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関係

2008/07/16(水) 21:25:01
彼の漏らす呻き声を道標に、彼が解してほしい箇所を見つけ、マッサージする。
わたしの手の故障があるから、力を入れてツボを刺激することは出来ない。
それでも精一杯の力で、どう指圧すれば彼が満足げな呻きを上げるか、確かめながら、続ける。

  お前の手は、温かい…。
  手を当てられてるだけでも
  気持ちがいい…。


彼が、すっかり寛いだ様子の眠そうな声で言う。

  そう?
  なら良かった。


そうやって手を動かしながら、わたしは考え込んでいた。

さっきの彼は、何を自覚したのだろう…?
段々、生命なき玩具の様にぞんざいに扱われなくなっているのと、関係があるだろうか…?


いつだったかの会話を思い出す。
最近普通のセックスばかりで、責めをしなくなったと言った時、彼は答えた。

  プレイの一環でやるのもいいが…。
  どうせやるなら、力一杯痛めつけてやりたいからな。
  仕置きの時以外にしたいと思わなくなった。
  加減しちまいそうだから。


この時も、わたしは少し驚いたのだ。
わたし相手に、加減するという思考が彼にあったことに、驚いた。


今まで心地よさを感じていた、『自分がモノの様に扱われる』状態。
けれど彼は、少しずつわたしをモノ扱いしなくなってきてはいないか。
そしてもし全くそうしなくなったら…彼とわたしは、どうなるのだろう…?


万が一、彼が先刻自覚した事が、わたしを他の男に使わせたいとは思っていないという気持ち…わたしに対する独占欲なのだとすれば…。
彼とわたしの関係は、限りなく普通の恋愛関係に近づいている様な気がする。

愛だの恋だのという感情が解らない、と言っていた彼だけれど、わたしが大きく変化しているのと同じ様に、彼もどんどん変化しているのだとしたら…。

彼とわたしとの絆は、互いが今までめぐり会うことの出来なかった、歪な性癖を満たせる相手であるという事だったのではなかったか。
それがなくなるという事は、ふたりの絆がひとつ、消えてしまうということなのかも知れない…。

そんな気がして、わたしの胸中に、不安が湧き起こった。

普通に、愛し愛される関係になるなら、それでも良い。
どうして、そう考える事は、出来ないのだろう。
普通の恋愛関係にはなりたくないと…そう思ってしまうのは、何故だろう。

肩から始まり、背中、腰、お尻、太股、ふくらはぎ…と、マッサージする位置を下げていきながら、わたしは考え続ける。
けれども結局、結論の出ないまま、最後の仕上げに彼の土踏まずを踵で踏む。

  はい、おしまい。

言いながらわたしは、彼の背中に覆い被さり、抱きついた。

  ん。すげー気持ち良かった。

姿勢を変えた彼が、腕の中にわたしを抱きすくめる。

ひとつだけ確かなことは…。
こうして彼と共に過ごす時間は、わたしにとってとても幸福なひと時であること…。

この先、ふたりの関係がどう変化しても…いつまでも、互いに互いから幸福感を得られる関係でいたい…。
そう願った。