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車中

2009/12/25(金) 19:07:25
喫茶店に到着し、飲み物を頼んで一息いれる。
改めて、挨拶をする。

  なんか照れ臭いなw
  メッセであんな会話してたと思うとw


あんな会話、とは、いわゆるエロ話の事だ。
ドSだのドMだの、最高何回イカせただのイッただの、そういう話題の事だ。
Sは、わたしのバストのサイズなどを思い出していただろうし、わたしはわたしで、Sのペニスの話を思い出していた。
彼は常々、普通にコンビニ等で売っているコンドームではサイズが合わない事、よく女性に「こんな腕みたいなの入らない」と言われて困る話などをしていた。
いつもこれを買っている、と、パッケージに馬の絵が描かれた特大サイズのコンドームを教えてくれたりしていた。

  でもなー、他の連中なんてガキだからさ、
  ああいう話で息抜きなんか、出来んだろ。
  やっぱお前みたいな、大人の女とじゃなきゃ。


  そう…?そういうもの…?

正直、他には何を話したのか、余り覚えていない。
多分、ゲームの話や、他のゲームプレイヤーの話をしていたと思う。
覚えているのは、終始手が震えてどうしようも無かった事だけだ。
コーヒーカップをソーサーに戻す度に、カチャカチャと音がするのが嫌で、何とか震えがとまってくれないものか、Sに変に思われたらどうしようか、そんな事ばかり考えていた。

そんな中、近いうちに、他の地域から1人ゲーム仲間が来て会う事になっているから、一緒に行かないかと誘われた。
わたしの家からも近い観光地に、朝から遊びに行く事になっているという。
そこなら、車で行って現地で落ち合えるだろうと言われ、それなら行ってみようかという気になった。
いきなり大人数に会うオフ会は尻込みしてしまうけれど、人数が少ないなら、わたしにもこなせそうに思ったのだ。

  朝にちゃんと起きてさ。
  太陽の下で動く事を思い出さなきゃだぜ。


  そうだね…。
  でないと、いつまで経っても
  社会復帰なんか出来ないもんね…。


  だろ?

喫茶店を出て、帰る事にする。
最寄り駅ではまだ電車の本数も少ないだろうと思ったので、もう少し本数の多い町中の駅まで、送っていく事にした。
Sは恐縮したけれど、この時は、わたしの方が、もう少し一緒に居たいと思っていた。
ようやく手の震えも止まり、極度の緊張もとけて、きちんと会話が成り立つ状態になれていたからだった。

車が街中に入り、少し渋滞し始めた。

  混んでるな。

  この時間、ここら辺はいつもこうだよ。

  なんか、悪いな。
  時間使わせて。


  ううん、どうせ暇なんだし。
  それに、まだ車も流れてるもん。
  もうちょっとしたら、ここ、
  全然動かなくなるんだから。


  そっか。

その時、Sの手が、伸びてきた。
Sの手は、わたしの乳房を鷲掴みにした。
わたしは、仰天した。

  ちょっ…!何するの!?

  わははははは!
  触ったった触ったった!
  運転中なら抵抗も阻止も出来るまいwww


  な…何考えてるのー!

  まーまー、このくらいでマジで怒る様な
  ガキじゃないだろー?


  そ…そりゃ…まぁ…。

そう言われると、何故だかわたしは言葉を失ってしまう。
ここで本気で怒って、それっきり相手にして貰えなくなったらどうしよう…と、考えてしまったからだと思う。
やっと、わたしの病気を理解してくれる人に会えたのに…。
その日の突然の来訪にしても、Sがわたしと同じ障害を持っているというのなら、話はわかる。
注意欠陥障害は、思いついた事をすぐに実行にうつしてしまう、衝動性も強いからだ。
ましてSの方は、他動性もある様子だったから、衝動的行動は、わたしよりも多いに違いない。
そうわたしは理解しようとしていたのだった。

  ほうほう、これがDカップの乳か。
  んで、左右で微妙に大きさが違うって?
  どれどれ?


Sは、わたしが怒らないと見るや、遠慮なしにわたしの乳房をまさぐってくる。
不愉快で、やめて欲しいけれど、どう言えば良いかわからない。
混乱するとわたしは、その時どんな感情を持ったのか、意識しない様にしてしまう。
傍から見ればその様子は、何をされても怒らない、寧ろ喜んですらいそうに見えた事だろう。

  こら、やめてってば。
  運転危ない、渋滞終わったし。
  事故ったらどうすんの。


  おお、そっかそっかw
  でも俺の触り方って、厭らしくないだろ?www


この時は、厭らしい意図がないなら、何故、乳房などをわざわざ触るのだ…という非難の気持ちが、少し湧いてきたと思う。
けれども、大人の女であるわたしだから、こういう行動が出来るのだろうと解釈すれば、本気で不快感を表明してはいけない様な気がした。

  …どうだろ…?
  ま、わたし乳は感じないから
  触っても無駄だよ。


  なーんだ、旦那に開発されてねえのかよwww

やがて車は、目的の駅に着いた。

  サンキュ、助かった。

そう言ってSは、1000円札をわたしに差し出した。

  何これ…?

  や、ガソリン代。

  要らないよ。

  だって俺の都合で車使わせたんだし。

  こうしてんのはわたしの意志でもあるよ。

  でもほら、悪いからさ。

Sは、ダッシュボードに1000円札を置くと、さっと車から降りてしまった。

  ちょ…要らないってば!

  まーまーいいから。
  仕事してねえんなら、金は大事だろ?
  じゃ、次は○日のミニオフでな!


  え…あ、待って、これ!

Sは、行ってしまった。
停車していた場所は、そのまま車を降りて追い掛けられる様な場所ではない。
わたしは、溜め息をついて、駅のロータリーから車を出した。


その日の深夜、メッセンジャーを立ち上げていたら、Sがサインインして来た。

  こんばんは。

  おー。今日はどうもなーw

  こちらこそ、かえって悪かったね。
  気を使わせてごめん。


  いやいやw

乳揉んだ挙句1000円…という不快感が、全く無かった訳ではない。
けれども、その気持ちを表明する気には、ならなかった。
向こうは、多少の猥談でも接触でも動じない女友達を期待している。
ならば、その期待には応えなければならない。
そう考えて、何でもない様に振舞っていた。

  で、会ってみてどうだった?
  普通に歳相応のおばちゃんで
  がっかりしたでしょ。


  お前こそどうよ?
  オッサンでがっかりしただろw


  そんな事なかったよ。

  俺もだよ。
  お前は、会ってみても、やっぱいい女だったよ。
  いつか抱きたいと思う。


心臓が、飛び跳ねた。
顔が、熱くなる。
この瞬間、わたしは、Sとのセックスに本気で興味を持っている事を、自覚した。






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