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恋人のように

2008/04/15(火) 23:04:05
その日の彼は、いつもと少し雰囲気が違っていた。
本当なら、ツーリングに行く予定だったのが、途中で天気が崩れるということで、急遽予定を変更し、わたしで遊ぶ事にしたからだった。
頭の中から、バイクを追い出すことが、中々出来なかったらしい。
わたしの方は、彼がいつ予定を変更してもいい様に準備だけは整えていたので、お呼びがかかった時は大喜びで家を飛び出した。

予定を変更したとは言え、この日の彼は、とても機嫌が良かった。
移動中のわたしにメールで、朝食をとり損ねたので何か調達して来て欲しいと言って来た。
それを読んだわたしが用意した朝食は、彼の好みを把握したものだった。

  これは、お前が、俺はどんなものが好きか、
  日頃からちゃんと見ているって事だからな。


ホテルに向かう車中で彼は、朝食をとりながらそう言った。
わたしは密かに、ほっとした。
一番やりたかったことが出来なかった彼を、更に不機嫌にしなくて済んだことに、安心した。
同時に、ほんの些細な頼みごとの中ででも、わたしという人間の性能を確認しようとする彼の傾向を知り、少しだけ緊張した。


ホテルに着いて一段落すると、彼はソファに座った。

  おいで。

自分の横をポンポンと叩きながら、そう声を掛けられる。
『来い』ではなく『おいで』なのに、ちょっと意表を突かれる。
わたしは、床に座って彼の足の間に滑り込んだ。

  やっぱりそこか。
  床なのか。


彼が、笑う。
膝立ちで彼に抱き付き、甘える。
キスを繰り返しながら、互いの近況を、報告し合う。
わたしの方は、職場を異動したばかりなので、報告する内容も多くなる。
彼は、それに耳を傾け、時に質問したりしながら、にこにこと聞いている。

そんなわたしたちは、きっと、どこからどう見ても、普通の恋人同士の様だったろう。
サディストとマゾヒスト、持ち主とその玩具には、見えなかったに違いない。


彼と出逢い、身体を重ねるようになって、ちょうど10回目。
甘美な拷問のひと時は、とても穏やかに、始まった。