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無題

2008/10/04(土) 11:30:16
決意しても
決意しても

時が経って
事態が少しでも動くと

本当にわたしの選択は正しいのか

自問自答を
始めてしまう


わたしは
本当に正しい事を
しようとしているのか


こうまでして
自分を護ろうとする価値が
わたしにあるのか


『生きててくれるだけで
 いいんだよ』

妹は 言う


わたしが精神的に追い込まれると
不思議な事に必ず彼が怪我をする

まるでわたしを支配する暗黒が
彼にもその触手を伸ばそうとするが如く


それでもわたしは
彼の傍にいたいという
自己の欲求を満たしたいが為だけに
取捨選択を繰り返していても
いいのだろうか



わからない




急転直下

2008/10/04(土) 16:59:39
事態は、音を立てて動き出した。

もう、わたしには止める事が出来ない。

まるで坂道を転がり落ちる岩の様に、
地響きを轟かせている…。

最初のひと押しをしたのはわたしなのに、
わたしの意図しない勢いで動き始めると、
不安で
不安で
堪らない。

この岩の行く先をコントロールする事が
わたしに出来るだろうか……。




興味と関心

2008/10/17(金) 18:15:32
3週間ぶりに、彼に逢った、ある日。

開口一番、彼が言った。

  お前…何度か脱皮したな。


すぐに脳裏に浮かんだのは、『一皮剥ける』という表現だった。

今後、何処でどう生活していくか…という選択を迫られている身としては、懊悩しながらも様々な取捨選択を繰り返しているうちに、外見から推察される精神的変化でも見せているのだろうか。
そう思った。


一緒に、彼の住む部屋に向かう。

彼の部屋の前の廊下には、ジョロウグモが見事な巣を張っていた。

  わぁ…このクモ、大きくなったねぇ。

彼もわたしも、クモに対しての忌避感が全く無い。
目に入る場所に巣を張られても、直接邪魔になる事がなければ巣は壊さないし、時々観察するのを楽しんだりもする。

  だろう?

彼が、答える。

  こいつな…。
  脱皮する度に、大きくなってくんだ。


  うん、クモってそうだよね。

  お前は…一体何回脱皮した?

  …はい?

  暫く見ない間に、随分デカく
  なってるじゃねえか!
  この短期間に、何食えば
  そんなに育てるんだ!?



やっと、理解した。
彼は、わたしが肥ったと言っているのだ。

  脱皮って…そういう意味…。

特に、食生活に変化があった訳ではない。
それでもわたしは、周囲が驚く程の速度で肥える時がある。
大抵、大きなストレスを抱えている時だ。
そしてわたし自身は、自分の見た目に無頓着な為、誰かから指摘されるまで肥えた事に気付かないのだ。
ストレスが、わたしの体型に、どんな影響を与えているのかは判らない。
けれども、解消されると、自然に元の体型に戻るらしい。
この時も、急に痩せたね、と驚かれるから、それと気付く。

無頓着なのは、体型の変化に対してだけではない。
自分がストレスを感じているという事に対しても、同様だ。
つまり、胃が痛む様になったり、急に肥った事を指摘されたりした時に、自分が大きなストレスを抱えている事に、初めて気付く。
まるで他人事の様に、『ああ…どうやらこの状態は、わたしにとってストレスらしい…』と、認識するのだ。


  …ま、今の状況のお前に、
  体型にまで気を配れ、と言うのは、
  ちと酷だろうな。
  だが…来年中には痩せろよ。
  出来なけりゃ棄てる。



結局のところ、わたしが自分自身に無頓着なのは、自分を慈しむ事が、出来ずにいるからなのだろう。
風邪をひきかけたら早めに養生する…などといった体調管理は行うが、これは自分の為ではなく、会社に迷惑をかけない為だ。


自分の体型に気を配る事、すなわち自分に興味と関心を持つこと…。



出来るだろうか、わたしに…。




2008/10/18(土) 11:19:56
  これが、今年最後の遠乗りになるだろう。

そう言って彼は、バイクに乗って出掛けて行った。
わたしの住む地方に程近いところが、目的地だった。

日が暮れ始めてから、メールが入る。

  ○○で、待ち合わせるか?

わたしのお気に入りの観光地。
夜になって、人気がなくなった時の雰囲気が最高だ、と、彼に話していた場所だった。

  これからだと、2時間ちょっと
  かかってしまいますけれど、
  大丈夫ですか?


  俺もゆっくり移動するから、構わん。

急いで身支度し、車に飛び乗る。
日没後の気温は、どんどん下がっていく。
店じまいした後の観光地では、彼が寒さをしのげる場所が、無い。
出来るだけ急いで、待ち合わせ場所に向かった。


  着いた。

彼からメールが来た。
わたしの方は、後30分はかかってしまう。

  ええっ!
  ごめんなさい、急ぎます!


  慌てるな。
  お前の言う通り、いい雰囲気だ。
  のんびり待ってる。


そうは言っても、バイクの移動で、この寒さ…。
アクセルを踏み込む。


シャッターの下りた土産物屋街に、静かに車を入れ、突き当たりでエンジンを止めた。
彼のバイクが、停まっている。
彼は、どこだろう?
車を降りて見回すと、車止めの石の上に座って、微動だにしない人物が居た。
彼だ。
歩み寄る。
遅れた謝罪を言おうと、口を開いた。

  あらっ?

意図しない感嘆の声が出た。

  おう。

彼が、低く応じる。
その膝の上に、面白い模様の猫が、座っていた。

  どしたの、そのコ。
  野良猫?


  たぶんな。

  ごめんね、遅くなって。
  寒かったでしょ?


  いや…こいつのお陰で温かかった。
  俺がここに座ったら、
  こいつ上ってきやがってさ。


  さすが観光地の猫。
  人慣れしてるんだね。


ひそひそ声で、言葉を交わす。

猫は、突然現れたわたしにも動揺せず、彼の膝の上で丸まって香箱を組み、心地良さそうに目を半分閉じている。
彼も、少し背中を丸め、膝を揃えて猫を乗せ、その体温を満喫している。
満月が、白く冷たい月明かりを漂わせる中、彼の微笑みは、静かで穏やかで、温かかった。


そんな彼の事も、途轍もなく愛おしい。

そう、思った。




嗅覚

2008/10/27(月) 10:10:29
彼は、わたしを抱き寄せ、匂いを嗅ぐ。
逢うと、まずは必ずそうする。
まるで、犬の様だ。

わたしは、微かに緊張し、息を潜めて、彼の為すがままになる。
犬同士の挨拶は、優位に立つ犬が最初に下位の犬の匂いを嗅ぐ。
下位の犬は、上位の犬が思う存分匂うのを、おとなしく待たなければならない。
二人して、まさしく犬の様だ。

そうやって匂うと、わたしが彼の言いつけ通り、規則正しく生活していたか、食べるものに気を配って健康的に過ごしていたか、判るのだそうだ。


  んっ?

その日、彼はわたしを匂った後、ふと首を傾げた。

  いつもと匂いが違う…。

  あ…歯磨き粉、変えたけど…。

  そうか、それでか。
  わかった。


そう言って彼は、身体を離した。
頬を叩かれたり贅肉を抓られたりしなかったという事は、彼にとって不快な匂い…即ち、わたしの不健康さを感じる匂いはしなかったという事だった。

  …まさか…歯磨き粉が変わっただけで、
  わたしの匂いが変わるの?
  それがわかるの?


  ああ。

  ええーっ?
  なんで?


歯磨きをしたのは、家を出る前。
その後、煙草も吸ったしコーヒーも飲んでいる。
歯磨き粉の匂いが、残っているとは思えなかった。

  わかるさ。
  お前の匂いは覚えてるからな。


  ………殆どケモノだね。

彼は、声を上げて笑った。

  本能のままに生きてるからな。

わたしは、呆然として、ぽかんと口を開けて、彼を見つめていた。

彼の嗅覚の前には、どんな嘘もごまかしもきかない…。
そのことを、強く、再認識した。




100%

2008/10/30(木) 21:49:05
『私は100%、貴女の味方ですよ』


そう言われると、わたしは、とても怯んでしまう。


『例えお前をどんなに碌でもないと思っていても、』
100%味方をしてやる。

そう言われている様な、気がする。

そして更に、

100%味方をしてやる。
『その代わり、自分には絶対逆らうな』
『自分の善意を疑うな』

そう言い渡されている様な、気がする。



そして。

『100%味方だ』

こう口にする人物に限って、
真実100%味方だった試しは、

無い。