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15回目の逢瀬の後…。
彼を、家の前まで送り届け、別れ際の口づけを交わした時、言った。
今日は、バイク日和だったのに、
わたしの為に時間を使ってくれて、
どうもありがと。 ほう…。彼が、ちょっと驚いた様な顔をした。
お前…そんな事が言える様になったか。そして、ニヤリと笑った。
その表情に、既視感を覚える。
記憶の中を検索して、思い出した。
そう…あの時だ…わたしが、
彼の横に座れなくなった時…。
その瞬間、わたしの中で、何かがストンと落ちた。
『腑に落ちる』とは良く言ったものだ、と思う程の、爽快感すら伴う感覚だった。
彼のこの満足そうな笑顔は、わたしの意識を変化せしめた、自分自身に対して向けられている。
『こいつをこういう風に仕込んだ俺、凄い!』という、己への賞賛なのだ。
あの時、わたしの心がざわめいたのは、彼の満足げな笑顔の中に、今までの経験で知っている色しか見出すことが出来なかったからだ。
『そうそう、お前はどうせその程度なんだから、分を弁えろよ』という、わたしを完全に見下している色…。
わたしは、彼の性処理玩具。
わたしに、人間としての尊厳など無い。
そう口では言いながら…ブログにもそう書き綴りながら…『見下されたのでは』と感じた途端に、何故わたしの胸中は、不穏にざわめいたのか…。
それに…彼の表情には、わたしを見下す者が必ず見せる傲慢さは、感じられなかった。
ならば、あの笑顔に感じた満足感は、一体何だったのだろう…?
あの時以降、時々思い返しては分析しようとしていたパズルのピースが、ストンと綺麗に収まるべき処へ収まった様な気がした。
16回目に逢った時、彼に訊ねた。
この間の夜に、Tさんが笑ったのは…。
もしかして、わたしにあんなこと言わせた俺、
凄い!…とか思ってたから…?彼の顔に、ゆっくり笑みが広がり、やがて『ククククク…』という様な声を上げて笑い始めた。
ふっと真顔に戻り、言う。
お前…凄いな。
よく解ってるじゃないか。今度はわたしが笑顔になる番だ。
やっぱりそうかぁ…。
もしかしてTさん、自分の事好き? おう!彼は、胸を張った。
俺は自分が大好きだ。 ひょっとして…ちょっとナル入ってたりしない? そう!
俺はナルシストの完璧主義者だぞ。 それじゃあ、言いつけ通りに
わたしが卵を減らして、
ちょっとイイ女になったり
しちゃった日には、もう大変ね。
『俺、さすが!俺、最高ぉーーっ!』って。彼は、大笑いした。
その通り!
お前、だいぶ俺のこと解ってきた様だな。初めて抱かれた時の事を、思い出した。
逝かされ続けてぐったりと寝そべるわたしの頬を撫でながら、彼は言っていた。
幸せそうな…いい顔だ…。
お前のその顔を見ていると、
こんな顔をさせる事が出来たんだと思えて、
俺の気持ちも満たされていく。この頃から彼は、相手を満足させることで自らも満足するタイプであることが、はっきりしていたのだ。
それなのに、わたしが自分のことを憐れむばかりだった時には、彼の笑顔の意味を負の方向でしか受け止められなかった。
今、気の持ちようが変わった事で、わたしの視点も変わった。
だから、彼の一部を理解することが出来た…。
自分を大好きな彼が、自分自身を楽しませる為にやっている事が、わたしに影響を及ぼし、生命力を与えてくれている。
先日、
コメントでも頂いた通り…。
自分自身を愛せない者は、周囲を幸せにする事も、出来ない…その事を、強く実感した。