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被虐嗜好

2008/03/19(水) 00:11:52
わたしの身体は、彼の加虐に反応する。

決して、痛みを気持ちよく感じている訳ではない。
痛みは痛み、それ以外のなにものでもない。
それなのにわたしの身体は、それを快感に変換し、わたしの秘部をしとどに濡らす。



何度目の逢瀬の時だったろう。
ベッドで抱き合って愛撫しあいながら、

  痕が残ってもいいから…
  お願い…わたしを噛んで…


彼に、そう懇願した事がある。
夫はもう、わたしに手を触れない。
それを確信した直後だった。

彼は一瞬、迷う様な表情を浮かべた後、わたしの乳首を舌で転がしながら、ゆっくりと歯を立てていった。

  い…いい゛ーーーーーーーっ!!

自分の声かと思う様な悲鳴が出た。
わたしとしては、肉食獣が獲物を食む様に、口を大きく開けて噛む事を求めたつもりだった。
局部的に乳首だけを噛まれるとは、全く予想していなかった。
その驚きが、激痛に拍車をかけた。
彼の方は、一度加虐を始めると夢中になるのだろうか、もう片方の乳首にも噛み付いた。

  ぎぃぃーーーーーーっ!!

金属的な悲鳴が出た。
そんな声を聞いても、彼は怯まない。力も緩まない。
それどころか、暴れるわたしの身体を押さえ込み、ギリギリと歯を立て続ける。

痛い痛い痛い痛い痛い……

自分で要求しておきながら、その痛みに挫けそうになる。
けれどもわたしはその時、自分の女陰が燃える様に熱くなり、溢れ出し、とろとろと滴り落ちるのも感じていた…。



この日のわたしは、いつにも増して、自分を壊してしまいたかった。
痛め付けて欲しかった。
当時はまだ、優しさの鎧を強固に纏っていて、わたしを壊してくれる人なのかどうか判断の付かない彼に、少し焦れる気持ちもあったと思う。

行為の後、乳首から唇を離し、

  相当力入っちまったぞ。
  大丈夫か。
  血、出てないか…。


と呟いた彼。

今にして思えば、わたしの乳房は傷付けたくない、という気持ちから出た言葉だったのだと思う。
当時のわたしは、わたしの身体を気遣ってくれているのだと解釈した。
勿論、そういう意識も彼にはあるだろう。
純粋にわたしの身体を気遣っているのか、今は気に入っている玩具をまだ破壊したくないのか…そこは判断が難しい処だけれど。


その日の彼は、わたしに色んな事をした。
縛って拘束した上で…
ヴァギナにバイブを突っ込んで掻き混ぜる…
指を突き入れて、ぐちゃぐちゃに掻き回す…
色んな体位を取らせて、ペニスを突き立てる…

その後、薄く冷たい笑みを浮かべて言った。

  お前が、何を一番悦ぶか把握した。
  一番好きなのは、やっぱりこいつだな?


そう言いながら、再びわたしをペニスで貫いた。

  あ…あ…そう…Tさんのが…一番好き…。
  ああっ…凄い…素敵…。


彼にしがみ付いて、悶える。

この時彼はきっと、わたしがどういう行為にどう反応するのか、その性能を確かめていたのだろう。
わたしも、彼を試したのだと思う。
一度噛んだ後は、躊躇いを見せずに力を込め続けた彼…。
この人なら、わたしをいつか壊してくれる…。
要求を聞いて一瞬逡巡したのは、今なら彼が、己の自制心を危ぶんだのだと理解できる。
このわたしの願望と、それが満たされた時の反応は、彼の加虐にある程度まで対応できると、彼にも教える事になっただろう。

  これからが、愉しみだな。

答える代わりにわたしは、しがみ付く腕に力を込めた。