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嗅覚

2008/10/27(月) 10:10:29
彼は、わたしを抱き寄せ、匂いを嗅ぐ。
逢うと、まずは必ずそうする。
まるで、犬の様だ。

わたしは、微かに緊張し、息を潜めて、彼の為すがままになる。
犬同士の挨拶は、優位に立つ犬が最初に下位の犬の匂いを嗅ぐ。
下位の犬は、上位の犬が思う存分匂うのを、おとなしく待たなければならない。
二人して、まさしく犬の様だ。

そうやって匂うと、わたしが彼の言いつけ通り、規則正しく生活していたか、食べるものに気を配って健康的に過ごしていたか、判るのだそうだ。


  んっ?

その日、彼はわたしを匂った後、ふと首を傾げた。

  いつもと匂いが違う…。

  あ…歯磨き粉、変えたけど…。

  そうか、それでか。
  わかった。


そう言って彼は、身体を離した。
頬を叩かれたり贅肉を抓られたりしなかったという事は、彼にとって不快な匂い…即ち、わたしの不健康さを感じる匂いはしなかったという事だった。

  …まさか…歯磨き粉が変わっただけで、
  わたしの匂いが変わるの?
  それがわかるの?


  ああ。

  ええーっ?
  なんで?


歯磨きをしたのは、家を出る前。
その後、煙草も吸ったしコーヒーも飲んでいる。
歯磨き粉の匂いが、残っているとは思えなかった。

  わかるさ。
  お前の匂いは覚えてるからな。


  ………殆どケモノだね。

彼は、声を上げて笑った。

  本能のままに生きてるからな。

わたしは、呆然として、ぽかんと口を開けて、彼を見つめていた。

彼の嗅覚の前には、どんな嘘もごまかしもきかない…。
そのことを、強く、再認識した。




ホテルにて

2008/12/24(水) 22:29:36
  お前…完全に淫獣モードだな。

その日の朝の、彼からのメールの文句。

逢いに行く前に、これから家を出る旨連絡し、ブログを更新した事も伝えた。

抱かれたい。
責められたい。
お願い…。

ブログのエントリーと、メールに込められた、わたしの懇願。
現在の彼にとっては、途方もない我儘になる。
醜く肥え太っておいて『お願い』などとは、厚かましいにも程があると、理解もしている。
それでも、欲望は最早、自分ではどうしようもないところまで、膨れ上がっていた。

彼は、わたしの願いを、聞き入れてくれた。

ホテルに入り、上着を脱いで掛けたりお風呂に湯を張ったりと、慌しいひと時を過ごす。
室内に流れていたクリスマス・ソングが、ふっと途絶えた。
彼が、有線の電源を切ったのだ。
行為の間BGMが流れているのを、彼は好まないし、わたしも好きではない。
静寂の中でじっと立ったまま、彼の動作を見守る。
彼は、わたしの前に立ち止まり、ゆったりとした笑みを浮かべた。
それを合図の様に、わたしは彼にしがみ付き、唇を求める。
彼もわたしを抱き締め、舌を絡ませてくる。
彼の腕が、わたしの背中を、腰を、お尻を撫で回す。
その力強い感触に、わたしの中の芯が蕩け、溜息となって零れ落ちる。

  ダイエット、頑張ってるじゃねえか。
  感触でも判るぞ…。


低く、彼が囁く。

  ほんとう?
  嬉しい…。


わたしも、微笑みながら囁き返す。
何度も何度も唇を貪り合いながら、わたしの衣服は剥ぎ取られていく。
彼が、背後に回った。
後ろから乳房を鷲掴みにし、激しく揉みしだく。

  あぁ…あ…ぁ…

呼吸が、激しくなる。
脳髄が、痺れる。
欲しがる猫の様に、腰をくねらせ突き出してしまうのを、とめる事が出来ない。
再び彼が前に回り、ジーパンを脱ぎ捨てた。
待ち侘びていたわたしは、すぐに跪き、彼の下着を脱がせるなり、飛び出したペニスを口に含んだ。

欲しかった。
これが、欲しくて、しょうがなかった。

想いの丈を込めて、これからわたしを責め立てる凶器を、舌と唇を駆使して丹念に愛撫する。
硬さも大きさも増していくそれを、喉の奥まで導こうと足掻く。
彼の手が、わたしの頭を掴んだ。
力が加わる。
わたしの意志とは関係なく、ペニスが奥深くに捻じ込まれていく。

がっ…ごごぉっ…

息が詰まり、異様な音が、喉から漏れる。
彼が、抽送を始めたが、そのストロークはとても遠慮がちだった。
わたしの脳の中に、複数の声がこだまする。
苦しい、苦しい、苦しい、苦しい……
嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい……
もっと、もっと、もっと、もっと……
いきなり彼が、ずぼっと無造作にペニスを引き抜いた。
突然放り出されたわたしは、その瞬間、嫌な感触があったのに気付いていた。

  歯…当たらなかった?
  痛くなかった?


呼吸を整え、涙と涎を拭いながら、彼に訊ねる。

  いや、大丈夫。

言いながら彼は、わたしを立たせてベッドに突き飛ばすと、わたしの下着を剥ぎ取った。




統合

2008/12/29(月) 17:15:27
彼のペニスが、わたしの中に突き入れられる。
そこは、既に充分に潤い、彼をするりと受け入れた。
深く深く侵入されて、わたしの口から歓喜が零れる。
背中が反り返り、早くもピクピクと痙攣し始める。
そんなわたしを押さえ込み、力強い抽送が始まった。

真上から降り注ぐのは、感情の窺い知れない、鉱物的な光を湛えた瞳。
その冷たさが、わたしの官能に油を注ぎ、わたしは、より一層燃え上がる快楽に身を焦がす。
突かれながらも、唇が欲しくなる。
すると、それを読んだかの様に、彼がわたしに唇を重ねる。
舌を絡ませ合い、啄ばみ合い、互いの唾液に塗れた唇を離す。

彼が上体を起こし、Tシャツを脱いで、かなぐり捨てた。
かすかに汗ばんだ身体を、再びわたしの上に重ねる。
彼の、年齢を感じさせないすべすべとした肌に、わたしは両の掌を滑らせる。
滑らせた掌は、お尻で止まる。
もっと、強く…
もっと、深く…
求めるわたしの腰が、彼の抽送に合わせて突き上げられる。

わたしの身体の形を、彼が変える。
その度に、新しい快楽の波がわたしをさらっていく。

ふと、わたしの中で誰かが囁いた。
今、ここで、彼がわたしに鞭を使ったら…?
蝋燭の蝋が、乳房に垂らされたら…?
首を絞められて、窒息しかかったら…?
それは、どんな感じだろう?
苦痛?
快楽?
…きっと、両方。
欲しい…
今まで味わった事のない感覚が、欲しい…

冷たい声が、答える。
一体どこまで欲が深いの?
この上まだ、淫らで異常な刺激が欲しいというの?

顔に、ぽたぽたと彼の汗が落ちてきた。
拡散し、様々な声を響かせていたわたしの意識が、ふっと焦点を結ぶ。
彼の瞳は、相変わらず黒曜石の光を放っている。
唇の上に落ちた汗を、舌を出して舐め取る。

欲しい…もっと欲しい。
淫らだろうが、異常だろうが、誰に遠慮する必要があるのか。
誰に迷惑をかけるというのか。
彼は、わたしを、否定しない。
わたしの欲望を、受け入れてくれる。
自分の欲望を、わたしに叩き込んでくれる。
彼が、居れば…。

彼が体勢を変える。
今までとは違った刺激、違った快楽に、わたしは悲鳴を上げる。
気持ち、いい…!
身悶え、頭を左右に振りたくる。
手が、彼の身体の上を、ベッドのシーツの上を、滅茶苦茶に暴れまわる。

その時、とても不思議な感覚が、わたしを襲った。
わたしの意識の中で、ぼそぼそと囁いていたたくさんの声が、一斉に唱和するかの様に、ひとつの言葉を叫び始める。
気持ちいい…!
気持ち…いい…っ!
ピシッ…という音が、した。
それは、生まれて初めて聞く音だった。
物心ついてから、常に感じていた、ブレている自分…。
写りの悪いブラウン管テレビの、ゴーストの様だった自分…。
このゴーストが、あるべきところにぴったりと、音を立てて嵌った…。
そんな感覚だった。
やっと、わたしの意志が、ひとつに統合された…。
彼のもたらす、全ての快楽を味わい尽くしたい、という意思に。
生きている。
わたしは、こんなにも悦びながら、生きている。
涙が、溢れそうに、なった。




もう一人

2008/12/29(月) 21:47:42
低く呻き声を上げた彼が、ぐったりとわたしの上に覆い被さった。
わたしは、その背中を精一杯の力で、抱き締める。
荒い呼吸を整えながら、まだ凶暴な硬さを保ったままのペニスを、わたしの中から抜いてしまう。

  一発目から飛ばし過ぎだな。

彼が、苦笑交じりに呟く。
手を伸ばしてタオルを取り、互いの汗を拭き合う。

わたしは、さっき脳裏を過ぎった願望を、口にしてみた。

  ねえ…突かれてる時に、
  鞭とか蝋燭とか、欲しいな…。


  突いてる時にか。

彼は、ちょっと困惑した。

  突いてる時は、そっちに集中してえんだよな。

  …そっか。

何となく、予想出来た返答だった。
彼は、何かひとつの事をする時、それに全精力を注ぎ込みたいというタイプで、だから、行為をしながら撮影する…というような事すら、気が散ると言ってやりたがらない。

  それやろうと思ったら、もう一人要るな。

  え?

彼が、至極当たり前の事の様に言う。

  誰かにお前を突かせて、俺が鞭とかを使う。
  …いいなぁ、それ。
  別の男にやられて悶えてるお前も見たいしな。


ニヤリと、邪な笑みを浮かべる。

  お前、誰かそういう男、見付けて来いよ。

  わたしが他の男とやっても、平気?

  おう。
  寧ろ、やれと言いたい。
  そんなもん見せられたら、
  俺のチンポはきっとギンギンだぞ。


彼は、とても嬉しそうに言った。
わたしも、そんなわたしを彼がどんな表情で観てくれるのか、見てみたいと思う。

  でも、探せって言っても、
  どこで探せばいいのかな。
  …ハプ・バーとか?


  ああ、あれも一回行ってみてえんだけどな。

  Tさん、お酒飲めない癖に。

わたしは、かつては酒豪と呼ばれた事もあるが、彼は話を聞く限り、下戸と言ってもいい程、お酒には弱い様だった。
そのわたしも、元夫と別居し、睡眠薬を処方される様になって以来、晩酌の習慣は絶えて久しい。

  それより切実なのはだな…。

  お金が、無い。

  そこだ。

仰向けになった彼が、呟く様に言う。

  世の中広しと言えども、
  金が無いからSM出来ねえSMカップルなんて、
  俺らくらいのもんじゃねえ?


  ほんと、そうかもね。
  他の人のブログとか見てると、
  いろいろやってるけど、あれって結局
  お金あるから出来るんだなぁって思うもん。


  だよな。

暫しの沈黙の後、彼が、ぼそりと言った。

  お前も、金持ちのサディスト、探すか?

  嫌。

思ったよりも、強い言い方に、なってしまった。

  わたしは、Tさんに責められたいの。
  Tさんと一緒に、愉しみたいの。


それにわたしは、経済的に恵まれた生活も経験がある。
思えば、その生活を維持する為に、わたしはどれだけ、自分を殺し続けていた事だろう。
そして、その経済力を失った時、相手にはそれしか魅力が無かったと気付いた時の、何とも表現し難い空虚感。
更には、そんなものを相手の魅力に数え上げていた、自分に対する嫌悪感…。

それからすると、経済力には全く関係なく、精神的肉体的にわたしを満たしてくれる彼の存在は、どれほど大事である事か。
打算なく、純粋に彼だけを求める事が出来る今を、わたしがどれほど幸せに感じている事か。

  まあ、もう一人って話は、
  その内機会があればって事にしておこう。


  ああ。
  よし、風呂。


彼が勢いよく起き上がり、ベッドから降りた。

わたしは心の中で、先の言葉に補足を入れる。

  それに、この先、まだ叶えたい欲望があるって事は、
  それだけ日々の生活に対するモチベーションも
  上がるってものだし…ね。
  目標があるって、楽しいじゃないの。


そして、こんな考え方を教えてくれたのは、他ならぬ彼である事に気付いて、微笑んだ。




邪魔者

2008/12/30(火) 00:06:57
湯船に、のんびりと身体を伸ばす彼。
その足の間に、わたしも身体を滑り込ませる。
他愛もない雑談で、緩やかなひと時を過ごしている時、ふと気付く。
鬱陶しく思いながらも、既に馴染み始めていた感覚が、消えている。
手を、左目の下に当てる。

  …痙攣、とまってる…。

  痙攣?どこが。

  うん、ここ1週間くらい、ずっと瞼がピクピクしてたの。
  もう鬱陶しくてさ。
  それほど目を酷使した訳でもなかったし、
  ダイエットで栄養不足になった所為かとも思ってたけど…
  何かのストレスだったのかも。
  完全に止まってる…。


先ほどの不思議な感覚といい、ストレス過多の兆候が、セックスでおさまるとは…。
わたしは、セックス依存症にでもなりかけているのだろうか。
ふとそんな不安が兆す。

けれど、それでも別に良いではないか。
彼は、貞淑な女など求めてはいない。
本能のままに快楽に溺れる、淫乱な牝犬を、欲している。
そして更に、彼自身の旺盛過ぎる性欲を持て余し、欲望のままに突き入れ、責め立てられる女を求めているのだ。
そんな彼がわたしの傍に居てくれる間は、セックス依存症であっても構わない、と、思う。

湯船の中で、手を使って彼のペニスを弄ぶ。
こうして、完全に寛いでいる彼自身の弾力を愉しむのも、大好きだ。
彼が、腰を浮かせて、ペニスを水面に出す。
わたしは、それを口に含んで、優しく扱く。
亀頭を吸引して、ちゅぽん、と離す。
繰り返す。

  ああ、それ…それが気持ちいい。

  ん…これ?

嬉しくなって、もっと繰り返す。


ふと、以前彼が、三穴制覇したい、と言っていた事を思い出す。

  口と、まんことアナル三箇所で出すんだ。
  1回のセックスで、だぞ、当たり前だろう。
  1回で3発、でなきゃ制覇とは言えん。
  出したら、そこには旗を立てる。
  お子様ランチの旗だ。
  制覇した証だよ。
  アナルの開発もだが、それよりお前、
  フェラチオ特訓しておけよ。
  口で逝かせるには、俺のチンポはしぶといぞ。


口だけで彼を逝かせるには、どれだけ特訓しなければならないか、ぞっとしながら、

  それ、やるんなら、直前1週間くらいは
  オナニーしないでいてよね…


と頼んだ事を、思い出す。


次第に漲って来る彼のペニスを、喉の奥まで飲み込む。
素早く頭を上に動かし、唇を滑らせる。
お湯が、ちゃぷちゃぷと眠たげな音を立てる。
口も、性器なのだと思う。
でなければ、しゃぶっているだけで、こんなに気持ち良くなる筈がない。
昂ぶってくる。
昂ぶりを、唇にそのまま乗せて、頭を激しく上下させる。
首を使って角度を変えながら、夢中で動かす。

また、引っ掛かる様な違和感を覚え、我に返る。

  ごめん、歯が当たった…。

  いや、大丈夫。

  ほんとに…?
  わたし、八重歯があるから…。


過去の男には、よく『お前は歯が当たって痛い』と言われていた。
それから考えると、わたしが『当たった』と認識出来る程の感触にも痛みを感じないなど、彼のペニスはどれだけ頑丈なんだ…と、驚嘆すら覚える。
それと同時に…。
今まで長年付き合ってきて、その存在にはすっかり慣れていた八重歯を、初めて非常に疎ましく感じた。
このままでは、情欲の赴くままにフェラチオが出来ない。
彼ではないけれど、それこそ『気が散る』。
邪魔だ。
…抜いてしまおうか…。
そう思いながらわたしは、八重歯を、舌先でそっと撫でた。




怪我

2009/01/27(火) 13:16:06
その日わたしは、部屋の主の居ない彼の家で、眠っていた。

彼の仕事は、朝が早い。
暗いうちから家を出て、数時間働いた後、夜が明ける頃に帰って来る。
彼の家に泊まった時、わたしは、彼が出掛ける支度をする気配で目を覚まして見送った後、もう一度寝直すのが常だった。

やがて、彼が、仕事を終えて帰って来た。
気配で目覚めたわたしは、ベッドを降りて、一目散に彼に駆け寄り抱きつこうとした。
足に激痛が走り、床に倒れ伏した。

  あっ…!

  馬鹿か、お前は…。

彼の、呆れた様な声が、頭上から降って来る。
わたしの足には、寝る前にわたしが床に置いた置物の尖った部分が、深々と突き刺さっていた。

  自分で置いたモンを自分で踏むか普通…。
  しかもそんな勢い良く。
  あれ危ねえかも、と思ったけど、
  声かける暇もありゃしねえ。


彼が帰って来たと思った瞬間、わたしの頭の中には、彼に抱きつく事しかなかったのだ。
他の事は思考から消えているし、足元になど、全く注意を払っていない。
刺さったものを抜きながらそう言うと、彼は益々呆れ果てる。

  だからお前は、よくぶつかったり転んだりしてるんだな。
  どこまでも馬鹿っぽい奴だ。


ワンテンポ遅れて、傷口から血が滴り落ち始める。
彼が、わたしの傍に座り込み、ティッシュで血を拭いながら傷口を観察する。

  うわ~、結構深いな…。
  鋭利なモン踏んだ訳じゃねえから、
  傷口もギザギザだ…。


言いながら、傷口を指で押したり広げたりする。

  痛い、Tさん、痛いよ…。

  そりゃ痛いだろう。
  これからもっと痛くなるぞ。
  今はまだ、お前寝惚けているからな。
  はっきり目が覚めたら、もっともっと痛みを感じる…。


言いながら彼は、傷と血を眺めている。
うっすらと微笑んで、とても嬉しそうだ。

今までわたしが知る男性というものは、他人の怪我にも血にも弱かった。
顔を顰めて目を逸らし、早くその傷を見えない様にして欲しいと言わんばかりだった。
こんな風に、まじまじと眺める人は、初めてだ。
今更だけど、やっぱり随分変わった人なんだな…。
そんな事を考えながらわたしは、自分の傷ではなく、彼の表情を見つめていた。

やがて彼は立ち上がり、救急箱を取って来ると、わたしをベッドに座らせ、傷の手当を始める。

  お前って、血の味まで馬鹿っぽいな。

  えっ、舐めたの?
  いつの間に?
  馬鹿っぽい血の味ってどんなよ…。


  何か…ちょっと薄い味だった。
  貧血気味か?


彼は一体、誰の血の味と比較しているのだろう?

丁寧に手当してくれた後、わたしの頬をパチンと叩く。

  何で仕事から帰って一発目がお前の手当だ?

  ごめんなさい…。
  これじゃあ今日は、犬の散歩は無理ね…。


その日は、この後わたしの家に移動して、犬の散歩をしたりゲームをしたりして寛ぐ予定だった。

  何を言うか。散歩は行くぞ。
  ○○(犬の名)も、俺と遊ぶのを
  楽しみにしているだろう。
  お前もちゃんと着いて来させる。
  どれだけ痛かろうが、
  足を引き摺ろうが、
  楽なんてさせんぞ。
  ふふっ…


彼の声は、久しく聞く事のなかった残酷な愉悦を含んで、濁っていた。
わたしの背筋を、ぞくりと冷たいものが走る。
それは決して嫌な感触ではなく、寧ろ甘美にも感じられた。

犬の散歩では、たっぷり1時間半、歩かされた。




点検の時

2009/03/10(火) 22:50:48
  お前、本当に痩せたな。

わたしの服を脱がせ、身体のあちこちを撫でさすりながら、嬉しそうに、彼が言う。

けれど、体重だけから言うと、彼に出逢った頃より少し軽いという程度だ。

  ああ…そのくらいかな。
  だが、乳の形は、あの頃よりもいいぞ。


言いながら乳房を握り締め、揉みしだき、食らい付いて乳首を舌で転がす。
思わずのけぞったわたしの口から、甘い喘ぎ声が漏れる。
歯を立てられて、小さく悲鳴を上げる。

  そう言えば、俺の隣な。
  先週、引っ越してったんだ。


彼の部屋は、角部屋だ。

  え、それじゃ…

  ああ、ちょっとくらい声を出しても
  大丈夫だろう。


言いながら彼は、ベッドに寝転がって、下半身を露出する。
続いてベッドに上がり、彼の股間に蹲るわたしは、もう既に全裸だ。
彼のペニスを口に含み、唇をすぼめて吸い上げ、チュポッと音をさせて口から抜く。
もう一度根元まで咥え込み、繰り返す。
たちまちのうちに、彼のペニスが熱を持ち、膨張していく。
陰嚢の下からペニスの先端まで、柔らかいソフトクリームを味わう様に舌を這わせ、先端部で下を尖らせ、チロチロと蛇の様に動かす。
もう一度根元まで口に含み、しゃぶり上げる。
繰り返す度に、わたしの喉の奥の圧迫感が、増していく。
それでもわたしは、何とか彼を根元まで飲み込もうとする。
噎せ返り、口の中に粘り気のある唾液が満ちる。
頭を動かす速度を、少しずつ上げていく。
根元を握った指に、ペニスを伝って滴り落ちた唾液が絡み、潤滑油の役割を果たす。
八重歯を抜いたわたしの意識は、もう余計な事に煩わされない。
唇と舌と指で、思う存分彼を扱き、愛撫する事に専念できる。
それがとても嬉しくて、わたしは夢中でフェラチオに没頭する。
そうしながら、彼のペニスはここまで硬かっただろうか…と、ちょっと目を瞠る。
少なくとも、ここ久しくこんな状態になった事は、ないのではないか…。

彼がわたしの髪を掴み、起き上がる。
そのまま無造作に後ろに突き飛ばされるから、わたしは仰向けになり、足を広げて彼を待つ。
彼がのしかかって来て、ヴァギナに先端が挿れられる。

  今日は、じっくり責めてやる…

低く濁った声で、彼が囁く。
その言葉通り、ゆっくり、ゆっくり、ペニスが前進する。
ヴァギナに、めり込んでくる。

  あ…あ…ぁ…

わたしの声が、どんどん高くか細くなっていく。
背中に力が入り、ビクビクと震えてしまう。
やっと彼のペニスが全てわたしの中に挿れられ、ぐいっと彼が腰を押し付けた時、わたしは、溜め息の様な悲鳴と共に、絶頂に達していた…。




ダイエットの副産物

2009/03/20(金) 21:12:23
ゆっくり、ゆっくりと、彼の抽送が続く。
凶悪な程の硬さと熱さが、わたしの中をゴリゴリと削る。
わたしの身体は、わたしの制御下から完全に逸脱し、痙攣と、緊張と、弛緩を繰り返す。

  絡む…。

彼が、小さく呟いた。

  え…?

  運動している効果だろう。
  締まりが良くなって、
  俺のチンポに絡み付いてくる…。


ダイエットに、そんな付加価値があるとは知らなかった。
運動しているとは言え、今はまだ、しないよりはマシ、程度の運動しか出来ていない。
本格的に身体を動かす様にして、もっと筋肉をつけたなら、彼にどれほど悦んで貰えるだろうか。

彼が、抽送を止め、大きく息をつく。

  逝っちまいそうだ…。

  逝って。
  たくさん頂戴…。


前に彼がわたしの中に出したのは、いつだったか…。
ちょっと思案しただけでは思い出せぬほど、前の事だ。

彼は、逝くのは好きじゃないと言うけれど、わたしは、中で逝かれるのが好きだ。
ヴァギナに意識を集中して、ペニスが迸らせながら、ドクン、ドクン、と脈打つのを感じるのが、大好きだ。
思えば、元々中に出されるのが好きだから、彼の玩具になると決めた時、躊躇いもせず避妊リングを入れたのかも知れない。

けれども、彼は、すぐに抽送を再開し始めた。
その表情から、逝く気は無い事と、既に波を乗り越えてしまった事が窺われ、わたしは少しがっかりする。
微かな落胆はすぐに、彼からもたらされる快楽に押し流され、わたしは再び、彼の鉱物的な瞳の色を浴びながら、身悶える。

彼が、唇を重ねてくる。
愛ゆえの行為ではないだろう。
単に、わたしの口を塞ぎ、漏れ出る喘ぎ声を封じようとしているに過ぎないだろう。
それでも、彼に貫かれながら受ける口づけは、わたしの意識を益々白濁させ、更なる昂ぶりにわたしを導く。

彼が、大きく体勢を変えた。
その途端、未知の感覚が、わたしの身体を縦に引き裂いた。
わたしは、目を見開いた。
喉が、引き攣った。




効果

2009/03/26(木) 00:46:33
彼が、わたしの両足を肩に担いだまま、両手を私の肩の上についた。
わたしの身体は、完全にふたつに折り畳まれた状態だ。
その体勢で、わたしのヴァギナに上から突き立てる。
深く。
深く…。

男性上位の正常位で、そんなに奥まで突かれたのは、初めてだった。
彼が腰を押し付ける度に、わたしの奥底が、突き破られそうになる。
鈍痛が、走る。
わたしの身体を、電撃の様に縦に駆け抜け、脳に届いた時にはその鈍痛は、快感へと変換されている。
理性は、完全に霧散する。
わたしは、只の女性器になって、彼のペニスを、彼の抽送を、貪るだけの存在になる。
彼は、ゆっくりと、けれども力強く、抽送を続ける。
まるで、わたしの奥底を確認しながら、押し込もうとしているかの様だ。
狂乱するわたしを、無表情に見下ろしながら、黙々とわたしを穿ち続ける。
凄い、凄い、凄い…。
痛い、痛い、痛い…。
気持ち、いい、いい、いい…。
それしか考える事が、出来なかった。

突然彼が、くすっと笑った。
動きを止める。

  お前、いくら何でも…

そう呟くと、視線を上げて周囲を見回す。
再びわたしに視線を戻すと同時に、わたしの口にタオルを押し込む。
自分が、いつの間にかかなりの声を出していた事を、知る。
その時に、こんな体勢で貫かれ続けながら、身体のどこにも無理を感じていない事に気付いた。
以前のわたしなら、とっくに音を上げている。
これは柔軟運動の効果だろうか…と、ぼんやりと考える。

彼の顔が、すぅっと無表情になった。
瞳が、黒曜石になる。
あ、来る、と思うや否や、奥深い処にペニスが突き入れられる。
わたしは、力の限りタオルを噛み締めた。
喉が、反り返り、背筋が、軋んだ。