が無かっただけの事ではないか。
それを、Sに責任転嫁して疎んじるなんて…わたしは、なんて卑怯なんだろう……。

沈み込んでいた気持ちに、自己嫌悪が拍車をかける。

Sは、恩人なんだ。
恩人だと、思わなければならない。
そういう気持ちが、わたしに返信を打たせる。

  元気だよ。

送信し終わって、溜め息をつく。


ある日、床に就いていた深夜に、携帯がメールを着信した。
わたしの携帯メールアドレスは、数人しか知らない。
着信音で、彼からのメールでないのは判ったから、妹に何かあったのだろうか?と、寝惚けながらもメールを確認する。
Sからだった。

  誕生日、おめでとう。
  たまには、こっちの仲間の事も思い出せよw


「はぁ?」と、声が出る。
いつだったか、メッセで話した事を、思い出す。


  友達は、大事だからな。
  俺は、日付が変わったらすぐに、
  誕生日メールを出す様にしてる。
  だから俺の友達は、
  俺からのおめでとうメッセージを、
  誕生日の一番始めに受け取れるって訳だw



ああ…そんな事言ってたっけ…。
一瞬感じた苛立ちで目が冴えてしまったので、妹からのメール着信音も、普通のメールとは違うメロディを割り当てた。
彼と妹以外のメールは、着信音を出さない様にも設定する。
おめでとうメールへの返信はしないまま、もう一度横になる。

…もう、関わらないで欲しい。
関わればきっと、わたしは益々、Sに嫌悪を感じてしまう。
そしてそれは、すぐに転じて自己嫌悪となり、わたしに更なる追い討ちをかける。
このまま、わたしから一切連絡しなくなれば、その内にきっとフェイドアウトしていくだろう…。
そう考えながら、目を閉じた。



それから再び平穏な日々に戻り、季節も移り変わった頃、わたしは、加入しているSNSに、簡単な日記をアップした。
このSNSは、元々は仕事の為に使っていたもので、フレンドは、昔の仕事仲間や実生活での友人ばかり、日記はフレンドにしか読めない設定にしてある。
たまに更新して、フレンドたちに近況を知らせるのに、利用していた。
日記を登録してPCの電源を落とし、寝る前に洗濯物を干さなくちゃ…と立ち上がった時、携帯電話の着信音が、鳴り響いた。

わたしは、飛び上がった。
深夜にかかって来る電話には、悪い知らせを連想させられてしまう。
慌てて電話を取り上げ、発信者を見ると、Sだった。
まずは、相手が妹や友人ではなかった事に、安心する。
深夜に急に、電話しなくてはならない様な出来事が、起こった訳ではないという事だ。
けれども…なんでこんな時間に、突然Sから電話がかかって来るのだろう…?

はっと気付く。
SNSだ…。
フレンドの中には、Sも居た。
わたしの日記が更新されたのを見て、すぐにかけて来たのだ…。

わたしが、大の電話嫌いだという話は、していなかっただろうか…?
それなのに、メールに返信しなければ、今度は電話をかけて来るという訳か…。
出たくない…。
暫く、携帯を握り締めたまま、着信音が途絶えるのを待つ。
けれども、着信音は、一向に鳴り止まない。
仕方なく、通話ボタンを押した。

  ……もしもし。

  なんだよお前ー。
  えらい不機嫌な声だなー。


  ……寝てた。

そんなに嫌そうな声になってしまったか…と、咄嗟に言い繕ってしまう。

  あーそうだったか、ごめんごめん。
  日記が上がったの、さっきだったから、
  まだ起きてると思って電話したんだ。


  …ふうん。

  何だよお前ー。
  全然音沙汰なくなるしよー。
  俺、すげー心配してたんだぞー?
  たまには連絡して来いよー。


  …ごめん。

  誕生日メール送ったのに、
  返事もねーしさー。
  どんだけ心配してたと思うんだよー。


  ……ごめん。

  …あー、まあ寝てたとこ、
  起こしちまって悪かったわ。
  じゃあ、また連絡するから。


  ……。

  もう寝な。ゆっくり休めよな。
  そんじゃな。おやすみ。


  ……おやすみ。

終話ボタンを押す。
溜め息をつく。

いくら日記がアップされたからと言って…こんな深夜に電話してくるなんて、非常識だとは思わないんだろうか?
それにどうして…突然電話されたにも関わらず…わたしの方が、謝らなくてはならないのだろう…?
心配だ心配だと連呼するけれども…わたしが本当に壊れかけていた時に、さっさと逃げた事は、忘れられない。
その結果が、彼、Tさんとの出逢いに結びついたとしても。
今後、ずっとこの調子で、メールでレスがないなら電話で…なんて方法に変わられても、困る。
どうやら、ひっそりとフェイドアウトはさせてくれない様だから、はっきりもう関わって欲しくないという事を、言うべきだろう。

考えて、そう決意したわたしは、PCの電源を、ONにした。





壊れる

2010/01/23(土) 04:32:59
メッセンジャーを立ち上げると、案の定、Sが居た。

  こんばんは。

  おー、さっきはどもw
  すっげー無愛想だから、
  電話番号間違えたかと思ったwww


  わたし、電話は嫌いだって
  言ってなかったっけ?


  そだっけ?

  うん、だから、電話はしないで欲しい。
  ほんと苦手なの。


  そかそかwww
  起こしちまってごめんな。
  寝るんじゃなかったのか?


  いや、洗濯物干さないといけなかったし、
  もうちょっとなら大丈夫。


そこでわたしは、洗濯物を干しに行く。
手を動かしながら、どういう風に話を切り出せば良いだろうか…と、考えた。
数分後、PCの前に戻る。

  そういやさ、AとBが別れたぞwww

  あれ?いなくなった?www

  ああ、洗濯物か。

会話を再開した時、Sが、わたしとの会話の内容を殆ど覚えていない事が判り、この人にとって、他人の相談に乗るという行為の意味は何なんだろう…と、考えてしまう。

  あの二人、別れたの?
  Aさんから?
  Bくんから?


  Aから言い出したらしいw

  そっか、それは良かった。
  じゃ、Aさんは元気なんだね?


  おー、元気元気w
  Bの事、色々と言ってたぞwww


わたしが心配したのは、Aさんが落ち込んでいないか…という事で、Bには、ゲーム中やメッセでの会話であまりいい印象を持っていなかったので、 Bの話はどうでも良かった。

  Bの奴、別れ話が終わった直後に、
  最後にもう一発ヤらせてって
  言ったらしいwwwww


ああ…そうだ。
わたしは、Sとの会話で、頻繁に他者の陰口が出てくるのにもウンザリしていたんだった…と、思い出す。

  ふうん。
  わたしは、Aさんが元気なんだったらそれでいい。
  しかしSさんも、相変わらずの事情通ね。
  Aさんの相談に乗ってあげてたの?


  そうw
  Bの方は、もう俺の顔も見たくないって
  怒り狂ってるらしいwww


  …なんで?

  俺が散々説教してやったからだろw

わたしは、眉を顰めた。

  …Aさんに話を聞いて、その内容で、Bに説教した訳?
  そりゃBも怒るでしょ。
  何でお前が出て来るんだってなモンだよ。


  だってお前、友達がひどい目に
  遭わされてんのに、黙ってらんねーよ。


糸口が、見付かった様な気がした。

  それって、Aさんに、言ってやってくれって
  頼まれたの?


  いや?
  俺の個人的判断。


  …Sさんさ…。
  なんで、Sさんには関係ない所で
  揉めている人の間に、わざわざ入っていくの…?
  わたしは、それがいつも不思議でならなかった。
  その結果、揉め事が大きくなった事も、
  一度や二度で、済まないじゃないの。


  そりゃお前、友達なら当然だろ?
  黙って見てらんねーよ。
  それに、俺に頼って来る連中も居るしさ。


  頼られるのは、口出しをするからでしょ。
  味方して貰えると思えば、そりゃ頼るでしょうよ。
  わたしが思うのはね。
  Sさんは、人の相談に乗ってやってる自分、
  揉め事の仲介に尽力する自分が、
  好きなだけなんじゃないかと。
  だから、わたしの相談してた事は、
  全然覚えてないんだよ。
  その立場に酔ってるだけだから、
  内容なんてどうでもいいんだよね。


  …ふむ。
  そういう面は、あるかも知れんね。


  そういうの、もうやめた方がいいと思う。
  自分の再確認の為に、他人の事を利用するのは、
  その人にとても失礼だと思うんだけど。


  …ふむ。
  やっぱりお前と話すと、考えさせられるよ。


…本当に、考えてるの?
そう言いそうになる。
「叱ってくれるのはお前だけ」「考えさせられる」。
そう言っていた件で、その後、言動を改めてくれた事は、ひとつも無いではないか。
わたしにはそれが、親友ゴッコを楽しんでいるようにしか、感じられない。
わたしの抱く不快感を、軽減しようとは、してくれないのだ…。

もう駄目だ。
この人には、わたしの言葉が通じない…。

そう思いながら、他愛も無い会話を続ける。
そんな中で、Sから投げられた言葉に、わたしは愕然とした。

  お前さー。
  彼氏と付き合う様になって、
  どんどん自分の事を他人の事みたいに
  話す様になってってるぞ。
  大丈夫かよ?
  何か、おかしいぞ。


他人事の様に…。
これは、わたしの感情の振幅が限界を越えて、これ以上感情を動かすまいとしている時の、独特の状態だ。
わたしは、Sとの会話で、そこまでする様になってしまっていたのか…。
Sのこの言葉でわたしは、自分がSに対して完全に心を閉ざした事に、気付かされた。

  おかしくない。大丈夫。
  心配しないで。
  わたしの事はもう、心配しないで。
  なんとか上手くやっていくから。


  そんな訳いくかよ。
  友達の様子が何かおかしいのに、
  黙って放っとくなんて、出来ねえよ。


そんな格好いい事言っても、わたしが死にたいなどと言い出したら、とっととケツまくって逃げるくせに…。
苦笑しながら、会話を続ける。

  その「友達」ってのも、何かね…。
  Sさんって、二言目には、友達だからって言うじゃない。
  今までの、わたしの周囲では、「友達だから」とか
  言う奴ほど、信用ならない奴は居なかったから、
  やたら友達友達言われると、どうも胡散臭いのよね。


  だってお前…。

それに答えたSの言葉は、とても衝撃的だった。

  お前は友達なんだって言い聞かせないと、
  俺は、お前を、抱いちまってた…。


絶句した後、わたしは、爆笑した。

駄目だ、この人。
何を言っても、行き着く所は自己陶酔だ。
もう、付き合っていられない。
自分を愛し、自分に酔う為に、わたしを利用されるなんて、冗談じゃない。

嫌いになりたくなかったのに。
軽蔑したくなかったのに。

Sを嫌悪し、そしてそんな自分を、憎悪する…。

そうしてわたしは、またしても己のコントロールを失い、崩壊し始めた……。







落ち着く

2010/01/23(土) 19:40:56
感情のコントロールが、出来なくなる。

引き篭もり生活から、脱却させてくれた人。
わたしの中の、被虐嗜好を引き出した人。
それがあったから、わたしはTさんに逢う事が、出来た。
それを、こんな風に、嫌悪し軽蔑するなんて、わたしはどこまで性格が悪いのだろう。

自己嫌悪に呪縛された結果が、実生活にも影響を及ぼす。
こんなわたしを、誰の目にも触れさせたくない。
職場の契約更新を、断る。
家を失う日程もはっきりとしてきたが、それももうどうでもいい。
わたしなんて、どうでもいい……。

その一方で、わたしの慰めになっていたのは、やはり、彼の存在だった。
どこまでも自分に正直な彼が、まだわたしを見限らないのは、彼にとってのわたしは、そんなに嫌な人間ではない、という事だ。
その一点のみが、わたしを支えていた。


このままわたしが沈黙していたら、その内にSからまた連絡があるだろう。
Sには、もう何を言っても無駄だという事は、よく判った。
何を言っても、自分の都合の良い様に解釈して「俺が一番お前の事を思っている」という立場を、押し付け続ける事だろう。
それだけは、願い下げだ……。

そう考えて、Sに感じていた不快感を文章化した。
すぐに、Sからの反応が、あった。

  ふむ。
  よほど腹に据えかねたと見える。
  もう関わりません。
  ごめんなさい。


このコメントが、私の崩壊を助長した
とことんまで、自分の非を認めるつもりは、無いらしい。
友達思いの自分に、勝手にわたしが怒り狂っているとでも、思っているらしい。
わたしの怒りの原因は、服用している薬の所為だとくらい、思っているらしい。

確かに、わたしの怒りの理由は、Sには理解出来ないだろう。

彼の玩具となったわたしに、

  お前、自尊心は何処にいったんだ?

と怒るS。
Sは、気付いていない。
元々低かったわたしの自尊心を、完膚無きまでに叩き潰したのは、S自身だという事に。

大体、精神を病んでいる人間を相手に、誰かの為に親身になっている自分を再確認しようなどとは、考えが甘過ぎる。
いざとなれば、すたこらさっさと逃げる癖に。
そして、逃げた結果起こった事を、さらに、善良な自分に酔う材料にしようなど、あまりにも浅まし過ぎる。

Sの、自殺した知り合いの事は、その時期になると必ず、Sの日記に登場する。
助けてあげられなかった自分、そしてその事を、いつまでも心の傷として抱えている自分を、アピールする。
これは一体、どういう神経の為せる業なのだろう?

わたしなら…親しい人間が自殺などしたら、口が裂けてもその事を周囲に口外する事は、出来ないと思う。
自分の所為で死なせてしまったと思うのなら、尚更だ。
だから、Sのやっている事が、全く理解出来ない。

そして、ここでわたしが、壊れた精神に導かれるまま、自殺などしてしまえば、Sの、傷付いている俺日記のネタを提供してしまうだけだろう。
それは、それだけは、避けなければならない。


そう考える事で、わたしは、徐々に落ち着きを取り戻していった。

そのままSからの連絡が途絶えれば、こうしてブログにSとの事を長々と暴露する事も、無かったと思う。






書く

2010/01/23(土) 20:47:38
仕事を失う時期に、頼れるかも…と思っていた親戚から、とんでもない交換条件を出され、わたしは呆然とした。

この時に彼から言われた言葉を、何度も何度も咀嚼しながら、わたしは、わたしの「やりたい事」を考えた。
今、わたしが、一番優先したい事を、考えた。
書く事で、思考をまとめる。
思い付いたままを、書き殴る。
そうしてまとまったのが、犬の事だった。

この先、何があっても、誰に責められても、この犬と生きていくのを諦める訳にはいかない。
そう決心して、犬に関するエントリーを一気に書き上げた後、コメントが入っているのに気付いた。


  離職票を受け取ったら、すぐに職安に行け!
  保険証の手続きも、忘れるな!
  不動産屋に行って、次の家をすぐに探せ!
  犬はもう諦めろ!
  「やりたい事をやれ」なんて精神論は、
  何の役にも立たないんだよ。
  騙されてるんじゃねえ!



匿名だったが、Sからのコメントとしか思えなかった。


Sから「もう関わらない」というコメントが入った話を彼にしたら、彼が言った。

  ま、そうは言ってもSの事だ。
  多分、このブログはずっとチェックするだろうよ。


  えー…そうかなぁ。
  ま、見られてても、何も言って来なければ、
  わたしはもうそれでいいよ。
  それだけで充分。


そう返事していたのだったが…。

見ていただけではなく、まだわたしのご主人様気取りなのか…。
それどころか、いまだに彼の事を何とか貶めようと、必死らしい……。

即座にそのコメントを削除する。
「精神論」だと…?
わたしは以前、Sにはっきり言った筈だ。
メッセンジャーで話を聞くだけで、実際に会えば乳を揉む様な事しかしないSよりも、自分の欲望を剥き出しにし、わたしを徹底的に蹂躙する彼の方が、わたしにとっては誠実なのだと。

メッセンジャーで他の子と談笑する片手間に、わたしの話に適当に相槌を打ち、わたしの中に巣食う真の闇が顔を見せれば、「それは俺のトラウマ」と言って逃げていくSよりも、面と向かってわたしの話を聞き、はっきりと言いたい事をズバズバ言い、その結果わたしが崩壊しても、壊れぶりとそこから立ち上がるまでを、実に愉しそうに見ている彼の方が、よほどわたしの為になっている。

怒りが、沸々と煮え滾る。

良いだろう。
そちらがそこまでして、彼を貶め、わたしに影響力を発揮したいと考えるのならば、最早わたしも容赦しない。
自分が、わたしに、何をしたのか、それに、直面させてやろうではないか。

そして……はっきりと言ってやろう。
お前には、「サディスト」を名乗る資格など無い、という事を。
ましてご主人様面など、思い違いも甚だしい。

「サディスト」とは、自己の価値観を周囲に押し付けて自由気儘に振舞って良い事の、免罪符では無い。


こうしてわたしは、長い長い罵詈雑言を、書き始めたのだった。








終わる

2010/01/27(水) 22:05:42
今にして思えば、Sは、おそらく、現在の自分の事を、好きではないのだろうと感じる。

Sの話す内容は、昔の話ばかりだった。
学生時代の自分が、どれだけモテたか。
どういう風に、後輩をからかって遊んだか。
大学卒業後、すぐに就職した某大企業で、どんな事があったか。

その反面、現在の自分の事については、水を向けても話そうとしなかった。
よくよく思い出してみれば、わたしは、Sの本名さえも知らないのだ。
訊いた時に、「本名は俺のトラウマ」と言われ、それ以上訊けなかったからだ。

現在の自分を好きではないから、悩み事を持っていそうな人間に近付き、その相談を受け、「皆に相談される自分」「頼りにされている自分」を好きになろうとしていたのでは、ないだろうか。
そこには、相手の悩み事を解決する力になりたい、という意識は無い。
だから、相談の内容を詳しく記憶せず、聞き流してしまえる。
こういうタイプには、相談された事すら黙して語らずにいて欲しいなど、求める方が無茶だろう。
頼られている自分をアピールするな、と言っているに等しいのだから。

現在の自分の状態に満足していないから、自分より酷い境遇の存在を探し、「可哀想」と思う事で、自分の存在価値を高めていたのではないだろうか。
だから、悲惨なグロ動画を観ても「可哀想」という感想しかなく、その動画が撮られた背景などには無頓着でいられる。
周囲に何となく避けられ始めたゲーム仲間にも「俺しか相手する人間が居ないなんて、可哀想」と言いながら積極的に近付いたかと思うと、それで仕入れたその人物の言動を、面白おかしい笑い話にして吹聴できる。

そういう言動を咎めると、「俺って、ドSだからw」と返って来ていた。
ドSだから、自分の言葉で人を傷付け、人を振り回すのは当然…という事の様だった。

けれども…これは、「サディストだから」で済む問題だろうか…?


わたしは、比較対象が、Tさんしかいない。
そのTさんに関して言えば、こういうSの言動との類似性は、全く見られない。
わたしは、Tさんが、他者を貶すのを聞いた事がない。
これは、わたしにしてみれば、本当に驚くべき事なのだ。
と言うのは、彼が、作曲をする人だからだ。

わたしの周囲には、音楽活動をしている人も、何人かいる。
そして彼らはほぼ全員、他のジャンルの音楽や、最近流行っている音楽を、酷評する。
一般人に聞く耳がないから、こんな音楽が流行るのだ、と言い、売れる事だけを目的にすれば、こんな曲自分にでも簡単に作れる、と豪語する。
わたしの好む音楽を知ると、こんなくだらない音楽が好きなのか、と嘲笑する。

彼は、こういう事を、一切言わない。
不思議に思って訊いた事があるが、その返答は、こうだった。

  色んな音楽や色んなものに影響されながら、
  今流行の音楽も出来ている。
  だから、こういう音楽はしょうもない、などとは、
  俺には言えない。
  不要な音楽など、無いからだ。


彼にとって大事なのは、彼自身が満足出来る曲が、創れるかどうかという事の様だ。
そういう曲をライブなどで演奏して、感動した人が一人でもいれば、それは益々満足だしとても嬉しい…と言う。
そして、彼の音楽で感動する人は、一人や二人ではない。
彼の残虐性を知っているわたしなど、この人のどこからこんなメロディが生まれるのだろう…と不思議に思う程、そしてそんなわたしですら、聴いていて何故か思わず涙ぐんでしまう程、美しい旋律を創りだすのだ。

彼が、一番拘りをもっている分野ですら、こんな調子なのである。
他の事象に対しては、もっと寛大になる。

ほんとうに、彼は、何かを悪しざまに非難したり、貶めたりする事をしない。
たったひとつの例外は、わたし自身に対してである。
わたしに対してだけは、体型の事やものの考え方を、厳しく評価してくる。

彼は、わたしと初めて逢ったその日に、本名も職業も、全て教えてくれた。
彼と話していると、わたしは実によく笑うが、それは、何かを嘲った笑いではない。
彼の提供する話題は、本当に楽しくて笑ってしまう様な事ばかりなのだ。

彼は、自分を、愛している。
彼は、自分に、自信を持っている。
そして彼は、孤独になる事を、恐れていない。

Sとの一番の違いは、ここだと思う。
Sは、孤独を恐れているかの様に、誰かとの接触を常に求めていた様に思う。
そうやって、自分がいないと駄目だという人間を、捜し求めていたのだろう。
完全に自分に依存する人間が現れ、それが重荷になっても、最後まで背負い続ける覚悟は持てぬままに。

だからわたしが、Sと距離をとり始め、それでも普通に生活していける様になった事を、歓迎できなかったのだと思う。
心配している心配していると連絡を寄越し、わたしが、まだ誰かを頼らねばならない境遇である事を、思い出させていたのだろうと思う。
何とかして彼を貶め、自分こそがわたしにとって必要な人間である事を、アピールし続けていたのだと思う。

そして、そんな人間にわたしが散々振り回されてしまったのも、当然だ。
当時のわたし自身が、自分だけでは己の存在価値を見出せず、何の努力もしないままの自分をまるごと受け入れて貰える事だけを望む、甘えているだけの、だらしない存在だったのだから。


Sが、わたしにした事を、Sの面前に、突き付けてやる。

そんな意図で書き始めた一連のエントリーは、あの頃のわたしの醜さを、くっきりと浮き彫りにした。

そしてもうひとつ、大事な事をわたしに思い出させてくれた。
Sとの関わりは、わたし自身が望んで持ったのではないという事だ。
どうしてもそうせざるを得ない状態になり、渋々連絡先を教えた…と、言う事だ。


わたしは、わたしの意志を、もっと尊重してもいい。
わたしの直観力、行動力、判断能力を、もっと信頼してもいい。
そして、ろくでもない人間が周囲に現れ、それに振り回され、悩まされる様になったら、まずは己を省みる事。
そうなってしまった原因は、必ず、自分の方にある。

それをわたしに気付かせてくれた事のみを、Sには感謝しつつ、Sについての話を終わりたいと思う。



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