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復活する

2009/12/29(火) 00:56:53
その件から約1ヶ月半は、わたしも新しい職場に慣れるのに必死で、直面している数々の問題を、無視する事が出来ていた。

朝、早起きして仕事に行く。
夕方から夜にかけて帰宅し、少し自由な時間を過ごして、寝る。

Sの居ないメッセに上がって、居合わせた誰かと話をしても、日付が変わる前には会話を辞して床に就く。

週末の膨大な自由時間を持て余す他は、ただひたすらに、淡々と、社会人としてやり直す事だけに、注力していた。

ゲームへの参加も、控えていた。
参加すれば、規則正しく生活する事が難しくなるのは、目に見えていたからだった。


そんなある日、やっとSが、メッセンジャーに現れた。

  お前、尊敬されてるなwww

  あ…!お久しぶり!
  で、藪から棒に何の話よ?w


  ここ、見てみな。

教えられたURLを見に行くと、バトルが終了したパーティの、フリータイム中の会話を閲覧する事が出来た。

  あ、ゲームに復帰してたんだ?

  うんw

そう言いながら、会話にざっと目を通す。
その中では話題が、尊敬するプレイヤーの話になっており、一人のプレイヤーがわたしの名を出してくれていたのだった。
そのプレイヤーのIDを見て、わたしは微笑んだ。

  あー…この子、続けてるんだねー。
  良かった…。


以前、同じパーティでプレイした時、初参加で勝手が判らずテンパっていた様子だったので、ちょっと手助けしたプレイヤーだった。
かつてわたしが初心者で、どうして良いか判らずにオロオロしていた時も、さりげなく助けてくれたベテランが居た。
そのベテランのお陰で、わたしは、途中で挫けずに最後までバトルを楽しむ事が出来たばかりか、それ以降もこのゲームを続けようと考えられる様になった。
わたしよりキャリアの短いプレイヤーを手助けする事は、あの時にわたしを助けてくれた、ベテランに対する恩返しの様なものだった。
それを、尊敬している人…なんて言われて名を出されると、何ともくすぐったい気持ちになってしまう。
照れ笑いしながら会話を読み進めていたわたしは、それに続くSの言葉に、眉根を寄せた。

  あー、しのぶなー。
  俺、よく知ってるwww
  あいつ、俺には逆らえないんだぜい♪


まただ…。
また、こういう事を言っている…。
Sが参加したバトルの後、わたしの名が出されると、わたしと親しくしている…と言い出すのは、それまでにも何度か目にしていた。
その度に、わたしの中で、不快感が一瞬身じろぎするのを感じていた。

それは…わたしがどういう風に言われているか、という問題ではなく…。

例えるならば、芸能人や有名人と親しいのだとアピールして、「えー、すっごーい!」と言われると、自分が凄い様に錯覚して悦に入る人物に対する不快感だ。
わたしなどは、こういうタイプの人に会うと、(別にあんたが凄い訳じゃないじゃん)とか(だから何だよ?)とか考えてしまう。

  またこんな事言ってる…。
  みっともないから、やめた方がいいよ。


  えーw別にいーじゃんwww
  それとも、真の姿がバレそうで怖いか?www


ああ…駄目だ。
わたしの言いたい事は、伝わっていない…。
けれども、久しぶりに会えたSに、いきなり文句を言い続けるのも憚られたので、それ以上は何も言わなかった。

  わー!
  なんか皆が一斉に話しかけてくるwww
  大変wwwww


これは、予想がついた事態だった。

  皆、Sさんが来るのを待ってたんだよ。

  そうなんかなw
  ただの軽いオッサンなのにwww


そう…。
何故、Sとの会話を、こんなに心待ちにしてしまうのだろう…?

わたしの場合は…やはり、わたしの全てを理解してくれるのは、この人をおいて他には居ない、と思っているから。

だとすれば、他の子たちは…?

Sと会話する子の多くは、同じゲームをしている、わたしよりはるかに歳の若い、女の子プレイヤーだった。
そしてわたしは、彼女らの話を、Sから、

  お前だから話すんだけどさ…

という前置きと共に、よく聞いていた。
誰の事を好きか。
誰と付き合っているか。
どんなデートをしたか。
今の悩みは、何か…。

Sは、他の女の子に対しても、自分を理解してくれるのはこの人だけ、と思わせている。
だから彼女たちは、Sに込み入った話を聞かせているし、Sがメッセに上がれば、喜んで話し掛けて来ている…。

ところで、このわたしの、不快感は、何だろう…?

嫉妬だろうか…?

いや、そんな単純なものでは、無い様な気がする…。



…ふと時計に目をやり、慌てた。

  あ、わたし、そろそろ寝なくちゃ。
  明日も仕事だし。


  おー、頑張ってる様だな。

  うん、何とか上手くやってるよ。

  そかそかw
  ま、俺も何とか元気だからさ。
  またゆっくり話そうぜwww


  ん、了解。そんじゃ、またね。

わたしは、もやもやとした気持ちを抱えたままサインアウトし、PCの電源を落とした。
暫く思案するが、もやもやの原因が、どうもよく解らない。

  …ま、いいか。
  Sさんが復活した事を、喜ばなくちゃね…。


そう口に出して思考を打ち切り、歯磨きをする為に、立ち上がった。





豹変する

2009/12/29(火) 03:17:24
Sが復活してから暫くして、仕事にもすっかり慣れてきた頃、元夫との間で、何か、揉め事があった。

今となっては、それが何だったか…と言うよりも、どの件だったのかが思い出せないのだけれど…ともかく、わたしは、再び非常に不安定な状態に陥っていた。

  ね、会って欲しい。
  話を聞いて欲しいの。


わたしは、Sに、懇願する。

  今は、会えない。

Sの返答は、素っ気無い。

  どうして?
  助けてよ。お願い。


  今会ったら、俺は、お前を抱いちまう。

  それでもいい!
  Sさんがそうしたいなら、
  それでもいいよ!


  俺は、お前を、そんな形で
  抱きたくないんだ。


PCの前で、落涙する日々が続いた。
メッセンジャーで会う度に、こんな会話になってしまう。

  話して、楽になって、
  思考を整理したいんなら、
  メッセで充分だろ?


そうは言うけれど、Sの返答の変化で、別の誰かとまるっきり違う話題で盛り上がっているのは、すぐに解ってしまう。
わたしがしたいのは、そんな片手間で聞かれても構わない様な話ではない…!

そう訴え続けても、Sの返事は、変わらなかった。

この時の自分の心理状態を、どう表現すれば良いのだろう…?
長い間、考えていたのだが、最近どこかのサイトで、とても的確な表現を、見付けた。


──自殺者に必要なのは、
   言葉を捻ったカッコイイ言い回しの説得ではなく、
   目の前にあってすぐにすがりつける
   即席の希望だってばっちゃが言ってた。──


最後の「ばっちゃが言ってた」の「ばっちゃ」が誰かは判らないけれども、あの時のわたしの精神状態は、まさにこれだったのだ…と、納得する事は出来た。

Sの知り合いの一件からこちら、常に直視していた、わたしの自殺願望。
これから目を逸らす為に、わたしは、Sに抱かれる事を、切実に欲していた。
それが、わたしの目の前にあって、すぐに縋り付けそうな、即席の希望に見えていた。
Sの言葉から、わたしを抱けば、Sもきっとわたしを必要とする様になる…という可能性を感じてもいたから、尚更だった。

ある時、完全に取り乱したわたしが、自殺願望を口にしてしまった時、Sが豹変した。

  お前、その話題は、
  俺のトラウマを抉るって事、
  解ってて言ってるんだろうな?


  それは…解るけど…
  それなら、教えてよ。
  Sさんは、死にたいと思った事無いの?
  あるなら、どうやってそれを克服したの?


  俺には、養うべき妻と子どもが居る。
  お前には、何も無い。
  この事実だけでも、俺のケースに当て嵌めて
  考える事などナンセンスだと解らんか?


  そんな…!
  それじゃ、俺の様に生きる事を覚えろっていう、
  あの言葉は、何だったの?


  とにかく、生きるの死ぬのいう話に付き合うのは、
  もうウンザリなんだよ。
  俺をこれ以上傷付けて、面白いか?
  勘弁してくれ。


  そうじゃない…
  そんな訳ないじゃない…
  話して楽になるなら、聞いてやるって…
  Sさん、言ってたじゃない…


  でも、生きる死ぬの話になるなら、
  俺は聞かない。聞きたくない。


  どうして!
  ここまでわたしをボロボロにしておいて、
  どうしてそんな事を言えるの!?


  はあ?
  何の話だ?
  俺が一体、お前に何をした?


  わたしの本当の姿を引き摺り出して!
  いつか抱きたいとか言って気を持たせて!
  お前は俺の奴隷だとか言って楽しんでたじゃない!


本当はこの時、「乳まで揉んでおいて」と付け加えたかったけれど、それはさすがに、あまりにも自分が惨めな様で、口に出来なかった。

  はああ?www
  そんなの、俺がそうしろと頼んだ事か?
  お前が勝手に曝け出したんだろ。
  抱きたいとか奴隷だとかも、
  あんなのは只の遊びだ。


わたしは、完全に、言葉を失った。

  大人同士だから出来る、
  ちょっとしたエロトークだろ。
  もしかして、それを真に受けてたとか言うのか?
  まさかだよなwwwww


最早反論の言葉は、出て来なかった。

  お前が勝手に勘違いしてるだけだ。
  そんなのお前の自己責任だろw
  俺の所為にされても困るwww


沈黙してしまったわたしに、Sは更に言う。

  ま、お前なんか最近ちょっとおかしいぜ。
  昔のしのぶに戻るまで、
  話すのはやめとこ。
  んじゃな。


Sは、わたしとの会話ウインドウを、閉じてしまった。

わたしは、PC前で硬直したまま、今Sに言われた言葉を反芻し、どう消化するべきか、必死で思案していた。






彷徨う

2009/12/29(火) 04:28:04
Sの豹変に打ちのめされて以降、わたしは、自分が自分で無い様な、足が地面に接地していないかの様な、不思議な感覚の中で、生きていた。

唯一の理解者が現れたと思ったのに、それはわたしの勘違いで。

わたしの嗜好を満たしてくれると思ったのに、それは単なるエロトークで。

わたしって一体、何なの?

あんな恥を晒しておいて、何をのうのうと生きているの?


それでも死ぬ訳にはいかない…という事だけを、ひたすら自分に言い聞かせ続けていた。

妹の事を、考えよう。
あの子の笑顔を、思い出そう…。

その一方で…。
自殺してしまった、あの子…。
あの子ももしかして、土壇場でこんな風に放り出されたんじゃないだろうか…。
そんな気が、してくる。
だから、発作的にお酒で薬を山ほど飲んだんじゃないだろうか…。

けれどもしもそうなら、あの子の死は、わたしにも責任があるかも知れない。
Sに、格好の逃げる材料を、提供してしまったから。
ただの構ってちゃんなら放っとけば?と、言ってしまったから…。

職場では、何事も無かった様に振る舞い、冗談を言われればケラケラと笑い、仕事を捌いていく。
それでも、事務所に一人きりになり、喫煙所でぼんやり煙草を吸っている時などに、涙が止まらなくなって、慌てたりする。

夜を、どう消費するのかが、問題だ。
最早、PCの前で過ごす事は、出来そうにも無い。
メッセンジャーを見ると、心臓が苦しくなる。
だから、車に乗って、フラフラとその辺を彷徨う。

スピードを上げる。
凍結した路面にタイヤが滑り、一瞬ヒヤリとする。
事故死したらどうしよう。
遺体確認は、Sにして貰おうか。
どんな顔をするかな。
想像して、大笑いしてみたり、その直後に泣き出したりしながら、冬の田舎道を走り回る…。


そんなある夜の事、いつもの様に、車でフラフラと無目的にドライブしていたら、対向車線の路上に何かが横たわっているのを見つけた。
スピードを緩めながら目をやる。
狐だった。
撥ねられてしまったのだろう。
狐は、車を避けるのが上手い。
それを撥ねるとは、加害者は余程スピードを出していたに違いない。

通り過ぎた後、何気なくUターンして、元来た道を走る。
死体を避けながら見ると、さっき見た時と比べて、狐は少し潰れていた。
避け切れなかった車に、踏まれたのだろう。

暫く走って、再びUターンし、狐のところに戻る。
今度は、狐の頭が破裂して原型を失い、路上は紅い花が咲いた様になっていた。

ふとバックミラーを見ると、はるか後方を大型トラックが走っているのが見えた。
適当な場所で、Uターンする。
案の定、狐は、更に形を変えていた。

対向車とすれ違ったら、Uターンして、狐を見に行く。

Uターン。
Uターン。
Uターン…。

結局この夜わたしは、わたし以外の車によって、狐が完全な肉片となってしまうまで、もとが何の動物だったか判別出来なくなってしまうまで、何度も何度もUターンしては、狐の死体を見に行っていた。


そして、この夜以降、目的地の無いドライブにはあまり出掛けなくなった。
その代わり、所謂グロ画像やグロ動画を求めて、ネットの中を彷徨う様になった。






見付ける

2009/12/29(火) 05:49:49
どういう心理状態の為せる技なのか、それは解らない。
けれども何故か、人の無残な死に様を見ると、わたしの心は落ち着き、安らぎの様な感情を覚える様になっていった。

もともと、グロテスクなものに対する親和性は、高かったと思う。
ホラー映画やホラー小説は、大好きだった。
実際の人間の死を、動画などで見る趣味は無かったのだが、皮肉な事に、その機会をわたしに提供したのは、Sだった。
Sは、会話の合い間に、グロ動画やエロ画像を突然見せて、わたしの反応を楽しむ…という様な事をよくやっていた。


交通事故の話をしていた時だっただろうか。
Sが、とある動画のURLを送ってきた。

  ちーとキツいけど、見られるなら見てみ。

動画は、美しい少女のポートレート写真から始まる。
英語で、「私は○○。とても幸せだった」という様なテロップが流れる。
「ある日、ドライブしていたら…」と、無残にクラッシュした車の画像が流れ、その後に、先の写真と同一人物とは思えぬ程に損傷した遺体の顔が映る。
「私、死んじゃった…」というテロップ。
その後はおそらく、死体置き場で解剖でもされたのだろう。
ハードロックのBGMに乗って、そこの職員と思しき連中に、遺体が蹂躙される様子が映される。
「いや、やめて…!」「ああ、彼の指が…!」というテロップと共に、少女のヴァギナに職員の中指が挿入されている。
そうかと思えば、眼球を摘出し、口に咥えさせたり、クリトリスの上に置いたりしており、この職員たちの正気が疑われるばかりの状態となっていた。

  うひゃあ…

と思わず入力すると、Sからすかさず返答があった。

  な、ひどいだろう?

  うん、ひどいね…。

  こんなに綺麗だった子が、
  死んだらこんなになっちまうんだぜ。
  むごいよなぁ…。
  お前も、気を付けて運転しろよな。
  こんなになりたくないだろう?


わたしは、驚いた。

  え、そこ?そこなの?

  え、何が?

  これ…遺族に見せたら、憤死ものだよ。
  わたしがひどいなって言ったのは、そこ。


  あー…そうなんかwww
  言われてみれば確かにwww


  はあ?
  今までそこは、何とも思ってなかったの!?
  …ま…ひどいなーって言いながら観る
  わたしらの様な不謹慎な人間がいるから、
  こういう画像をわざわざ撮るんでしょうけどね。


  まーなwww

この一件は、わたしとSの感性が、余りにも違う事に驚いた出来事として、忘れる事が出来ない。


Sは、人が殺される動画をわたしに見せては、しきりに「可哀想になぁ」を連発していた。
そして、特に感情を動かされた様子を見せないわたしの事を、「お前、変だわwww」と笑っていた。

確かに、可哀想…とか、怖い…とかいう感想を持てないわたしは、常軌を逸しているのだろう。
けれども、突然わたしにエグい動画や画像を見せて、「これ、可哀想だろう?」と聞いてくるSも、わたしからすれば充分に不気味だった。
可哀想、と感じる為に、敢えてそういうものを好んで見ている様な印象を、受けていたからだと思う。



可哀想…どころか、安らぎまで感じてしまうわたしは、一体どうなってしまったのだろう…?
そう思いながらも、グロサイト巡りをやめられない日々が、続く。

グロサイトは、やはり海外サイトばかりである。
そして、グロサイトに必ず見られるのが、エロサイトへのリンクである。
サイト巡りをしている内に、エロサイトのリンクを踏んでしまい、舌打ちをしながら元のサイトに戻る…と言う事を繰り返していたわたしだったが、ある日気紛れに、飛ばされた先のエロ動画が無料配信なのをいい事に、そのままあれこれと観覧していた。
眺めている内に、Sの言葉で霧散していた性欲が、復活する兆しを感じていた。
そこでも、何度も踏んでしまうURLがあった。
出会い系サイトの様だった。
すぐにブラウザを閉じて無視していたわたしだったが、何度目かの時に、またこのサイトかよ…と、これも気紛れに、内容に目を通してみた。
運営者は海外の様だったが、メンバーには日本人も居る様だった。
こんな出会い系に登録している人って、どんな人なんだろう…という興味を覚え、自分もメンバーになってみた。

そこで見付けたのが、Tさん…現在の、彼だった。






そして、今

2009/12/29(火) 07:34:47
こうして、一連の流れは、このブログの一番最初の記事へと、結びついてゆく。
最初の方の記事を自分で読み返してみると、わたしはまだまだ、Sに気持ちが残っている様子だ。
けれどもそれも、今にして思えば、Sを憎みたくない…という一心で、己に一生懸命、言い聞かせていたのもあるだろうと思う。


そして、現在。
彼との付き合いは、もうすぐ2年になろうとしている。
わたしは、自分の住む場所がどうなるか判らず、仕事も辞めて、失業者として暮らしている。
けれども何故か、心の中には、光が満ち溢れている。
自分が、どういう風に生きていきたいか、それを見付ける事が出来たからだと思う。


職を失って暫くしてから、彼が、わたしに訊ねた。
わたしの家で、対戦ゲームをして遊んでいる最中だった。

  お前、今でも死にたい、とか
  考える事あるのか?


  ん…?
  そう言えば、最近はあんまりないかな…。
  たまーに、ふと考える事もあるけどね。


  そうか。
  もしもお前、自殺するなら、
  今から言う事は、必ず守って貰う。


  …なに?

  まず、携帯からもPCからも、
  俺に関するデータを完全に消去する事。
  俺んとこに警察が来たりとか、
  そういうのは迷惑だ。


  …ん、わかった。

  それから、これが一番大事なんだが。

  うん。

  PS3を、俺んとこに持って来ておく事!

わたしは、一瞬絶句した後、爆笑した。
少し離れた場所で寝ていた犬が飛び起き、尻尾をブンブンと振りまくりながら、彼とわたしの間にドカンと割り込んで来た。
こいつは、わたしたちが笑っていると、自分もとても楽しい気分になる様で、こうして無理やり参加しようとするのだ。
お陰で、並んで床に座っていたわたしたちは、軽く吹っ飛ばされて転がる。

  だって死ぬんならもうゲーム要らねえだろうが!
  俺が、お前の分も、たっぷりと
  楽しんでやるからよ!


彼が、体勢を立て直しながら、言う。
わたしは、犬に顔面をベロベロ舐められながら、笑い続ける。
そして、答えた。

  うん、わかった。
  ソフトも忘れずに、一緒に持って行くね!