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彼の来訪......(1)

2008/07/31(木) 19:05:06
  俺はお前を俺の巣に入れたんだ。
  今度はお前が、俺を入れる番だよなぁ?


彼の家に行けば、当然言われるだろうと判っていた。
けれどもわたしは、お盆休みの間に何とか体裁を取り繕って、それから招待しようと考えていた。
ところが、メールでその辺りのやり取りをしていた時、突然彼が言い出したのだ。

  全ての穴を俺に晒したお前が、
  ここまで頑なに拒むのは、
  そこにお前の真実の姿が
  隠されているという事だ。
  ブチ込みてえ。
  暴いてやる。


そんな論理展開になるとは、予想もしなかった。
そして『ブチ込んでやる』と言い出した彼は、何があろうと必ずそれを強行する人だという事を、わたしはこの半年でしっかり学んでいた。
とんでもない事になった…。
わたしは激しく動揺した。

  嫌です。
  許して下さい。
  人間が住んでいる家の状態じゃないのです。
  見ればきっと嫌われる。
  あなたもわたしを棄てるでしょう。


  ほほう、それがお前のトラウマか。
  尚更興味が湧いて来たぜ。


  あなたが来られるまでに
  少し掃除しようにも…
  月のものが来たので、動けません。
  だから、今回はご勘弁下さい…。


  なるほど、生理痛で苦しむお前を
  眺めることも出来るって訳だ。
  それは益々行かねばならんな。


懇願の言葉全てが、悉く裏目に出る。

  嫌ですお願い。
  今回だけは許して…。
  わたし一体どうすれば…。


わたしは、混乱の極みに達してしまった。

  ゴチャゴチャうるせえ。
  お前は俺に、その真実の姿を晒し、
  ブチ込まれて掻き回されてりゃいいんだ。
  久しぶりに責めてやるよ。
  身体ではなく魂をな。
  愉しみだ。
  興奮するぜ。


もう、駄目だ。
このモードに入った彼は、止められない…。

わたしは、虚ろな瞳で家を見回す。
この家が、わたしの真実の姿…?
普通の生活が困難なほどに散らかり、壊れた物に溢れ、秩序を失い、機能しているのは極々一部…。
言い得て妙だな…と、自嘲が漏れる。
醜い容姿に壊れた精神、辛うじて外で働く事だけは出来ているわたしと、この家は確かによく似ていると思った。

僅かでも掃除を…と思う。
しかし、時に蹲って呻いてしまう程の生理痛に苛まれているわたしは、起き上がる事すら出来ない。
それに、動けたところで、右のものを左に動かし、左のものを右に動かし、結果かえって室内の混迷は増すばかりなのを、嫌と言う程知っていた。
もう、いい…。
どうにでもなれだ…。
この室内を見た彼が、わたしを侮蔑の目で見やり、わたしの縋る手を汚物の様に振り払う様を想像し、涙を零した。


当日の朝。
彼からメールが来る。

  これから向かうぜ。
  股おッ広げて待ってろよ♪


彼が絵文字を使うのを、初めて見た。
かなりご機嫌という事だろう。
わたしは、既に感情が動かなくなっているのを自覚しながら、携帯電話を閉じた。