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罵倒される

2010/01/20(水) 17:49:38
Sとの会話が減った理由には、その内容が結局、彼に対する罵倒になる…というのも、あった。

彼の性癖をどうこう言うのは、まだ我慢出来た。
彼が普通でないのは、彼自身も自覚している事実だったからだ。

一番我慢しかねたのは、金銭的な問題だった。


わたしがゲームに参加しなくなった以上、Sとの共通の話題は乏しくなる。
わたしの方から読書を話題にしてみても、会話にならない有様だったし、Sから芸能人の話題を振られても、わたしにはテレビを観る習慣がないので、話が全然解らない。
近況を語ると、わたしの方はどうしても彼の話になってしまう。
そんな中、ある時Sから言われた言葉は、わたしの度肝を抜いた。

  そんだけ頻繁に会ってると、
  彼氏もホテル代大変だなwww
  どんだけ金持ってんだ?


  え…割り勘だよ?

  はあ!?
  割り勘って、ホテル代?


  うん。

  何だそりゃ!?
  ホテル代を女に出させるなんて、
  どんだけ情けない男なんだよ!
  やめとけよ、そんな男!!


これにはわたしは、とても面食らった。


彼と初めて逢った時、わたしたちは、完全に時間を忘れて互いを貪り合った。
その結果、ホテルの料金は、言葉を失う様な金額になっていた。
彼は、何気ない様子で精算を済ませていたが、その後、彼から流れてくる空気の様なものに、わたしは、動揺や落胆の匂いを感じ取った。
だから、車に乗ってから、彼に半額を差し出した。

  これ…もし良ければ、受け取ってくれる?

  え。いいのか?

  …うん。

彼は、ほうっと息を吐き出して、言った。

  ありがとう。
  正直、凄く、助かる。


この時、わたしは、彼に対してとても好感を持った。
自らの性癖を含め、わたしに対して、何ら取り繕う事なく、妙な見栄をはる事なく、自分の何もかもを曝け出している事が、解ったからだった。
それからは、二人で逢う時の会計は、割り勘が当然となっていたのだ。


バカ正直に、こんな事言うんじゃなかった…と後悔しながら、わたしはSに反論する。

  だって…彼だって、そんなに
  経済的に裕福な訳じゃないのに、
  ホテル代は全部向こう持ちだなんて、
  無理させる事は出来ないよ。


  男ならな、そこは無理をしてこそ、
  真の男なんだよっ!
  その調子じゃお前、交通費も貰ってないだろ。


  えええ?
  そりゃ、わたしの車使ってるんだし、
  それにわたしが逢いたくて行ってるんだから、
  わたしが払って当然じゃないの。
  交通費って、何それ。
  何でそんなもの貰わないといけないの?


  はああ!?
  やめとけやめとけそんな男。
  そんな状態に甘んじてるなんて、男じゃねえ。
  俺がお前と一緒の時、金使わせた事があるか?
  交通費も出してやってるだろうが!!


わたしは、絶句した。
Sは、それをわたしが不愉快に思っているだなんて、夢にも思っていないのだ。
もともとわたしが、相手の性別に関係なく、割り勘の方が気楽なタイプである事を、理解しようともしていないのだ。

  …そんなの…わたしちっとも嬉しくない。
  わたしは、割り勘が好きなんだよ。
  奢られると、気が重いの。
  気楽に誘えなくなるから。


それに…
言い続けそうになった言葉を、わたしは飲み込む。

金銭的な負担を被る事だけで、俺は真の男だなどと嘯けるなんて、とても軽薄だ。
もっとも、そんな事でしか優越感を味わえないのなら、しょうがないけれど。
でも、それを、そうではない人間にまで押し付けて、他人を批判する材料にするな。

と。

この時の会話は、どういう風に終わったのか、記憶にない。
けれどもこの時から、Sとの会話が苦痛になり始めた事は、間違いないと思う。





嫌悪する

2010/01/20(水) 21:31:52
元夫との離婚が成立間近のわたしは、平日なら、とにかくひたすら規則正しく生活し、ダイエットと自炊を心がけ、健康的に暮らす事に、邁進していた。
休日には、彼と逢う。
逢えない時は、静かに読書をしたり、ネットで、ダイエットや料理に関する情報を収集したり、連帯保証人になった場合の身の処し方の情報を収集したりして、過ごした。

Sからは、たまに携帯にメールが入る。

  最近、メッセに出て来ないから、
  心配している。
  元気なのか?


  元気だよー。

ひと言だけ返答し、携帯を放り出す。


ある日、たまたま気が向いたので、メッセにサインインしてみた。
すぐにSからメッセージが飛んで来た。

  何だよお前、どうしてるんだよ!
  心配するだろうが!
  たまには出て来いよ!


  あー、ごめんごめん。
  あれこれ忙しくしててさ。


  彼氏には会ってるんだろ?

  ま、予定が合えばね。

  お前なぁ…。
  そんな事っちゃ友達なくすぞ。


わたしは、呆気に取られた。

  え…何それ…?

  彼氏が出来た途端に、そっちばっかで
  友達の事を放ったらかしだろうが。
  そんなんじゃ、友達に愛想尽かされるぞ。


  や…別に、彼との事ばっかじゃなくて、
  今の状況を克服する為の情報収集とか、
  いろいろと忙しいんだよ。


  でも、空いた時間は彼氏に使ってるんだろうが。

Sが、何を言いたいのか、解らなかった。
日々を忙しく過ごしていて、誰かに話を聞いて欲しい様な精神状態にはならずに暮らしていけているわたしに、何を求めているのだろう…?

  あのパーティの仲間は、
  お前の友達だろうが。
  かけがえのない友達だろうが。
  そういう仲間を、大事にしないでどうする。
  男が出来たら、もう付き合わないみたいな、
  そんな軽い存在じゃないだろう?


わたしは、首を傾げた。
何を、言っているのだろう…?

わたしは、彼らゲーム仲間の事を、そこまでかけがえのない友達だとは、認識していなかった。
ゲームで知り合ったから、ではない。
時間が空いたら、交流するゲーム仲間は他にも居たが、それは、メッセンジャーやスカイプは好きではないというわたしを尊重してくれて、たまにチャットやメールでやり取りをすれば、喜んでくれるしわたしも楽しめる…そういう子ばかりだった。

  時間が出来たら、メッセに上がって、
  皆で楽しい時間を過ごして元気になれる。
  そういう友達が居る事に、感謝しろよ。
  彼氏ばっかじゃなくてさ。



ふと、中学高校時代の事を、思い出した。
休み時間、用足しに行くのに、誘い合い、連れ立って教室を出る。
そういう友達は、わたしには居なかった。
声を掛けられても、自分は用がなければ、行かないと返事をする。
トイレに行くにも必ず一緒じゃなければ友達じゃない、などと言う子は、わたしの友達には居なかったし、そういうタイプの子はわたしに近付いて来なかった。

Sの言う事は、用がなくても友達なら一緒にトイレに行ってくれるべき、と言っているのと、変わらない気がした。

わたしの生活リズムが変化した事を理解せず、毎晩メッセで一緒に騒いでくれないならお友達じゃない…なんて言う奴が居るなら、そんなのこっちからお断りだよ…と、思った。

そう言えば、学生時代、「友達じゃないの」と口に出しながら寄って来る子達に限って、影ではわたしの悪口を言ったり、わたしを困らせる様な事ばかりしていたっけ。
あれ以来、わざわざ「友達」と言って来る人間を、わたしは信用しなくなっていたのだった…。


  とにかく、今夜はパーティの連中も居るから、
  ちゃんと挨拶してきな。


  …ん、判った。


この時からわたしは、Sに対する嫌悪を、感じ始めたのではないかと思う。