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犬...(2)

2009/11/18(水) 22:02:37
動物病院では案の定、わたしが察知した通りの病名を、告げられた。
わたしも、自分の事情を、簡潔に説明する。
そして、手術費用などを、分割払いにして貰えないかとお願いした。

  そういう事だったんだ…。
  ここ数年、しのぶさんを見てて、
  どうも様子がヘンだなと思ってた。
  挙句に全然来なくなったから、
  とても心配してたんだよ。

よく考えれば、この病院とも、もう20年近い付き合いなのだった。

病院から出された提案は、費用を安く抑える代わりに、一括で支払う事。
その代わり、治療等は必要最小限になってしまうから、あとは犬自身の体力に賭ける形になる…と、言う事だった。
金額を聞けば、それが破格の待遇なのは理解できた。
他の患者さんには、口が裂けても言えないほど優遇された金額だった。
涙を堪えながら、「ありがとうございます。お願いします」と頭を下げた。

彼に、状況を報告する。

  よかったじゃないか。
  あとは、(犬の名)の生命力を
  信じるだけだな。


  はい…
  Tさんが、わたしの決断を
  絶妙のタイミングで
  促して下さいました。
  ありがとうございました。
  (犬の名)は、先天的に心臓が悪いので、
  全身麻酔そのものから危険なんですが、
  あとわたしに出来るのは、祈る事だけです…


  ま、大丈夫なんじゃねえの?
  そんなニオイがするぜ。


彼の、こういう言い方は、決してその場限りの気休めではない。
不思議な程に、勘が働く様なのだ。
そして今のところ、彼が感じた「ニオイ」は、外れた事が無い。
だからわたしは、少し安心する事が、出来た。


翌日の手術そのものは、無事に終わった。
手術室から入院室に移された犬の濡れた体を、タオルとドライヤーを使って乾かす。
そうしながら、犬の名を何度も何度も呼びかける。
ここでこのまま目覚めない可能性も高かったから、必死だった。

犬は、意識を取り戻した。
そして、10年一緒に暮らしてきて、今まで一度も聞いた事がない悲痛な鳴き声を、上げた。
痛いのだ。
涙が、溢れる。

  ごめん。ごめん。ごめん。ごめん。

何度も何度も謝りながら、撫で続けた。

  血糖値を上げなきゃならないから、
  大好物を食べさせてあげて。
  欲しがるだけあげていい。

獣医さんに言われる。
用意してきたバナナの皮を剥き、いつもの大きさに折って口に運ぶ。
犬は、バナナを口に含むが、すぐにコロリと出してしまう。

  先生…食べません…。

  大き過ぎ。
  もっともっと小さくしてあげて。

咀嚼する体力すら無いのだ、と気付いて、愕然とする。
親指の爪くらいの大きさに千切って、口に入れてやると、犬はそれを、ようやくという感じで、飲み込んだ。
時間をかけゆっくりとではあるが、犬はバナナを食べ切り、嘔吐もしなかった。
彼に、無事に手術が終わり、意識も取り戻して、落ち着いた事を報告する。

  そうか!
  よかった。


彼もとても気にしていた事が、普段にはない返信の早さに表れていた。

犬を入院させ、帰途に着く。
涙が、再び溢れて来た。
わたしは、生き物の、生き延びようとする本能の凄まじさに、圧倒されていた。




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