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宣告

2008/12/05(金) 11:57:42
この半年間、彼は、一度もわたしを責めていない。
道具として使用される事はあるけれど、縛ったり、鞭打ったり、蝋を垂らしたり…という責めは、全然やっていない。

これは単に、そういう事の出来る場所で逢わないからだと思っていた。

彼の家で抱かれる時は、声すら漏らさぬ様に気を付ける。
わたしの家で抱かれる時は、多少の声なら外には漏れないけれど、隣家の室内犬の吼え声が、微かに聞こえる事から察するに、気を付けるに越した事は無いだろう。
そんな環境では、わたしが泣き叫び、悲鳴を上げ続ける様な行為は、出来ない。

つまり、ホテルで逢わないから、責めないのだろうと、思っていた。


先日、久しぶりにホテルに行った。

彼の責めを、受けるかも知れない…。
期待と恐怖の入り混じった複雑な想いが、わたしの動悸を早くする。
ハンドルを操作する手が、微かに震える。

  風呂はいろうぜ、風呂。

けれど、部屋に入るなり発された彼のこの一言が、その後の流れを決定付けた。

  今日は俺、疲れてるんだ。
  お前を責める元気なんかねえ。
  それより、風呂に入って、ゆっくりしようぜ。


大声で、『え~~~~っ!』と言いそうになってしまった。

けれども、彼が疲れているというのなら、しょうがない。
このところ随分と忙しそうだったし、確かに疲れが溜まっている頃でもあるだろう。

『今日は、責めて欲しかったの…』

だからわたしは、この言葉を、喉の奥に押し込んだ。


お風呂で、彼の身体を丁寧に洗う。
一緒に湯船に浸かり、色んな会話を交わす。
上がったら、彼の身体にマッサージを施す。
睡魔に襲われたら、布団に包まって微睡む。
彼が欲情したら、わたしに好きな体勢をとらせ、ペニスを突き入れて攻め立てる…。

彼の本能のまま、彼のやりたい様にされながら過ごす時間は、責めが無くても濃密だ。
抱かれる時も、声を上げない様注意する必要が無い分、彼がわたしの中で暴れる感触を、存分に貪る事が出来る。
けれども、わたしの中には、『使われ足りない…』という想いが、依然居座ったままだった。


  やっぱりホテルはいいな。
  セックスに集中出来る。


言いながら彼が、わたしの身体を撫でまわし、揉みしだく。

  うん。そうね…。

暫しの沈黙の後、彼が、わたしの下腹部の贅肉を抓り始めた。

  俺がお前を責めなくなったのは、
  ひとつにはお前が肥った所為もあるな。
  こんな身体を縛ったって、醜いだけだろ。
  そんなもん、見たくねえ。


呼吸が、止まった。

  まぁ、お前も判ってるだろうが、
  お前の身体で俺が勃たなくなったら、
  もうお前には用が無いぞ。
  棄てる。


腹話術人形の様に、カクカクと首だけを動かし、彼の言葉を聞いているという意思表示をする。

  来年1年、猶予をやる。
  せめて、出逢った頃の体型を取り戻せ。
  でないと…言わなくても、判るな?


耳元で囁かれている筈のその声は、とても遠くで、妙にこもって聞こえた。