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わたしは、何?

2008/01/10(木) 02:10:11
何故、blogタイトルが「M女(?)」となっているのか。

それは、わたし自身にも、自分がどういう性癖を持っているのか、まだ理解出来ていないからだ。

ただ、Sっ気のある男友達に、メッセで際どい言葉を投げかけられ、自分の中には、男性にそういう言葉を浴びせられたいという願望があった事に、気付いただけ。
そして、セックスレスとなっても夫以外必要ない、と無理やり思い込んでいたという事実を、認めなくてはならなくなっただけ。


仕事の都合で別居し、双方が仕事に夢中で、相手の事を放置し続けた結果のセックスレスだった。
会おうとしても予定が合わず、気持ちはともかく、身体はどんどんすれ違っていった。
自分の中の性欲を持て余す事もあったけれど、わたしはそれから目を背け、その部分では貞淑な妻であると思い込もうとしていた。


けれどもそれは、わたしという人間を歪ませていただけだった。
「男性に、徹底的に支配されたい」という欲求から目を背けることは、わたしにとって、自分が女であることを否定することと同義に近かったのだ。
Sさんによって女の部分を目覚めさせられ、同時に被支配欲の強さを自覚したわたしは、性的に支配してくれる男性を欲する様になった…。



これはもしかしたら、わたしがマゾヒストなのではなく、単に男に飢えていた淫乱女なだけだったのかも知れない。


二人の支配者

2008/02/03(日) 19:08:11
わたしの心と身体は、別々のものに支配されている。


身体は、彼に。
わたしを縛り、鞭打ち、責めを与える。
これがわたしの中の悦楽に火を付ける。
彼は、女性に対してこうしたかったという願望を、わたしの身体に施し、わたしはそれを悦び、濡れて、彼を受け入れる。

  お前は最高のエロ女だ

彼は言う。
身体の相性は、今までの男性経験から考えても最高であると言える。


けれども、私の心を支配しているのは、Sさんだ。
わたしの中の被虐趣味を引き出した人。
わたしはSさんに抱かれたいと思ったけれど、Sさんは、そんなわたしの気持ちを知りながらも、わたしを抱くことを拒んだ。
Sさんにとって、今わたしを抱いてしまうことは、自分の中で定めた何かに敗北することを意味するらしい。
それが何なのかは、わたしには解らない。

  お前を俺の道具にする気は無い

Sさんは言う。
わたしは、道具にされても構わないし、寧ろ道具にされたいと思っているのに…。

  けれど、お前の事は抱きたいと思ってる
  いつかきっと抱くだろうと思う


Sさんは、元々は何でも話せる男友達で、夫との離婚のゴタゴタの相談に乗ってくれたり、それで不安定になるわたしの精神状態を支えてくれたりした人で、今、わたしに彼がいる事も知っている。
それでも、こう言ってくれるのが、わたしにはとても嬉しい。
Sさんに、心だけでなく身体も支配される日が来るのを、わたしは待ち望んでいる。


時々、わたしは考える。
わたしは、ご主人様を探して彷徨している野良犬なのではなく、ちょっと被虐趣味の入った、ただの淫乱女なのではないか…と。

でも、今は、それでいい。
わたしの生活は、とても心休まる状況であるとは言えない。
そんな中でも、しっかりと顔を上げて生きていこうと思えるのは、彼とSさん、両方が存在しているお陰なのは、間違いないのだから…。


関係

2008/02/12(火) 23:31:14
彼とわたしの関係は、不思議だ。

主従関係ではない。
主導権は彼にあるけれども、わたしが彼に敬語を使うのは、メールの中か彼に命じられた時だけだ。

彼がわたしを導いている、とも思わない。
彼は、彼のこれまで秘めてきた欲求を、わたしを使って発散しているだけで、それによって加えられる虐待を、わたしが悦んでいるだけのこと。
その虐待にしても、身体や精神を壊されるほどのものは、受けていない。

彼に今まで、奴隷を調教した経験がない、というのも、大きいだろう。
そして勿論、私も調教を受けたことがない。
二人にとっては何もかもが手探りという状態だ。
変わらないのは、加虐者が彼、被虐者がわたしという構図だけ。

彼はわたしを『奴隷』とは呼ばない。
『玩具』と呼ぶ。
わたしも彼を『ご主人様』とは呼ばない。
そう呼べと言われた呼び名を呼ぶ。


この関係が、これから変わっていくのか。
変わるとすれば、どういう風に変わるのか。

それが何となく楽しみだ。



逝ってほしい

2008/02/17(日) 03:02:33
彼は、わたしを、逝かせて逝かせて狂わせたい人。
だから彼は、まだ一度も、わたしの目の前で逝っていない。
自分が逝くことをそっちのけにして、ひたすらわたしを責め立てる事に専念し、やがてわたしの体力が尽きてしまう…

わたしが力尽きてもお構いなしに、自分が逝くまで責め続ける…
そうしてくれて構わないのに、むしろそうして欲しいのに、まだ、そういう人ではない。

彼の汗、彼の唾液、彼の精液…
そのすべてを得るまでは、彼の玩具になり切れていない。
そう感じてしまう。
淋しくなる。

次は…次こそは…
彼に、わたしの中で逝ってほしい。
どんな事をしてもいいから。

それが今のわたしの、一番の願い。


飲み込む

2008/02/17(日) 04:34:29
あなたの為に生きているんじゃない。
Sさんの為に、生き続けようとしているんだ。


彼ではない別の人に言い放ちたくて
けれど言う訳にはいかなくて
必死で飲み込んだ言葉。


解放

2008/02/19(火) 23:31:57
ある人に言われた。
わたしは、客観的過ぎるらしい。

自分を含む周囲の状況を、あまりにも客観的に分析し過ぎている。
説明する時も、他人事の様に話す。
そこに自分の感情を介在させず、何かを感じていても、表現する事なく抑圧してしまう。

どうして?と問われる。
無意味だから、としか答えられない。
感情を爆発させて事態が好転するのなら、いくらでも怒り狂うし、泣き喚く。
けれど、覆水盆に返らず。
事態が悪化する事はあっても、好転する事は、決して無いのだ。


しかし、そうやって抑圧された感情は、決してわたしの中から消える事は無い。
噴出孔を求めて体内で燃え燻り、わたしの身体を、精神を、破壊し蝕んでいるのだ。
胃が痛む。
食欲が失せる。
眠れなくなる…。

そんな現状の中、彼と過ごす時間は唯一、わたしが感情のままに振る舞う事を許された時間。
それも、今まで我知らず抑圧してきた性癖までもありのままに解放し、悲鳴を上げ、喘ぎ、悶え、狂乱してしまっても良い時間。
彼は、そんな獣の様な私を蔑まない。
それどころか、わたしが狂えば狂う程、悦んでくれさえするのだ。

彼との、嵐の様な行為の後。
それまで体内でうねっていた感情の泥流が、何処かへ流れ去っている事に気付く。
とても静かで暖かな、満たされた気持ちになっている。

  満足すると、いい顔で笑うんだな。

そう言う彼も、とても優しく微笑んでいる。


わたしの中で、彼の存在は、どんどん大きく、かけがえのないものになっていっている…。



嫉妬

2008/02/27(水) 13:07:30
某SNSで、Sさんの日記を見た。
そこには、わたし以外の女性と会った等という話題が書かれている。
それを読んでわたしの心は、ギリギリと音を立てて軋む…。


  誰とも会いたくねえ。
  今はまだ面倒くせえ。



そう言っていた。
その言葉通り、わたしとは中々会おうとしてくれないのに、他の人とは会っているのか…。

そう思うと、悲しい。
Sさんの事だから、他の女性とは本当にただ会って、食事やカラオケを楽しんでいるだけなのだろう。
それが判っているのに、悲しさや淋しさが先に立つ。

彼との逢瀬を重ねて、心もかなり彼に傾いていると感じていた矢先だった。
このままSさんへの執着を忘れられれば…と、思っていたのに、そう簡単には事が運ばないらしい。


  どうしてわたしとは会ってくれないの?
  他の人とは会ってるのに。



言ってしまいたい。
でも、言えない…。
わたしはSさんにとって、ただの友達な筈だから。
少し変わり者の女友達。
そういう位置づけだと思うから…。
嫉妬に駆られた言葉など、Sさんにぶつけられる筈もない。



わたしの心と身体は、引き裂かれたまま……



渇望

2008/02/28(木) 14:26:15
壊されたい

完膚なきまでに壊されたい




狂いたい

何も感じないほど狂いたい




こんな事ばかり考えているわたしは

もうとっくに狂っているのかも知れない



彼。

2008/03/14(金) 21:04:39
後ろから激しく責め立てられ…何度も達して、動けなくなったわたし。
それを、ベッドに横たえて休ませ、水を飲ませた後、仰向けになり、天井を見つめながら、彼が口を開いた。

  俺のことを優しいと思ってるんなら…。
  それは、俺をちゃんと見ていないって事だ。
  俺の優しさは…俺のこの欲望を、誰にも悟られまいと
  隠してきた結果、俺が纏っている鎧の様なものだ。
  お前は、その鎧しか見ていないんだ。


何も、言うことが出来なかった。

  こっちは初心者だぞ。
  何十年も封印していた欲望を一気に解放して…
  途中で制御する事が出来なくなったら、
  …どうするんだ…?


この時の彼の瞳は、黒い大河の濁流を覗き込んでいる様だった。
彼のこんな暗い眼を初めて見た、と思った。

イマラチオの時、彼の手の方に力を感じた理由を、理解した。
あの時感じた力は、抽送を補助するものではなかった。
わたしの自由を、封じ込める為のものでもなかった。
あれは、欲望が暴発しそうになるのを、必死で抑制していたが故の力。
彼の、強靭な意志力の顕在…。

自分がサディストであると自覚した時から…彼は、自分自身の欲望と、壮絶な闘いを続けてきたのだろう。
独りきりで。
その上で、あれだけの鎧を構築出来るとは…彼の、並ならぬ精神力を思い知らされる…。

わたしも、彼とは分野が違うけれども、誰にも理解してもらえない苦悩を抱えている。
人と違うということがどれだけ孤独かは、身に沁みてよく知っているつもりだ。
けれどもわたしは、とても脆い。
そう思っている人は少ないけれど…強い女だと言われてばかりだけれど…その実、蝶や蛾の腹部の様に脆くて、ちょっとした打撃で、すぐにぐちゃりと潰れてしまう。

この時、わたしの胸中に込み上げてきた想いを、どう表現すれば良いのだろうか。
彼への共感、愛しさ、敬意…。
どれをとっても、当て嵌まらない様な気がする。
未だに言語化出来ぬものを、その時のわたしが伝達できる訳もない。
けれども何とか伝えたい…。
そういう時、わたしは、身体で表現しようとするのだ。
獣のように。

身体を起こして彼に覆い被さり、その唇を貪った。
彼が、応える。
やがて彼の方がわたしの上へと位置を変え、中に入ってくる。
先ほどとは打って変わって、わたしの感触を、隅々まで味わおうとするかの様な、穏やかだけれども力強い抽送…。
思わず、口を突いて言葉が出た。

  T…Tさん…。

  ん…?

  Tさんを、好きに、なってもいい…?

わたしが好きになる人は…夫も、Sさんも、そのうちわたしを持て余す事になる様だから…。
それが彼にも、判った筈だから…。

  俺は、彼女とか、そういう女には欲情しない。
  こうしてお前を突かなくなる。
  それでも、いいのか?


  違う…。
  彼女なんかじゃなくていい…。
  玩具のままでいいの…。
  ただ、わたしがあなたを、好きでいていいか…。
  好きでいさせて欲しいの…。


彼は、それには答えず、優しく微笑しただけだった。

いかに本性を隠す為とは言え、中身とあまりにも乖離している鎧なら、気味の悪い歪さがどこかに必ず見える筈。
けれども彼は、そうではない。
こちらまで優しい気持ちになれる優しさ。
一緒に居て愉快な気持ちになれる明るさ。
これらを、暗い黒い衝動や残酷さと共に、表裏一体で併せ持つ。

それが、彼。
わたしの全てを、支配しつつある人。



彼の言葉

2008/03/15(土) 04:42:27
彼が、空腹だと言うので、ソファに移動した。

  お前、来るのが早すぎ。
  俺、朝飯食う時間なかったぞ。


笑う彼に、途中で調達した食料やおやつを披露する。
食べ始めた彼の足元で、わたしは部屋中に散乱した洗濯ばさみを集めてきて、整理していた。

  どうした?
  上に座らないのか?


  ん…ここがいい。

ひと息ついた後、再び彼が口を開いた。

  俺は、お前の離婚の理由も事情も何も知らない。
  けれど…離婚ってのは、夫婦両方に原因があると思ってる。


わたしは、彼を見上げた。

  それから、俺がおまえを見ていて思うのは、
  おまえはおそらく無意識なんだろうが、
  男の領域に平気で踏み込んだり、
  踏み躙ったりすることがあるんじゃないかと思う。


夫に言われて…その時には理解できなかった事。
それらの言葉が、そういう視点から見たならば理解できる、と思った。

  俺の言う事、事情も知らない癖に、と思うか?

わたしは、首を横に振る。

  思い当たる事が、ある…。

  そうか。

初めて聞く、彼の声色だった。
春の雨の様に、穏やかで、暖かくて、わたしの耳と心に、ゆっくりと沁み込んでくる。

  お前の心象風景を想像すると、
  広い草原の中で、お前は、大きな樹の
  切り株を見て呆然と立ち尽くしている。
  そんな絵が浮かぶ。
  大きな樹は、旦那さんだ。
  今までは、この大木の陰で雨露を凌いで、
  快適に暮らしていたのに、
  突然切り倒されてしまった。
  それでお前は、途方に暮れている。


彼の職業は、クリエイターだ。
その想像力から紡ぎ出される言葉は、わたしの脳裏にも微細な情景を浮かび上がらせる。
いつの間にか、涙が頬を伝っていた。

  お前はとにかく樹の下に逃げ込もうとしている。
  最初は、Sだ。
  Sが駄目なら、俺。
  依存する先を探してるんだ。
  俺を好きになりたいというのは、
  俺に依存したいって事だろう?


彼の大きな手が、わたしの頭を撫でている。

  人は、出逢った以上、必ず別れなければならない。
  どんな形であれ、別れは必ず来る。
  その覚悟はしておかないといけない。
  俺は、お前を失う事も覚悟している。


  もう…?
  逢ったばかりなのに…?


  逢った瞬間から、いつも覚悟してるんだ。

彼を失う事をひたすら恐れているわたしには、到底出来そうもない…。
涙がぽろぽろと零れ落ちる。

  失う度に、次に逃げ込む先を探す様では駄目だ。
  自分自身が大木にならないと。
  その為には、何か、軸になるものを持て。


  …軸…?

  そう、軸。
  軸があってしっかりしていれば、
  多少の事があってもぶれたりしなくなる。


  Tさんの軸は、なに?

  俺か…俺は、バイクかな…。

大好きで、打ち込めるものという意味なのだと理解する。
わたしが打ち込めるものは、何だろう…。
いろんな趣味はあるけれど、その殆どが夫に教えられたものだ。必然的に、夫と危機を迎えている今、足が遠のいてしまっている。

彼を見上げたまま、思考を巡らせる。

以前、打ち込んでいたものは、仕事だった。
けれども今はその仕事も失い、しがない事務員として糊口を凌いでいる有様。
夫に関係なく打ち込んでいることといえば、読む事と、書く事…。

  それから…欲望を、実現させる事かな。

彼の欲望は、性的なもののみならず、多岐に渡る。
そしてそれを実現させる為にどういう努力をしているか、わたしはその一部を垣間見ている…。

  お前の軸になるものを探せ。
  なにものにも依存しない女になれ。
  自立した、かっこいい女になるんだ。


彼が望むなら、そういう女になりたい…。
そう考えてから、打ち消す。
この思考そのものが、既に彼に依存しているではないか。
わたしは、わたしの意志で、そうならなければならない。
彼が求めているのは、そこなのだ。

彼が、ニヤリと笑った。

  そういう女を、俺の下で
  ヒィヒィ言わせるのが愉しいんだから。


わたしは、涙を流しながらも、声を立てて笑った。



堕落して…

2008/03/20(木) 01:29:08
お仕置き、イマラチオ、アナル調教…。
8回目の逢瀬は、初めて経験する事ばかりだった。

アナル調教も終わり、ベッドの上で寛いでいる時、わたしは訊ねた。

  ブログ…どうすればいい?

  続ければいい。
  Sへの報告の件を別にすれば、中々面白いぞ。


  …このままのスタンスで?

  うん。

考え込む。

わたしがこのブログを開設した目的は、わたしにとって書く事というのは、己の思考を整理し、分析する際に、重要な役割を果たすからだ。
どう表現すれば良いか判らない感情を言語化する事で、気持ちが落ち着いたり、自分の本心に気付いたりする。
自分を見つめる為に、わたしが必要としている作業。
それを、閉鎖された場の日記帳などではなく、ウェブ上で公開して行うのは、読んで下さった方から、わたしの思考を更に整理するヒントを頂いたり、違う視点で考える事を示唆して頂いたり、共感して頂く事で安心したりしたいからである。

つまり、ここには本当のことしか記せない。
でないと、わたしがこのブログを書く意味が、なくなってしまう。

  このままで続けるという事は…
  Sさんの事にも触れる可能性がある、という
  意味なんだけど、それでもいいの…?


  ああ、構わん。
  俺は、お前とSの関係には興味がない。


  ……そう。
  わかった。
  じゃ、続けさせて貰うね。


  うん、頑張れ。
  俺も読者になるから。



こうして、このブログは存続が決定したのだった。
わたしの、とりとめのない思考を垂れ流す為の場として。


  Sと言えば…。

  ん…? なぁに?

  俺がやりたい事が、増えたなぁ…。

  …なに?

にこにこと笑う彼の笑顔は、素晴らしい悪戯を思い付いた子どもの様だった。

  俺とSと、二人でお前を使いたい。

わたしは、絶句した。

  俺がお前に後ろからぶち込んで、
  Sがお前の口にぶち込むんだ。
  どうだ?
  面白そうだろう?


彼の表情を見れば、本気で面白がっているのが判る。
彼と知り合った後も、Sさんに抱かれたいと思ってしまうような淫乱なわたしも…どんな快楽を味わうことになるのだろう…と、思わず想像してしまう。
けれどもおそらく、Sさんは決して加担するまい。
わたしを道具にする事を頑なに拒み、彼がわたしの尊厳を踏み躙ると考えているSさんは…絶対に。

あの時わたしは、どんな返事をしただろう。
何も言わずに、笑って誤魔化したような気がする。

実現する筈はないと思いながらも…万が一実現すれば、わたしはきっと、もっと壊れるに違いない…そう期待している自分を認識した時、わたしは、完全に、今までのわたしではなくなっている事に気付いた。

どこまで壊れる気か…。
どこまで堕ちるつもりか…。

けれどもわたしは、こんなわたしを、それほど嫌いではない…。

それが、とても不思議である。



心に芽生えたもの

2008/03/23(日) 13:16:41
初めてお仕置きをされた日。
わたしの中で、何かが大きく変化した。

彼の隣に、座れなくなった。

それまでは、彼がソファに移動して寛ぎ始めると、わたしも隣に座っていたのだが、この日はどうしても、彼の隣には座れなかった。
彼の足元、床の上に座っていたのだ。
彼の事を、見上げていたかった。
肩を並べて寛ぐなど、自分には相応しくないという気がした。

  どうした?
  座らないのか?


最初、彼は、不思議そうだった。

次にソファに移動した時も、床に座ったわたしに言った。

  なんだ?
  そこが落ち着くのか?


  うん。

頷いたわたしを見下ろす彼の瞳に、なんとも言えない光が一瞬走った。
あれはきっと、端的に表現するなら、満足感…。
自分の行為がもたらした、思いもよらぬ効果を目の当たりにし、悦に入ってほくそ笑む…とでも言う様な…そういう光だった。
その瞳の色を見た時、わたしの心の中で、何かが蠢いた。
けれども…それが何なのか判らなかったし、今でも明白な形を為さずにいて、言語化できぬままでいる…。

彼の太股に寄り掛かって腕を回し、頬を押し当てる。
彼の手が、わたしの髪の中に滑り込む。
髪を梳く様に頭を撫でられ、わたしは、大きな安心感に包まれる。
ついさっきまで、その手に自由を拘束され、髪を引っ張られ、打たれていたというのに。
今、彼に突然スイッチが入れば、その手に何をされるか判らないというのに。
それを不安に感じない自分が、とても不思議だった。


かつてわたしは、どういう切っ掛けでどんな暴力をふるうか判らぬ人々の傍で、身を縮めて生活していた。
その恐怖は、わたしの心と身体に、深く深く刻み込まれている。

成人して結婚もした後、母親と会っていた時のこと、彼女がわたしの横で、突然身体を動かした事がある。
その瞬間、わたしの身体が母親から逃げ、わたしは頭を抱えて縮こまった。
母親は呆気にとられた顔をした後、笑った。

『何よ、それ。
 しょっちゅう叩かれてた子みたいに。』

わたしも、自分の無意識の反応に、驚いていた。
しょっちゅう叩いていたではないか。
でなければ、こんなパブロフの犬の様な、反射的行動が出るものか。
そう言いたかったが、その場では言ってもしょうがなかったので、言葉を飲み込んで、掌に吹き出した汗を握り締めた。


それほど暴力に怯えていたわたしが、今は彼の足元で、すっかり安心しきって寛いでいる…。
この差は一体、何なのだろう…。


ぼんやりと眺めていたTVの画面が、消えた。
思考に没頭していたわたしも、我に返る。

  さて…舐めて貰おうか。

頭上から降ってくる、彼の静かな声。

ひとつだけ、はっきりしていることがある。
それは、今後、こうして彼と二人きりの場では、決してわたしは彼と肩を並べて座ろうとは考えないだろう、という事。
わたしの心に芽生えた、自分の立場を弁える気持ち…。

わたしは彼を見上げ、微笑しながら頷いて、彼の命令に従った。



不必要

2008/03/24(月) 17:17:21
尊厳というものは、この世で何か成し遂げたい人だけが、持っていればいい。
人生の目標を持っている人には、必要だろう。

成し遂げたい事がある訳でなく、
目標を持っている訳でもなく、
生産性のある事など何ひとつ出来ず、
ただただ消費するしか出来ない肉塊には、
尊厳など、必要ない。



存在理由

2008/03/25(火) 22:12:41
今、わたしが存在している理由は、
彼がわたしを気に入っているから。

こんなものの考え方で、
自立した女になれ、と言われても…
至難の技の様な気がしてしまう。

彼が、わたしに飽きた時、
わたしの存在する意味は
無くなってしまうのだから。



逢えなくて

2008/04/08(火) 23:51:07
わたしは大丈夫だと、自分に言い聞かせる。

彼に逢えなくとも、朗らかに笑いながら
仕事をこなすくらいの事は、出来るはず。



眺めているもの

2008/04/09(水) 03:47:51
自分の家が、嫌いだ。

家中のあちこちに、絶望の痕跡が刻まれている。
消してしまえばいいのに、わたしにはそれが出来ない。
脳の機能に欠陥があるから。
努力しても、努力しても、消すことが出来ない。
見ていたくはないのに。

だからわたしは、毎日絶望を眺めながら、暮らしている。




欠落

2008/04/18(金) 20:47:40
彼が、言う。

  お前には想像力が無い。


何故か、涙が止まらない。





無題

2008/04/18(金) 23:59:48
日常が、色を失う。

彼にのめり込めばのめり込む程、
日常生活の中に冷静なわたしが出現して、
明るく振る舞っているわたしや
家でただぼんやりと転がっているだけのわたしを
観察したがっている。
一体どんな顔をして、いけしゃあしゃあと
生きているのか、観たがっている。

彼の前以外では、
わたしはわたしに与えられた役割を
演じているだけ、という思いが強くなる。
だから、独りになると
能動的に動く必要を感じなくなる。

歯軋りをしてしまって、
自分が無意識に奥歯を食いしばっていることに
気付いたりする。
笑顔で仕事をしていた筈なのに。
何かの感情を、自分が遮断しているということだろう。

そうやって感情を動かさないようにしているから、
想像力が欠落してしまうのかも知れない。


彼は、彼一色に染まるわたしを望んでいない。
なのに、日常生活からは
色彩がどんどん失われていく。





無題

2008/04/19(土) 13:00:12
  お前、本当にいい顔で笑う様になったな。


  初めて逢った時のお前は、
  すごくヤバそうだった。


わたしのブログを読む前から、彼が言っていた言葉。
わたしの精神状態が非常に不安定なことを、見透かされていた。
普通なら、そんな危なそうな女と寝ようだなんて、考えないのではないだろうか。


  逢った瞬間から、別れが来ることを覚悟している。
  お前とだけじゃない。
  誰とでもだ。


この世に、永遠なんてものはない。
神の前で永遠に添い遂げることを誓ったわたしたち夫婦が、それを実証している。


  俺は、お前が死んでも、
  おそらく平気で生きていく。
  時々、『あいついい声で啼いたよなぁ』とか
  『あいつの乳、良かったなぁ』とか思い出しながら、
  それでも俺は、生きていける。
  お前は、どうだ…?


わたしは、目を閉じる。
今の目を見られたくない。
わたしは、無理。
彼を失ったら…もう生きてはいけない。
けれども、そんなわたしを彼は望んでいないから…だからわたしは、目を閉じる。


  俺がバイクで突然死んだりしたら…
  お前がどうなってしまうか。
  俺は、それが心配だよ。


彼には、お見通し…。
わたしの本心など、お見通し…。


わたしが居なくても、生きていける。
だから彼は、見るからに危なそうなわたしを抱いたのだろう。
わたしごときの存在如何で、折れるような男じゃないから。
そういう自分に、自信があるから。


  プレイの最中に、お前を殺してしまっても。
  …多分『ああ、死んだか』と思うだけだろう。
  通報して、事情を正直に説明するだろう。


そんな目にあなたを遭わせたくは、ない。
今まであなたが築いてきたものを、わたしが根底からぶち壊すなんて、そんな事したくはない。


けれども…


何があっても、あなた自身は壊れないというのであれば…




わからない

2008/04/24(木) 01:23:50
わたしの心の中から消えたもの。

彼に対する認識…『年下の可愛いセフレ』という認識は、いまやすっかり消えてしまった。
年齢など関係なく、彼は、わたしの所有者で支配者だ。

彼はわたしを導かない、と、以前「関係」で書いたけれども、今は、自分が導かれていると感じる。
未知の快楽を得られる処へ。
慈しまれながら虐げられる幸福感を得られる処へ。
そして何より、まだ自分が存在していて良いのだと思える処へ…。

その心象風景を想像する時、わたしは何故か、幼い少女になっている。
少女のわたしは、彼の服の裾をそっと掴み、彼を一生懸命に見上げている。
彼が何処に向かおうとも、その手を決して離すまいとしている。

けれども…その姿は、彼の望んでいる姿ではない。

  自分に軸を持って、自転しろ。
  地球と月のような関係になるんだ。


離れ過ぎず、近付き過ぎず、引力と緊張感を持ち、どちらにとっても相手が必要かつ重要な、そんな関係を彼は欲している。
ならばわたしは、少女の姿のままではいけない…。
それは理解出来るのだけれど、どうすればそうなれるのか…それがわたしには判らない。
彼の支配が、日に日にその影響力を増していく中で、どうすれば彼以外をわたしの軸に出来るのか…。

それが、わたしには、判らない…。




惜しみなく

2008/05/07(水) 11:41:21
彼が、惜しみなくわたしに与えてくれるもの。


精液。
責めと、赦し。

わたしと共に過ごす為の、時間。




葛藤

2008/05/22(木) 09:41:12
『彼へののめり込み方が、
 傍から見ていて気持ち悪い』

ある人に、言われた。

  全然自立してないじゃないか。

Sさんにも、言われた。


彼との連絡手段は、メールのみ。
だから彼と逢えない間は、彼に触れられぬどころか、その声すらも聞けない。

そうして3週間もすると、発作に襲われる様になる。

何の脈絡もなく、突然、叫び出しそうになる。
何の脈絡もなく、突然、涙が溢れそうになる。


  自立した女になれ。

彼の言葉を、思い出す。

無理。
出来ない。
けれど、そうならなければ。
どうやって…?


彼へのメールに、増えていく言葉。

  逢いたい。
  はやく、逢いたい…。



このまま、彼だけが全てになってはいけない。

でも…彼に魅了され、惹かれ、彼を求める心の回転数は、上がり続ける。
緩める事が、出来ない。

緩めたいと、本気で考えているのかどうかも、わからない……。




無題

2008/05/24(土) 00:14:13
わたしは、幸せになってもいいのですか…?
わたしに、幸せになる資格はあるのですか…?

問いかける。

『いいんだよ』という返事を貰い、
安心したいが為だけに。
そうして自分を、
肯定したいが為だけに。

どこまでも
どこまでも
卑怯なわたし。

自分を肯定したいと思いながらも、
そんな自分を否定し、嫌悪する。

この迷路の出口は、何処なのだろう…?





無題

2008/05/29(木) 00:17:33
今、わたしが手に入れようとしているものは

浅ましい欲望を原動力に、
自己の権利のみを主張して、
不当に入手しようとしているのでは、無い。

わたしは、精一杯努力した。
考え得る手段は、全て試みた。
それでも結果が伴わなかったのは、
わたしだけの責任では、無い。

だから。

わたしは、わたしを否定しなくても、いい。
わたしは、わたしを否定しなくても、いいのだ。




無題

2008/05/30(金) 18:52:54
わたしはわたしを否定しなくてもいい。

そう思って進もうとしても
行く手を阻まれてしまう。

諸悪の根源は、やっぱりわたし。
わたし自身。




無題

2008/06/02(月) 14:44:24
幸せになる気が無いのなら、
やるべき事は、簡単だ。

彼に、一切、逢わなければ良い。

そうすればわたしは、
わたし自身の存在意義を見失う。

わたしの身体に感覚があることも、
喜怒哀楽の感情を持つことも、
きっと忘れてしまうだろう。
ちょうど1年前のわたしの様に。


けれどもわたしは、
彼に逢わずにはいられない。

彼と語らって、笑いたい。
彼に触れられて、感じたい。
彼に抱かれて、逝かされたい。

これは、わたし自身が
幸せな瞬間を求めているという事に
他ならない。


だから…。

わたしは、わたしを否定するわたしを、
この足で踏み越えなくてはならない。

踏み越えて、行きたい…。





微笑

2008/06/03(火) 00:09:27
わたしの持つ先天的な障害とは…注意欠陥障害だ。
この障害の詳しい内容については、ここでは省くとして…。

とりわけわたしが苦しめられている症状に、『集中力をコントロール出来ない』というのがある。
ものごとに中々集中出来ない反面、一旦集中したら、まさに文字通り、寝食を忘れて集中し続けてしまうのだ。

彼が、一泊ツーリングに出掛ける前日、わたしはこの状態になった。
掃除に夢中になり過ぎた挙句、寝るのを忘れたのである。
明け方になってそれに気付き…同時に疲労困憊している事にも気付き…ベッドに入って、そのまま彼からのメールにも気付かず、眠り続ける羽目になった。

夫との離婚の一因にもなった、この障害…。
のみならず今、彼との関係まで、壊れそうになっている…。

  わたしは普通じゃないから…。
  まともな脳を持っていないから…。
  いい薬があったけど、
  副作用で飲めなくなって…。


彼へのメールに、泣き言を送り続ける。
この時わたしは、『そういう事ならしょうがない』と許して欲しかったのだと思う。

  全部、病気の所為なのか?
  これ以上俺を失望させるなよ。
  お前はお前の出来る事に最善を尽くせ。
  それが、俺の望みだ。


彼からの返答を見た時、わたしもまた失望した。

わたしが出来る事に最善を尽くした結果…わたしは夫との生活を失ったのだから。
結局求められていたのは、先方の要望を満たす事だったのだから…。


  努力します。

そう返事を出し、その日のやり取りは、終わった。


『努力します』

一体何度、この言葉を使っただろうか。
勿論、言葉通り、努力する。
傍からそうは見えなくとも、わたしは力を振り絞って、努力している。
けれども、必ず言われるのだ。

『努力が足りない』
と。

相手の望む結果を見せることが、出来ないからだろう。

誰も、理解してくれない。
誰も、認めてくれない。
それは、わたしが、欠陥人間だから…。
こんなわたしに、存在価値などやはり無い…。

自己否定の迷路に、わたしは再び迷い込む…。


翌朝、彼からメールが来た。

  やっぱりバイクは最高だぞ。
  今日はこれから○○へ行く予定だ。



前日の激怒が嘘のような、屈託の無さだった。
文面から、彼が如何に楽しんでいるか、伝わって来た。
その明るさが、泥沼の中に沈んでいたわたしの気持ちをも、明るく照らし出した。
わたしは起き上がり、周囲を見回した。
今のわたしに出来る事…。
やろう。
とにかく、動こう。
動きながら、彼の帰りを待とう。

泣き続けて浮腫んでいたわたしの顔に、微笑みが浮かんだ。




楽しむこと

2008/06/05(木) 00:45:52
3度目のお仕置きが行なわれた逢瀬は、連休最後の日だった。

その翌日仕事のない彼は、再びバイクで一泊ツーリングに飛び出してしまいそうな勢いだったのだが、連休中のせめて一日くらいは、朝から晩まで抱き合っていたいというわたしの願いを、叶えてくれたのだった。

  少しは片付いたか?

ホテルで寛いでいる時、問われて、答える。

  ほんのちょびっとだけね。

  どこを片付けた?

  居間に散らかってる本を書斎に運んで、
  雑誌やダンボールをまとめて縛って、
  テーブルで使ってたMacをPCデスクに移動したよ。


  ほほう…。
  綺麗になったか?


わたしは、大きく溜息をつく。

  全然…。
  本を書斎に運んだら、今度は本の整理だよ。
  本棚を買い足さないと、全部は入らないだろうな。
  PCデスクも、Macのとこ以外は凄いままだし、
  そろそろ庭も何とかしないと、
  またジャングルになっちゃう。
  もう大変だよ…。


  阿呆。

彼が、平手でわたしの頬をペチっと叩いた。

  『大変』じゃない、『楽しい』と言え。
  やる事が一杯あって、いいじゃないか。
  やる事があるのは、楽しいだろう?


  え…。

初めて言われる言葉だった。

片付けられなくて、散らかして、『もう大変…』と零した時、今までわたしに返ってきていた言葉は、『自業自得』とか『散らかすのが悪い』とか…そういう類のものばかりだった。
そしてその度に、『そう…自分が悪いのだ…』と、落ち込むのが常だったのだ。
けれども彼は…。
片付けを、楽しむ?
やる事があるのは、楽しい…?
わたしには、全く無い思考だった。


思えば…。


彼がわたしに、ダイエットを心掛ける様に言って以降も、一緒に食事をする機会が何度もあった。
けれども彼は、わたしの食べるものに文句を一切言わない。
例え…ラーメンにご飯もののついているセットという…ダイエットの天敵を欲しがろうが…非難めいた事は、ひと言も、言わない。
罪悪感を感じて、

  こういうのが一番太るんだけどね…。

と呟いても、

  食った分、運動すりゃ済む。

と言うだけなのだ。
彼はきっと、食事を楽しんでいる。
だから自分が食事を楽しむ為に、相伴しているわたしにも、好きなものを自由に選ばせ、楽しく食べさせている…。
そんな気がする。


  喜怒哀楽の感情を、一切取り繕うな。
  俺の前では、全てを素直に表現しろ。
  それが出来ん玩具なら、俺は要らんぞ。


彼に、厳命されていることだ。
この言葉を証明するかの様に、彼は、わたしの全ての感情の動きを面白がり、愉しむ。
どん底まで落ち込んでいる時も、悲しくてしょうがない時も…真面目に応対してくれたり、時には茶化してみたりしながら、わたしの吐き出す感情を、余す処なく堪能している様だ。

もしかして…彼の明るさがわたしに伝染するのは…どんな瞬間も、彼自身がとても愉しんでいるからではないのか…。

今後の自分の生き方に対する、ヒントを貰えた様な、気がした。





自己の好悪と幸せと

2008/06/06(金) 00:16:08
15回目の逢瀬の後…。

彼を、家の前まで送り届け、別れ際の口づけを交わした時、言った。

  今日は、バイク日和だったのに、
  わたしの為に時間を使ってくれて、
  どうもありがと。


  ほう…。

彼が、ちょっと驚いた様な顔をした。

  お前…そんな事が言える様になったか。

そして、ニヤリと笑った。
その表情に、既視感を覚える。
記憶の中を検索して、思い出した。
そう…あの時だ…わたしが、彼の横に座れなくなった時…。

その瞬間、わたしの中で、何かがストンと落ちた。
『腑に落ちる』とは良く言ったものだ、と思う程の、爽快感すら伴う感覚だった。

彼のこの満足そうな笑顔は、わたしの意識を変化せしめた、自分自身に対して向けられている。
『こいつをこういう風に仕込んだ俺、凄い!』という、己への賞賛なのだ。

あの時、わたしの心がざわめいたのは、彼の満足げな笑顔の中に、今までの経験で知っている色しか見出すことが出来なかったからだ。
『そうそう、お前はどうせその程度なんだから、分を弁えろよ』という、わたしを完全に見下している色…。

わたしは、彼の性処理玩具。
わたしに、人間としての尊厳など無い。
そう口では言いながら…ブログにもそう書き綴りながら…『見下されたのでは』と感じた途端に、何故わたしの胸中は、不穏にざわめいたのか…。

それに…彼の表情には、わたしを見下す者が必ず見せる傲慢さは、感じられなかった。
ならば、あの笑顔に感じた満足感は、一体何だったのだろう…?

あの時以降、時々思い返しては分析しようとしていたパズルのピースが、ストンと綺麗に収まるべき処へ収まった様な気がした。


16回目に逢った時、彼に訊ねた。

  この間の夜に、Tさんが笑ったのは…。
  もしかして、わたしにあんなこと言わせた俺、
  凄い!…とか思ってたから…?


彼の顔に、ゆっくり笑みが広がり、やがて『ククククク…』という様な声を上げて笑い始めた。
ふっと真顔に戻り、言う。

  お前…凄いな。
  よく解ってるじゃないか。


今度はわたしが笑顔になる番だ。

  やっぱりそうかぁ…。
  もしかしてTさん、自分の事好き?


  おう!

彼は、胸を張った。

  俺は自分が大好きだ。

  ひょっとして…ちょっとナル入ってたりしない?

  そう!
  俺はナルシストの完璧主義者だぞ。


  それじゃあ、言いつけ通りに
  わたしが卵を減らして、
  ちょっとイイ女になったり
  しちゃった日には、もう大変ね。
  『俺、さすが!俺、最高ぉーーっ!』って。


彼は、大笑いした。

  その通り!
  お前、だいぶ俺のこと解ってきた様だな。



初めて抱かれた時の事を、思い出した。
逝かされ続けてぐったりと寝そべるわたしの頬を撫でながら、彼は言っていた。

  幸せそうな…いい顔だ…。
  お前のその顔を見ていると、
  こんな顔をさせる事が出来たんだと思えて、
  俺の気持ちも満たされていく。


この頃から彼は、相手を満足させることで自らも満足するタイプであることが、はっきりしていたのだ。

それなのに、わたしが自分のことを憐れむばかりだった時には、彼の笑顔の意味を負の方向でしか受け止められなかった。
今、気の持ちようが変わった事で、わたしの視点も変わった。
だから、彼の一部を理解することが出来た…。

自分を大好きな彼が、自分自身を楽しませる為にやっている事が、わたしに影響を及ぼし、生命力を与えてくれている。

先日、コメントでも頂いた通り…。
自分自身を愛せない者は、周囲を幸せにする事も、出来ない…その事を、強く実感した。




完璧主義...(1)

2008/06/07(土) 12:06:17
『完璧に出来ないのは
 何もしていないのと同じ』

わたしは、そう言われながら育った。

「これを手伝ってくれたら、お小遣いをあげる。」
母親に言われて、小遣いを貰うという習慣のなかったわたしは、俄然張り切る。
しかし、どこかで必ず駄目出しをされ、実際に小遣いを手にすることは、無かった。
完璧に出来ていなかったからだ。
そしてそれは、何もしていないのと同じだからだ。

今なら、それが完璧に出来ているか否かは完全に母親の主観であり、やらせるだけやらされた挙句、主観的にそれを否定されるなんて、とても理不尽だと思う。
もしかしたら母親は、小遣いにホイホイ釣られるわたしを便利に使い、成功報酬を渡す気は全くなかったのかも知れない。
それなのに、今度こそは貰えるかも知れないから…と、母親の言いなりになり続けた当時のわたしは、何て愚鈍なのだろう。

そしてこの論法は、今でも色濃く、わたしに影響を与えている。
ただしわたしは、他人に対して完璧を求めることは、無い…無い筈だ。
何故なら、完璧に仕上げる事の難しさと、どの段階をもって『完璧に出来た』と判断するかには主観が入ることを、よく知っているからだ。
その代わりにわたしは、完璧でないと思うと、自分を責めてしまうのだ。
完璧に出来なくなった原因を、予見出来なかったわたしが悪いのだ、という風に。
そして、自己否定と自己嫌悪に囚われる…。


だから彼が、己を『完璧主義者だ』と評した時、完璧主義と自己否定が表裏一体となっていない彼に、とても不思議なものを感じた。

ベッドで、抱き合って寛いでいる時に、訊いてみた。

  Tさん、完璧主義者だって言ってたけど、
  完璧に出来なかった時は、どうするの?


  完璧に出来るまで、挑戦し続けるさ。

  でも、自分の力の及ばない処で
  どうしても完璧に出来ないことって
  あるでしょう?
  そういう時は、どう折り合いをつけるの?
  わたしは、そういう状況で完璧に出来ない時も、
  凄い自分を責めてしまうの。


  お前は何様だ?

頬に軽く、平手打ち。

  自分の力がどうしても及ばない処まで
  コントロールしようとするのは、
  ただのエゴだ。


  えっ?
  …だって、例えば仕事なんかだと、
  この人に頼んでしまった自分のミスだ、とか
  思ったりしないの?


  そいつが、俺の思う結果を出せなかった場合も
  ちゃんと予測しているからな。
  色んな結果を想定しておいて、
  どれかに当て嵌まったら、
  俺はそこに満足する。


また、わたしには無かった視点を提供された…。
わたしはそのまま、沈思黙考に突入する。
彼が、そんなわたしを、きらきら瞳を輝かせ、興味深げに観察している。
この時わたしは、彼のバイクがパンクした時のことを、思い出していた…。