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歯...(2)

2008/12/30(火) 01:37:53
歯に関することで、わたしにとってもうひとつ不幸だったのは、遺伝的に、歯並びの悪くなる要因をも持っていた事だ。

母方に似れば、歯並びは良い代わりに、がっしりとした顎になり、エラが張った顔かたちになった事だろう。
わたしは、エラの張った顔つきには、ならなかった。
父方の、細い顎の骨を、受け継いだのだ。
歯の形状は、母方を受け継ぎながら。
歯の大きさに対して、それを並べる顎の骨が小さい。
だから、自然歯並びは悪くなった。
一番酷かったのは、前歯が1本、完全に歯列の内側に生えている事だった。

母は、わたしの歯を見る度に、眉を顰めて言った。
『汚い歯並び。
 お父さんに似たのねぇ』

この八重歯は、噛み合う歯ではないから、変な場所に生えていても舌を噛むという事は、無い。
完全に内側に生えている為、ぱっと見られただけでは、八重歯があるとも気付かれない。
実害は無いという事で、歯列矯正をする程の事も無い、と言われていた。
『それに、矯正ってすっごくお金かかるしね。
 ものを噛んで食べられるんなら充分よ』
奥歯が片側、全く噛み合わない為、ものを噛んで食べるにも不充分だった事を、母親は、今でもおそらく知らない。
歯医者に対する恐怖心から、徹底的に歯医者を忌避する様になったわたしは、結婚した後になるまで、自分の歯並びについての詳しい説明を受けた事が、無かったからだ。

それでも、時に、虫歯の激痛を堪え切れなくなって駆け込む歯医者では、必ずこの八重歯を抜いてしまおう、と言われた。
放置していればどんな弊害があるか、説明される。
曰く、歯周病になりやすい。
曰く、空気が漏れる事で、言葉の発音が不明瞭になる。
『嫌です。抜きません』
わたしが拒否すると、歯医者たちは揃って、不審げな表情になった。
『どうしてですか?
 残していても、何もいい事ないですよ』
いい事は、ある。
あの時の恐怖をそのまま再現すると思われる、虫歯でも親不知でもない、健康な歯の抜歯。
それを味わわないで済む事それだけで、抜歯しないメリットは、わたしにとって充分だったのだ。
例え、その当時の男たちに、口でされると八重歯が当たる、と、文句を言われていても。


口を開けて、彼に、わたしの八重歯を見せる。

  何だそれ!?
  すげぇとこに歯があるな…。


彼が、吃驚して声を上げる。
わたしも、少し吃驚する。
今まで散々口づけを交わし、わたしの口腔を余すところ無く舌で愛撫しながら、この歯には気付いていなかったのか。

  うん…。
  Tさんのを口ですると、この歯が
  時々当たってしまうのよね。
  邪魔だから、抜いちゃおうかと思うんだけど。


彼は、それに対しては、何もコメントしなかった。


『あなたみたいに怖がられると、こっちも凄く怖いんですよ。
 そこまで緊張されると、痛いところに触れた途端、
 反射的に私の手に噛み付かれるんじゃないかって』

かつて、そうわたしを詰った歯医者が、居た。
歯医者さんにはそんな恐怖があるのか…と驚き、申し訳なく思いながらも、流れ落ちる脂汗と手の震えを、どうにも出来なかった。
そんなわたしが…八重歯の抜歯を検討するなんて。
それも、フェラチオやイラマチオを、思う存分堪能したい、という理由で。

そんなに、彼に溺れたいか。
そこまで、快楽を貪りたいか。

その通りよ。

己の内で生じた疑問の声に、正面切って、返答する。
彼が、わたしの淫乱さを引き出してくれる度に、わたしは、生きているのが楽しくなる。
ならば、なれるところまでとことん淫乱になりたい。
その為の努力を、惜しまない。

わたしの内から、それを非難する声は、響いて来なかった。




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