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お仕置きの理由

2008/05/26(月) 22:26:37
連休中の事。

彼は、バイクでの一泊旅行を計画していた。
わたしも誘ってくれたのだが、車で着いていくのもタンデムで行くのも、色々と無理があるという事で、残念に思いながらも辞退した。

淋しがるわたしに、彼が言った。

  いい機会だから、
  家の掃除でもしたらどうだ。
  休み中も、ちゃんと規則正しく
  生活しておけよ?



わたしに対して、常に真正面から向かい合ってくれる彼。
そんな彼に相応しい玩具になりたい。
だから、規則正しく生活し、内面も外見も磨いて、いつまでも彼に大事にされる様に、努力したい…。
その頃のわたしの心の中に、芽生えていた、そんな気持ち。
実行に移す為には、家を綺麗にして、生活全般を再構築することも不可避だ。
頑張らなくては…。
わたしはそう決意し、彼に逢えぬ連休を掃除で過ごし始め、つい夢中になって明け方まで動き回り、彼が旅立つ日は昼過ぎまで眠ってしまった。

目覚めて携帯を見た時、驚いた。

  おい、起きろ。

彼からのモーニングコールが入っていた。
それも、何度も何度も…。

  使えねえ奴だよ、お前は。

最初のモーニングコールから1時間後、そういうメッセージを最後にメールは暫く途絶え、

  一生寝てやがれ。

正午過ぎに、もう一度メールが来ていた。

慌てたわたしは、急いで謝罪のメールを送る。
そして、再び家事に取り組み始めた。

夕方を過ぎても、彼からの返事は無い。
正午過ぎから一度も休憩を取らずに走っている、という事は考えにくいから、わたしの謝罪を無視していると見ていい。
本当に、怒らせてしまったのだ…。

謝罪メールを、何度も送る。

暗くなってくると、返事がないのはもしかして、何かアクシデントに巻き込まれたからではないか…という考えまで、頭の中を駆け巡り始めた。
不安で不安で、何も手につかなくなる。

彼が無事であるにしても、もしもこのまま、彼からの連絡が途絶えたら…わたしは、どうすれば良いのだろう…?

  何か事故などに巻き込まれてませんよね…?
  大丈夫ですか…?


わたしに出来る事は、メールを送り続けることだけ。

  このクズ野郎。

返事が来た時は、とりあえず最悪の事態になってはいなかった事に安堵し、涙が出て来た。

  お前は『外見も内面も磨く』と言った。
  それがどうだ? この有様は。
  お前の言う『磨く』ってのは、
  そういう生活の事を言うのか?


  ごめんなさい…。

  あの時、俺が何処に居たか、
  教えてやろうか。
  ○○公園だ。
  お前が片付けを頑張っている様だから、
  ちょっと寄って、褒めてやろうと
  思ってたんだよ。



愕然とした。
○○公園とは、わたしの職場の前の公園だった。
1時間半の間、やけにこまめにメールが入っていたのは、そういう事だったのか…。


自分の好きな様に走る事を、何よりも好む彼。
その彼が、わたしの為に寄り道をした上に、長い時間待っていてくれた…。

彼は、このツーリングを、とても楽しみにしていた。
そんなツーリングへの出発点を、不愉快な思いで過ごさせてしまった…。

申し訳なくて、悲しくて…そして何よりも、とても嬉しくて…。
わたしは、声を上げて、泣いた。