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2008/03/11(火) 23:04:14
彼は、わたしの髪から手を離すと、言った。
脱げ。全部だ。
…はい。
自分の声は、聞こえなかった。
もしかしたら、声が出なかったのかも知れない。
機械的に衣服を脱ぐ。
脱ぎながら、畳む。
畳まないといけない様な気がした。
彼は、わたしの周囲をゆっくり回りながら、感情の読み取れない眼でわたしを見ている。
時折手を伸ばし、わたしの髪を、慈しむ様に撫でる。
けれど慈しんでいる訳ではないのだ、と、感じる。
これは単に、これから使う道具の、手触りと強度を確かめているだけ…。
下着姿になった。
…ぜんぶ?
声が、掠れた。
彼は今まで、全てを脱がせた状態からわたしを使い始めた事が無かった。
全部だ。
わたしは作業を続けた。
脱ぎ終わって顔を上げ、彼の目を見て深呼吸をした。
後ろで手を組め。
そうじゃない。
腕は伸ばせ。掌を組め。
彼の手には、赤い綿ロープ。
手首を縛られる。
続いて、肘の上辺りを縛られた。
ギチチッ…というロープの軋む音。
今までにない強さで、縛り上げられている。
首に、幅の広い革の紐が結ばれる。
彼が、首輪の代わりに好んで使うものだ。
これ、何?
以前、初めて使われた時に、訊いた。
ギターのストラップ。
楽器をやらないわたしは、答えを訊いても何か判らないままだったが、肌触りが好きだったので、それ以上は何も言わなかった。
彼の引っ張り方次第で、首を絞める強さが自在に変わる紐…その革紐が、首に食い込んだ。
ロープのきつさが、革紐の強さが、今までの彼ではないという事実をわたしに突き付ける…。
お前は、俺を見てるのか?
何を訊かれているのか、一瞬判らなかった。
バシッ
いきなり頬を平手で打たれた。
…平手打ちなんて…どのくらいされてないんだっけ…
そう考える。
決してわたしが冷静なのではない。
感情の振幅が限界を超えると、わたしは、自分のおかれた状況について、主観的に考える事を放棄してしまう癖がある。
今のわたしは、何も感じない。
何をされても痛くないし、悲しくもない…。
そう自分に言い聞かせてしまうのだ。
打たれたまま、俯いていると、首の紐を引っ張られた。
俺を、ちゃんと見てるのか?
え?
バシッ バシッ
どう答えればいいのだろう…。
俺を舐めやがって。
彼の声は、まったく激していない。
とても静かだ。
それだけに、凝縮された感情が滲んで滴り落ちている様な気がする…。
氷の声の下に渦巻く、灼熱の怒りを感じて、ぞっとした。
わたしは彼を、舐めていただろうか…?
頬を打たれ続けながら考える。
年下の、可愛いセックスフレンド。
そういう意識は皆無だったかと訊かれれば、答えに窮する。
Sさんに対する当て馬のつもりが無かったかと問われれば…全否定することは…出来ない…。
わたしは彼を、舐めていた…。
その時に、何をされても受け入れよう、と、決意した。
彼の怒りは、とても正当だ。
どんな罰も謹んで受ける事が、わたしの謝意の表明になる。
何よりも、ここで彼のお仕置きに耐える事が出来なければ、彼との関係は間違いなく終わる。
それだけは嫌だ。
彼を失うのは嫌だ…。
現実逃避を決め込んだ方のわたしが考える。
この人、平手打ちが上手い…。
変な当たり方をして、顔に痣が出来る様な打ち方はしない。
全くそうは見えないけれど、案外殴り慣れているのかも知れないな…。
冷静なわたしが存在していたのは、この時までだった。
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