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ボールギャグ

2008/04/18(金) 18:25:32
この日も、新しいアイテムが加わった。
ボールギャグだ。

ボールを銜えた時、長時間これを着けられたら、さぞかし顎が疲れるだろうな、などと考えた。

  どうだ?

後頭部のベルトを締め終わった彼が、目をキラキラさせて、わたしの顔を覗き込む。

  (顎が痛くなりそう)

  何言ってるか判らん。

  (だから、顎がね…)

一生懸命、喋ろうとしながら、身振り手振りも加えて、顎が痛くなりそうだ、と伝えようとする。
彼は、笑い転げながら、そんなわたしを見ている。
それでも何とか、言わんとしたことは通じた様だ。

  そうかぁ。
  じゃ、こうしたらどうだ?


彼は、ボールをわたしの口の中にぐいっと押し込んだ。
顎が更に押し広げられた。

  (痛い、痛いよ)

  どこが痛い?

  (顎とね…)

ベルト部分が、唇を挟み込むような感触があり、そこがチリチリと痛む。
それを伝えようとするが、勿論、まともな言葉にはならない。

  (唇が挟まったような感じでね…)

  だから何言ってるか判らん。
  面白いな、これ。


彼は、随分とボールギャグが気に入った様だ。
わたしは、舌でボールを押し出し、唇の痛みだけでも何とかしようとした。
それに気付いた彼が、ボールを押し戻す。
わたしは、顔を顰めて痛がっている事をアピールする。

  (痛いってば)

  ちゃんと喋れよ。

  (無理言わないでよぉ)

彼は益々、笑い転げる。
ひとしきり、そんな事を繰り返して遊んでいた。

  お前から言葉を奪えるという訳だな。
  面白い。次回たっぷり使ってやろう。
  さて…それじゃ風呂に入るか。


彼が、わたしの後ろに回り、ボールギャグを外した。
わたしの口元から、涎が糸を引いて流れ落ち、胸元に垂れた。

  あ…涎が…。

  え、どこ?

彼は、バッとわたしの前に回った。
胸元を濡らす涎の痕に気付く。

  しまった…。
  お前が涎垂らすとこ見逃した…。


  …なんでそんなとこ見たいの…。

  くそ、油断した…。

彼は、決定的瞬間が見られなかったことを、心底悔しがっている様子だった。
そんなに残念がらなくても…と思うと可笑しくなってきて、わたしは自然に笑顔になった。

  …まあいい。
  今度はこれ着けさせてから突いてやる。
  どれだけの涎が出るだろうなぁ?


笑顔が固まるのが判る。
怖いと思ったからではない。
わたしには、ボールギャグの何がそんなに彼を悦ばせるのか、理解できなかったからだ。
その戸惑いが、表情を固めてしまった。

わたしに痛みを与えて悦ぶ。
わたしの呼吸を奪い、苦しませて悦ぶ。
今までの彼の行為は、彼が何に面白さを感じているのか、わたしにも想像がしやすかった。
けれども、ボールギャグは解らない…。
言葉という、人間同士の意志伝達に使われる手段を奪うことで、より一層モノや動物として扱い、それを愉しむというのなら、理解できる。
けれども、涎というのは、何なのだろう…?
彼は、わたしから何を引き出そうとしているのだろう…?

  ほら、入るぞ。

浴室へと促され、わたしの思考は中断された。
以前のエントリー「注がれて」で予告した通り、シャンプーとリンスを持参していたわたしは、急いで鞄から入浴道具を取り出し、浴室へ向かった。




欠落

2008/04/18(金) 20:47:40
彼が、言う。

  お前には想像力が無い。


何故か、涙が止まらない。





無題

2008/04/18(金) 23:59:48
日常が、色を失う。

彼にのめり込めばのめり込む程、
日常生活の中に冷静なわたしが出現して、
明るく振る舞っているわたしや
家でただぼんやりと転がっているだけのわたしを
観察したがっている。
一体どんな顔をして、いけしゃあしゃあと
生きているのか、観たがっている。

彼の前以外では、
わたしはわたしに与えられた役割を
演じているだけ、という思いが強くなる。
だから、独りになると
能動的に動く必要を感じなくなる。

歯軋りをしてしまって、
自分が無意識に奥歯を食いしばっていることに
気付いたりする。
笑顔で仕事をしていた筈なのに。
何かの感情を、自分が遮断しているということだろう。

そうやって感情を動かさないようにしているから、
想像力が欠落してしまうのかも知れない。


彼は、彼一色に染まるわたしを望んでいない。
なのに、日常生活からは
色彩がどんどん失われていく。