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2008/10/27(月) 10:10:29
彼は、わたしを抱き寄せ、匂いを嗅ぐ。
逢うと、まずは必ずそうする。
まるで、犬の様だ。
わたしは、微かに緊張し、息を潜めて、彼の為すがままになる。
犬同士の挨拶は、優位に立つ犬が最初に下位の犬の匂いを嗅ぐ。
下位の犬は、上位の犬が思う存分匂うのを、おとなしく待たなければならない。
二人して、まさしく犬の様だ。
そうやって匂うと、わたしが彼の言いつけ通り、規則正しく生活していたか、食べるものに気を配って健康的に過ごしていたか、判るのだそうだ。
んっ?
その日、彼はわたしを匂った後、ふと首を傾げた。
いつもと匂いが違う…。
あ…歯磨き粉、変えたけど…。
そうか、それでか。
わかった。
そう言って彼は、身体を離した。
頬を叩かれたり贅肉を抓られたりしなかったという事は、彼にとって不快な匂い…即ち、わたしの不健康さを感じる匂いはしなかったという事だった。
…まさか…歯磨き粉が変わっただけで、
わたしの匂いが変わるの?
それがわかるの?
ああ。
ええーっ?
なんで?
歯磨きをしたのは、家を出る前。
その後、煙草も吸ったしコーヒーも飲んでいる。
歯磨き粉の匂いが、残っているとは思えなかった。
わかるさ。
お前の匂いは覚えてるからな。
………殆どケモノだね。
彼は、声を上げて笑った。
本能のままに生きてるからな。
わたしは、呆然として、ぽかんと口を開けて、彼を見つめていた。
彼の嗅覚の前には、どんな嘘もごまかしもきかない…。
そのことを、強く、再認識した。
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