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お仕置きの後…

2008/03/13(木) 02:21:16
口移しで水をたっぷり飲ませてくれた後、

  休め…。

彼はそう言って、わたしをベッドに横たえた。
わたしはその場で丸くなる。
まだ止まらぬ涙を拭いもせずに、ベッドの足元部分で、膝を抱える様な姿勢になった。

彼がわたしの後ろに寝そべった。
背後から、わたしの肩や髪をそっと撫でる…。



あの時…わたしは、何を考えていただろう…。

何も考えていなかった様な気がする。

時々鼻を啜り上げながら、ただただ、放心していたと思う。



彼が、ベッドの上の方に移動していく気配があった。
背中がすぅっと寒くなった。
わたしは、動かなかった。



気がつくと、腕の痺れは消えていた。
そっと指の動作確認をして、異常がないのを確かめた。
涙は止まり、頬も乾いていた。
姿勢を変えて、彼の姿を確認する。

彼は、枕に頭を乗せ、大の字になっていた。
眠っているのかと思ったが、目は開いていた。
わたしが彼を『可愛い』と感じてしまうのは、普段の彼の目の所為だ。
歪んだ性癖を持っていることを感じさせぬ、邪気のない明るい光を湛えた、澄み切った瞳…。
その目を見開き、彼はじぃっとしている。

わたしはごそごそと傍らに這って行った。
彼の腕の下に潜り込み、わき腹に寄り添う。
彼がわたしを見下ろした。
わたしを抱き寄せ、髪の中に指を入れる。
そのまま髪を梳きながら、視線を天井に戻す。

わたしは彼の顔を見上げ続ける。
一体なにを考えているのだろう…?
こうして頭をゆっくり撫でられていると、眠ってしまいそうだ…。

  この天井の模様、落ち着くな…。

彼が、呟いた。

  え…?

天井に視線を転じる。
モルタルの様な粗さのある素材。規則正しく溝が刻まれ、縞模様の陰影を見せている。

  今までの部屋の天井、見てなかった…。
  どんなんだったっけ?


  普通の…つるっとした天井だった。

  そう…?

彼は再び、黙り込んだ。
わたしも天井を見上げたまま、口を閉じた。

彼の、ゆったりとした穏やかな呼吸音が聞こえる。
そこにわたしの呼吸が重なる。
規則正しい、微かなふたつの呼吸音が、室内を満たす。

とても、静かだった。