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2008/07/29(火) 00:12:24
彼が、わたしをその住まいに招待してくれたのは、本当に意外だった。
その理由は、明快だった。
端的に言えば、節約だ。
わたしもそうだが、彼も決して経済力を誇れる生活はしていない。
むしろ、彼の同年代と比較すれば、稼いでいない方と言えるだろう。
それはひとえに、彼には達成したい目標があるからだった。
その為に彼は、経済力よりも、仕事に時間を拘束され過ぎない生活を選択したのだ。
わたしたちが逢う回数は、どんどん増えてゆく。
その都度、ホテルを利用していたのでは、生活が破綻してしまう。
だから彼は、わたしを自分の家に招待し、ホテルの利用回数を少なくしよう、と提案してきた。
わたしは、嬉しかった。
彼が、逢う回数を減らそうと言い出さなかった事が、とても嬉しかった。
彼は、明確な自分の世界を持ち、それを大事にしている人だ。
そんな彼が、家という、自分の一番重要なテリトリーにわたしを入れる選択をしてくれたことも、とても嬉しかった。
彼は、都会の単身者向け住居らしい、こじんまりとした部屋に住んでいた。
室内は綺麗に整頓され、日常的に清潔に保たれているのが、よく判った。
窓からは、彼の住む都会の景色が一望出来る。
それでいて周囲は、とても閑静だった。
凄い眺めだろう?
この景色があったから、
この部屋に決めたんだ。
驚喜しながら窓の外を眺めるわたしに、彼が言った。
シンプルで、機能的で、清潔。
けれども決して無味乾燥な印象ではない。
とても彼らしい部屋だった。
喘ぎ声が近隣に漏れ聞こえぬ様、声を殺して彼に抱かれる。
達し続けると理性が消し飛び、抑えきれぬ声が零れる。
声を出すな…。
その度に、彼が耳元で低く囁く。
彼から下される命令は、それがどんなに些細な内容であろうと、わたしの脳を従属の快感で燃え上がらせる…。
抱き合い、繋がって快楽を貪り、中断しては寄り添って語り合う。
ふとした瞬間に、彼が微笑んで言う。
何か…不思議な感じだ。
俺の部屋に、お前が居る…。
あなたが、連れて来てくれたのよ…?
わたしも微笑んで言う。
そうだよな…。
まさかここまでの関係に、なるとはな…。
わたしとて…ここまで彼に精神までも魅了されるとは、出逢った頃には想像すらしていなかった。
夕暮れ時、灯りをつけずにベッドで寛ぎながら、眼下のネオンが増えていくのを眺める。
彼の体温だけを感じながら、ただただ無言で見つめ続ける。
静かで…。
穏やかで…。
和む…。
溜息と共に、ぽそっと呟いた。
ああ…。
彼の返答も、溜息の様だった。
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