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Sさん

2008/02/19(火) 01:17:51
そもそも、わたしの事を『奴隷』と呼び始めたのは、Sさんだった。

とあるゲームを通じて知り合い、メッセで会話する様になった人たちの中に、Sさんが居た。
色んな会話をしている内に、離婚に関する事などで相談に乗って貰う様になっていた。
包容力を感じる人だった。
わたしの心を蝕んでいる闇を、理解してくれる人だった。

そんな会話の中、投げかけられる際どい言葉は、遊びなのか本気なのか判断はつかなかったが、わたしは平静を装いつつも動揺しており、それをSさんに見抜かれていた。
わたしの反応を面白がったSさんは、『お前は俺の奴隷な』などと言う様になった。
Sさんによって、己の中の被虐性を自覚してしまった私には…それが、とても嬉しく感じた。
本気でSさんに支配されたいと、願う様になった。
とても短絡的で愚かな思考だと、我ながら思う。
Sさんは、そんな私を拒まなかった。
実際に会っても、わたしを抱きはしなかったけれど…。

やがて、Sさんが、壊れた。
原因は、わたしにはどうする事も出来ないことだった。
壊れた彼は、わたしや、他の仲間との連絡を絶った。
心配して連絡してみても、拒否される日々が続いた。
そして…その頃にはSさんを完全に頼りにしていた私も…連鎖的に壊れてしまった。

もう、何もかも、どうでもいい、と思った。

わたしを支配してくれる人が欲しかった。
それがほんの一瞬の関係でも、構わなかった。
だから、出会い系サイトに登録してみたのだ。

そこで彼を見つけた。
SM系ではないサイトの中で、彼の『私に支配されたいメスを探している』というプロフィールは異色で、わたしの興味を強く惹いた。
思い切ってメッセージを送ってみた。
その結果は、ここにある通り…彼とは何度も逢瀬を重ねる間柄となっている。

Sさんが再び、メッセに登場する様になった。
久しぶりに会話をしたら、わたしの変化に気付かれ、…わたしは思わず、彼の存在を白状してしまった。

  まあお前がそれで安定して元気なら、
  それはそれでいいんじゃないか?


  軽蔑しない?

  する訳ないだろ。

わたしは、安心した。


その日の深夜。
携帯メールを受信した。
Sさんからだった。

  これからは、彼との事は逐一俺に報告しろ。
  いいな。


驚いた。
一体どうしたのだ?と返信した。

  どこで誰と何をしようが
  お前は俺の奴隷なんだよ。


呆然とした。
身体と心が、引き裂かれた瞬間だった。


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